第57話 世話焼き女神様(友達ver)ラスト
「お待たせ致しました、朝食ができましたよ」
朝から体拭きに着替えまでさせて貰って、朝食を作ってもらう。いきなりお世話になりまくってるな俺は…
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「洗濯物は、こちらで全てですね?」
そして目の前には、結構な量の洗濯物がある訳で…俺は非常に居たたまれない気持ちなのだが、先輩は全く気にした様子がない。
少しはやっておけと怒られるかもと思っていたのだが…
掃除の話をしたときもそうなのだが、嫌がる素振りは微塵もないし、呆れたとか怒るとかそういう感じもない…
やはり神様だ…いや女神様だ…
「本当にすみません…全然やってなくて、申し訳ないです…」
「いいのですよ。だからこそ私が来たのですから。男性は、こういったことをなかなかやることができないと聞いておりますので。」
「そう言って貰えるとありがたいです…ちなみにどなたから聞いたんですか?」
「夏海ですよ。」
さすが夏海先輩、肝心なところでいつもフォローしてくれる頼もしい先輩だ。
「あとは、片付けをしていて、変なものを見つけても怒らずに見なかったことにするようにと言われておりますので。」
「ぶっ!?」
「あの…変なものとは何を指しているのでしょうか?」
前言撤回。
あの人面白がってないか…
「さ、さぁ?俺は人から変なものと言われてしまうような物は持っていませんので」
持ってないよ?
…PCさえ見られなけば…
「私は高梨さんの持ち物に口を出すような真似は致しませんが、曖昧な言い方をされていたので気になってしまいまして。夏海を問い詰めておきますね。」
「い、いや、単に気を使ってくれただけでしょうから、いいにしてあげましょうよ。大丈夫ですから。」
できれば、そのままの先輩でいて欲しいです…
そして…俺は今からお休みの時間になってしまうようだ…
何故って、昨日と全く同じ状況になっているから。
なで…なで…なで…
ぽん…ぽん…ぽん…
あぁぁぁ子供扱いされているような気がして仕方ない…
でもダメだ、俺は正直これを幸せだと思っている…
「あとは私に任せて、ゆっくりお休み下さいね…」
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「すぅ…すぅ…」
ふふ…どうやら高梨さんにお休みして頂くには、こうして差し上げるのが良いようです。
今後も機会があるかもしれませんし、しっかり覚えておきましょう。
さて、まずはお洗濯をしてしまいましょう。
今日はとても良い天気なので、早めに干せば帰る前に畳むことまでできそうです。
洗濯機を回している間にお掃除ですね。掃除機は使えませんから、自宅から持ってきたホウキと塵取りを使用しつつ片付けてしまいましょう。
高梨さんが後で困らないように、わかりやすく纏めて…
もちろん高梨さんの様子を伺うのも忘れずに…汗などは大丈夫そうですね。
洗濯物をベランダに干し終わると、お昼ご飯の準備をするにはちょうどいい時間でした。
もう少ししましたら、高梨さんに起きて頂きましょうか。
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昼食が終わり、食後のデザートということで先輩がりんごを用意してくたのだが…
うん、綺麗にうさぎの形をしたりんごが並んでいる。
男の俺が言うのもなんだが、先輩の女子力は多分飛び抜けていると思う。
俺がテーブルで呑気にりんごを食べていて、先輩は台所で洗い物…これって他の人が見たらどう思うんだろう
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薄手の物が多かったので、洗濯物が思ったより早く乾きました。
畳んで、わかる範囲でタンスにしまっておきます。
そして 片付けも終盤に差し掛かったときに…
…今思えば、夏海が言っていた「変なもの」とはこれを指していたのでしょうか…?
暫く使わないと仰っていたものを纏めて、押し入れに仕舞おうと考えたのですが、奥で何かが当たっていたので引っ張り出したところ卒業アルバムでした。
………申し訳ございません高梨さん。
この卒業アルバムは見なかったことにします。夏海にも言われておりますので。
………山崎和馬、笹川柚葉…
ふぅ…気持ちを切り替えましょう。
高梨さんが眠っていて下さって良かったです…
さぁ、お仕事がいよいよ最後になってしまいました…夕食の準備を始めましょうか。
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夕食を食べ終わり、先輩が片付けをしてくれている。
それが終わったら、もう先輩が帰ってしまう。
時間も時間だ、無駄に引き留める訳にはいかない。
「では、そろそろお暇させて頂きますね…」
「…沙羅先輩、ありがとうございました。本当に、何とお礼を言えばいいのか…」
「いえ、元を正せば、あの雨で私を」
「それこそ、俺が傘を持ってこなかったのが原因ですよ。ですから、俺の方がありがとうです。」
断じて先輩のせいなどではない。
間違いなく自業自得だ。
「ふふ…では、どういたしまして…ですね。」
「かなり調子は戻ってきたんで、明日は何とか行けると思います。」
「明日もし調子が悪いようでしたら、無理はなさらないで下さいね。どちらにしても、明日の朝にRAINで確認致しますので。」
「はい、ありがとうございます。」
「この鍵はお返ししますね。それでは高梨さん、失礼致します。」
「沙羅先輩、本当にありがとうございました。このお礼は必ず」
俺は全力でお辞儀した。
親はともかく、今までこんなに誰かにお世話になったの初めてだ。
他人の俺にここまでしてくれるなんて、返すお礼が思い浮かばない。
先輩が近付いてくると、俺の額に手を当てた
「最後の検温です♪」
「沙羅先輩…」
沙羅先輩が、至近距離で俺の目を見ながら伝えてきた
「こう言ってしまいますと高梨さんに失礼なのですが、私はこの3日間、本当に充実しておりました…ですが、少しやりすぎてしまったのではと今更ながら反省もしております…。ご迷惑なことはありませんでしたか?」
「大丈夫です。嬉しかったことがいっぱいで、迷惑なんて一つも。」
「そうでしたか、それは良かったです。今回のことは私にとってもよい経験でした。今後に生かすことができると思います」
今後…いつか、俺ではない誰かに、先輩がこんな風に色々してあげるのだろうか…それは…
先輩が俺から離れ、靴を履いた。
「では、本日はこれで失礼致します。また明日」
「はい、また明日」
こうして、あの雨の日から続いた怒濤の数日が幕を閉じた。
ずっと先輩が側にいてくれたからか、妙な寂しさを覚えてしまった…
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