孤独なオレと孤高な世話焼き女神様

第126話 邂逅

最悪だ。

なぜこんなところで出会ってしまったのだろうか…

「何よぅその顔。久し振りに会った可愛い幼馴染みにそれはないんじゃない？」

相変わらず化粧が凄い。

だが中学の頃とは系統が違う…これは白ギャルとかいうやつか。

まだギャルっぼい喋り方はできないみたいだな。

ウザい口調なのは変わらないが。

「ん？　どしたの？　あ〜柚葉ちゃんがますます可愛くなって緊張しちゃった？」

自分を見ている俺が何も言わないことに、軽口で対応する柚葉。

とりあえずこいつに構うのは時間の無駄だ。俺が何を言おうと、自分に都合のいいように処理をするから。

「あ〜…っと、一成の知り合いか？　幼馴染みって？」

微妙な空気を感じたのか、どこか白々しい感じで速人が間に入った。

「そうなんですよぅ、速人くんが一成の友達だったなんて凄い偶然ですねぇ。あ、改めまして、一成の幼馴染みで笹川柚葉で〜す。一成が迷惑かけてませんか？　こいつは昔から本当に」

また作り話を始めるつもりか？

しかし気持ち悪い

なんだその喋り方は…こいつの裏の顔を知っているだけに余計気持ち悪い。

「柚葉、何の話だ？」

「ん〜、やっと話してくれたね。昔から手がかかる幼馴染みですけどって只の社交辞令じゃん。何焦ってるの？」

こいつ…俺の反応を楽しむかのような素振りを見せているような気がする

「ねぇ速人くん、一成の友達ってことは、幼馴染みの私も速人くんとお友達って感じじゃないですか？　私も友達多いから、色々楽しいことできますよ？」

相変わらずふてぶてしい奴だ。

ずうずうしいにも程がある。

媚に媚びた表情で速人にすり寄る姿を尻目に、俺は速人へそれを断るように、ダメ元で目線で訴える

通じてくれるといいが…頼む通じてくれ。

だが速人は、何かを理解したような反応は示したものの

「ああ、わかった。そうだね、それじゃRAINでも交換しようか？」

と、柚葉の話を聞き入れてしまった。

ダメだったのか？

何か変な風に伝わってしまったのだろうか…

「やったぁ！！　それじゃ今度合コンでもしましょうね。」

「おい、速人…」

「一成、ちょっと待っててくれ。」

俺が割り込むこともできず、二人は連絡先を交換してしまった。

あいつは何か企んでいるだろうし、このままでは速人も俺のように利用されてしまうかもしれない…

柚葉を問い詰めようと、嫌な気持ちを我慢して自分から話しかけることにした。

「柚葉、ちょっと顔を貸せ。速人、すぐ終わるからちょっと待っててくれ」

「ああ、わかった。」

「んー、いいけど、告白とか止めてね」

死んでもするか

少し離れた場所に移動して、柚葉と二人で対峙する。

中学のとき以来だ…

「なんのつもりだ？」

ニタニタと笑っている柚葉にムカつきながらも、なるべく冷静になるように我慢しながら話を始める。

「速人くんと本当にお友達になりたいだけなんだけど？　協力してくれるよね？」

猫を被るのを止めたようで、以前のような喋り方に戻った。

そしてそれを俺が引き受ける訳がないのもわかっているだろう。

「引き受けると思うか？」

「引き受けないでしょうね。だから、中学のときのことを謝るわ。」

……は？

謝るって言ったか？

「謝るって言ったんだから、そんな驚いた顔しなくていいじゃない。」

意表を突かれてリアクションに困ってしまった。何を言ってるんだこいつ…

「速人くんと仲良くなりたいだけよ。別に協力しろとまでは言わないから、お互いに黙ってればそれで済む話でしょ？」

俺は中学の頃を思い出した。

あれがまた再び始まる…そう思うと地獄だ。

「本当に…謝るというのか？」

「そうよ。謝ったんだから私の邪魔しないでよね。それに、そもそも速人くんは自分からアタシと友達になるって言ってくれたのに、あんたが口を出す権利はないでしょ？」

…やっぱりこいつは成長していない。

ずっとちやほやされて、自分がヒロインになったつもりで生活してきたのがよくわかる態度だった。

「私が謝ったんだから許して当然」と思っているのがよくわかる。

あれで俺が納得するなどと思っているのだから、罪悪感というものがないのだろうかこいつは。

そして、もう話はないとばかりに柚葉は移動を始める。

本当に身勝手なやつだ

速人の件はどうする…

単に仲良くなりたいというだけならまだいいが、念のために警戒はしていた方が良さそうだ。

速人を見ると、柚葉の連れと話をしているようだ。

笑ってはいないところを見ると、面倒臭いと思っていそうだな。

とりあえずここを離れよう。

話はそれからだ。

「速人、約束があるから帰る、お前も約束があるだろう？」

咄嗟に嘘をついて速人に話しかける

「？　…あ、そ、そうだな。俺も集合に遅れると困るな。笹川さん、悪いけど俺達はこれで」

俺の意図を理解してくれたようで、話を合わせてくれた。

これでここから離脱できる

「ええええ、残念ですぅ。せっかくお近づきになれたのに。あ、でもRAINで連絡できますから、いつでも連絡下さいね。私からも連絡しますから」

また柚葉が気持ち悪い喋り方を開始した。

「それじゃあ、俺達はこれで。」

「はーい、また会いましょうね。一成も、よろしくね」

何が宜しくだ。

俺はそれに何も答えなかった

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あーあ、行っちゃった

でもラッキーだなぁ。

速人くんの連絡先をゲット…くふふ

謝るなんて仄めかしただけなのに、一成はどこまでもお人好しだね。

私はごめんなさいなんて一言も言ってないのに(笑）

でもこれで一成の口は塞いだ。

この私がわざわざ謝ってあげたんだから当然だけど。

大丈夫だよ、もしものときは私から速人くんにしっかり注意してあげるから。

一成は危険だってね。

男なんてチョロいよね。ちょっと泣いたふりして被害を受けたって言えば、簡単に信じるんだから。

「ねぇ柚葉、あの速人くんの友達みたいなの知り合い？」

「ダメだよミホ、あいつはこれから私たちと速人くんを繋ぐパイプなんだから、友達ってしっかり呼ばないと。」

こんなチャンスを逃す訳にはいかない。

別に最終的に速人くんと〜なんて思ってないのよ。

私には和馬くんって彼氏がいるし、彼氏がいてもアイドルのファンやってるのと同じ。

でもイケメンは周りに何人いてもいいし、速人くんと合コンとかセッティングできれば、上手くいけばそこから更に他のモデルも繋がるかもしれないし…むしろそっちね。

そうなったら私ってばクラスどころか学校の人気者じゃん。

参加させてくれって皆私に媚びてくるのは間違いないし…優越感凄そう！

さーて、どうやって話を進めようかなぁ。

そうだ、和馬くんにも相談してみよう

確か速人くんの学校に知り合いがいるようなこと言ってたし。

あ！

それで先に一成の話を広めちゃえばいいんだ。

そうすれば速人くんは間違いなく私を信じてくれるだろうし、せめてもの～とか言ってお願い聞いてくれるかも！

あー、楽しみだ