第56話 世話焼き女神様(友達ver)その4

今日は、とても充実した一日でした。

…と言ってしまうと高梨さんに申し訳なく思うのですが…


これは私自身も驚いているのですが、もともと家事をすることは嫌いではなく、料理に関しては寧ろ好きな分野でした。


ですが本日、高梨さんの身の回りのお世話をしてみまして、こんなに充実感を感じるとは思いませんでした。


正直、高梨さんのお家から帰るのが名残惜しいと感じてしまいました。

早く明日に…


あ、いけません、今日の内に月曜日からのお弁当の献立を考えなくてはいけませんね。

もう少し栄養のバランスを考えませんと…


…そうです…鍵を…お預りしてしまいました。

そこまで信用して頂けているなんて、嬉しいです、感動です。


チャラララ〜🎵


夏海から電話の着信ですね。


「お疲れ」

「はい、お疲れ様です」

「今日はどうだった?」

「どう…と聞かれてましても、何と返答すればよいのか」

「ゴメンゴメン、高梨くんの様子は?」

「まだ熱はありますが、お食事はしっかりできています。明日もう一日お休みして、月曜日に間に合えば…」

「そっか。何か変わったことあった?」

「いえ、普通にお世話をさせて頂いただけですよ?」

「…参考までに、何をしてあげたのか聞いてもいい?」

「はい、と言いましても、高梨さんには基本お休み頂いてましたので、あとはお食事とお片付けと…高梨さんの体を拭いて差し上げたくらいでしょうか?」

「そうなんだ…(男子の体を拭いてあげてるって時点で既に凄いんだけど)」

「あ、あとは鍵を預からせて頂きました」

「えっ!!??高梨くんの家の鍵!?」

「? 何か問題がありましたでしょうか?」

「だって、家の鍵を女に渡したんだよ!?」

「はい、そこまで信用して頂けていたなんて、とても嬉しいです」

「…………え?……それだけ?…高梨くんは?」

「明日の朝、自分がなかなか起きてこなかったら迷惑になるから…と。」

「…あっちもそれだけ?…………この似た者夫婦が」

「はい?」

「はぁ、いや何でもないよ。んじゃ、明日は朝から行くんだ?」

「はい。夏海は部活ですか?」

「試合が近いからね。まぁ部活じゃなくても邪魔はしないよ……馬に蹴られたくないし」

「なんでしょうか?」

「何でもないよ。頑張ってね。」


そういえば、夏海の大会の応援に、高梨さんをお誘いしましたら一緒に来て頂けますでしょうか?


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コンコン……


せっかく鍵をお預りしているのですから、寝ていらっしゃるのを無理に起こしてしまう必要はありませんよね…


…決して、高梨さんの可愛い寝顔を見たいなどと考えた訳ではありませんよ


ガチャ


「…失礼致します」


「すぅ…すぅ…うう…」


どうなさったのでしょうか?

あら、凄い寝汗ですね…良くはなっているのでしょうが、このままにするのは…


…申し訳ございません、タンスの中を失礼致します…このシャツと、上着はこれで…昨日の風呂桶とタオルも用意して


「高梨さん…高梨さん、起きてくださいね?」


「う…ん〜」


「高梨さん…そうですね、先に少し汗を拭いてしまいましょう。」


高梨さんの額や首の汗を拭いていると、高梨さんが目を覚まして下さいました。


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「あれ…沙羅先輩…」


「おはようございます。申し訳ございません、寝汗が凄かったので…」


確かに、かなり汗をかいているみたいだ。

通りで寝苦しかった訳だ…


「すみません、またそんなことをさせてしまって…」


「いえ、それよりもこのままでは良くありませんので、起きられそうであれば上を脱いで頂けますか?」


「え!?今ですか!?あの、汗なら自分で」

「本日はもっと丁寧にしますと、昨日お伝えしましたよ?それに、これは私の仕事です。」


「…はい、すみませんお願いします」


有無を言わさない笑顔にあっさり白旗を揚げてしまった。


俺が上を脱ごうとすると、それを手伝うように先輩が背中側の裾を持ち上げてくれた


……うう、昨日から手のかかる子供みたいだな俺…


「寒くありませんか?大丈夫そうですか?」


「暑いので平気です」


「では、そのまま動かないで下さいね。」


言うや否や、先輩がまずは乾いたタオルで汗を拭いてくれた。

そして絞ったタオルで体を拭き始めた。

昨日と違うのは、邪魔な上着がないせいか、かなり丁寧に拭いてくれているということだ。


「如何ですか?どこか気になるところはありますか?」


「だ、大丈夫です。」


「では、前側を失礼致しますね。」


昨日も思ったが、先輩は迷いがないというか、上半身だけとはいえ裸の男の近付くで嫌じゃないのかな…

それともまさか本当に子供だと思われてる!?


などど余計なことを考えている内に終わっていた……集中しとけば…不謹慎だぞ俺


「すみません、お着替えを用意する為に、タンスを勝手に開けてしまいまして…」


「いえいえ、大丈夫ですから気にしないで下さい。」


「ではお着替えをしましょうね?」


俺が着替えを受け取ろうと手を出すと、先輩が不思議そうに首を傾げた。


「沙羅先輩、着替えを…」


「はい、お着替えしましょうね。どうぞ」


先輩がシャツを広げて、そのまま着れるようにこちらへ向けた

………まさか、このまま体を突っ込めと…?


先輩から「何をやっているんですか?」と呆れられることも覚悟して、腕を通そうと先輩が広げているシャツに腕を差し込むと、そのまま動きに合わせるように、スポっと着せてくれた………やっぱりこれが正解だったらしい…

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