第119話 我に返る
パチ…パチ…
パチパチ…
パチパチパチパチ!!!
おめでとう!
見せつけてくれるなお二人さん!!
お幸せに!!
美人の彼女で羨ましいぞ〜
いいもの見せてくれてありがとね〜
突然拍手が鳴り始めたと思ったら、どんどん増えていき拍手喝采の様相になってしまった。
口笛も鳴り響き、俺はどんな状況で告白をしたのかやっと気付いた。
そうだ、周りに人が…いや、この人たちは別に知り合いでもないから別に。
それよりも、俺は真由美さんの…沙羅さんのお母さんの前で……
その事実を改めて認識すると、凄まじい焦りが襲ってきた
「一成さん、どうかなさいましたか?」
「い、いや、よく考えたら…勢いとはいえ真由美さんがいるのに」
「ふふ…確かにそうですね。ですが私は別に問題ございませんよ? お母さんは一成さんとのことを反対しておりませんでしたから。」
確かに、初めて会ったときから好意的だったと思う。沙羅さんがいいなら…問題はないのか?
それに夏海先輩たちのことも。
またバカップルとか怒られるかなぁ…
照れ臭さもあってみんなの方を見るのが躊躇われたのだが、腕を組んで幸せそうにしている沙羅さんに励まされ覚悟を決める。
三人の居る場所へ戻ろうと視線を向けると、真由美さんはスマホを片手に笑顔で拍手をしてくれていた。
そして夏海先輩は……
泣きながら笑っていた。
早足で戻り、沙羅さんが腕を離すと夏海先輩は待ち構えていたように沙羅さんに飛び付いた
「良かった、良かったよ!! ごめんねぇ、大丈夫だと思ったんだけど、沙羅がちゃんと返事をできたと思ったら…うう…」
言っている内に泣けてきてしまったのか、夏海先輩がますます泣いてしまう。沙羅さんも涙を浮かべてあやしている
「夏海…ありがとうございます。あなたが支えてくれたから、私はここまでこれました。一成さんという最愛の方と、こうして結ばれることができました。だから…だから…」
それ以上は声にならなくなった沙羅さんが、夏海先輩と抱き合うように二人で静かに泣いている。
俺は途中からそんな二人の姿が上手く見えなくなっていた。
貰い泣きなんて久しぶりだ…
きっと夏海先輩は、俺の知らないところで沙羅さんを支えてくれていたのだと思う。
ちゃんと答えることができるのか心配してくれていたのかもしれない。
俺にとっての雄二がそうであるように、沙羅さんとっては夏海先輩がそうであるのは間違いないだろう。
であれば、俺は夏海先輩にもお礼を言わなければならない、感謝しなければならない…そう思ったら貰い泣きをしてしまった。
どのくらいそうしていただろう、いつの間にか二人は泣き止んでいたようで、何故か俺だけが泣いているという状況だった。
俺は貰い泣きをしている内に、今までのことや沙羅さんと出会えたことを思い出して更に泣いていた。こんなに泣いたのは初めてだ。
気が付くと沙羅さんが目の前にきていて、俺の頭を抱き込むように抱き締めてくれた。
「一成さん…落ち着いて下さいね。」
今までも沙羅さんが俺を慰めたり頭を撫でてくれるようなことは多かったが、ここまで密着するように抱き締められたのは初めてのような気がする。
思わず甘えるように力を抜いてしまうと、沙羅さんは俺の頭を抱き締める力を少しだけ強めた。
「ふふ…甘えたさんなんですか?」
とても甘い声でそう囁く沙羅さんの声に思わずドキリとすると、不意に冷静になってくる。今俺の顔には沙羅さんのとても柔らかい感触があって
「いきなりベタベタするなバカップル」
少し調子を取り戻した様子の夏海先輩が、いつものように突っ込みを入れてくるのだった。
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結局最後まで泣いていたのは俺だったという醜態を晒して、沙羅さんに抱き締められて泣き止むという羞恥プレイまで披露してしまった…真由美さんの前なのに…。
俺が軽く落ち込むと、すかさず沙羅さんの手が頭を撫でてくるので気合いを入れ直す、
「うふふ…おめでとう二人共。まさか私たちと同じ事を娘にやられるとは思ってなかったわ。私たちの目の前で告白なんて、一成さんはあの人より勇気があるかもね。」
真由美さんが面白いものを見たと言わんばかりの表情でそんなことを言い出した。
えーと…これは、沙羅さんのお母さんとして認めてくれるということでいいのか?
「高梨くん、私の親友を幸せにしてあげてよ。泣かせたら許さないからね。」
夏海先輩は完全に復活したようだ。
もちろん泣かせるつもりなどない、あるとすれば嬉し涙だけだ。
「いや、おめでとう。正直こんなシーンが見れるとは思ってなかった。これだけでも今日来た甲斐があったよ。これから特に学校で大変かもしれないが、何か困ったらいつでも言ってくれよ。次は…俺の番だな」
速人は相変わらずいいやつだ。
触発されたようで、改めて気合いが入ったようだ。
そういえば今回の花火大会で二人だったはずだけど、何か進展があったのだろうか?
見た限りでは変化を感じないが。
「高梨さん…沙羅のこと、宜しくお願い致します。この子は思い込んだら一直線だから、加減が効かなくて困ったら教えてね。」
「いえ、例えそうなったとしても、俺は全て受け止めると決めていますから。」
真由美さんは本当に認めてくれたようだ。
やっぱり近い内にお父さんにも…
そんな俺の考えを見抜いたのか、真由美さんが面白そうに笑うと
「ああ、あの人はまだいいからね。当分忙しいから、今話をしちゃうと仕事どころじゃなくなっちゃうし。」
どうやらお父さんとの面会はまだ先になりそうだ…ホッとしたような…早く終わらせたいような。
「はぁ…沙羅ちゃんの男嫌いはいつまで続くのかと思ったけど安心したわ。次の楽しみは孫かしら」
ぶっ!
付き合い初日で話が早すぎ…
というかそれは結婚後の話では…いやいや、そもそもそこまで認めてるの!?
沙羅さんは話を聞いているのかいないのか、とても幸せそうな笑顔で俺の腕に自分の腕を絡ませてくっついていた。
「へぇ…もうそんな話なんだ? ねえねえ、沙羅は男と女どっちがいい?」
真由美さんの冗談に乗った夏海先輩が、面白がって沙羅さんに問いかけた。
いや、そんな冗談はいくらなんでも
「? え…と、赤ちゃんのお話なんですか?」
「そうそう!」
「そうですね…私としましては…」
そこまで言って俺の顔を見た沙羅さんが真っ赤になる。
多分俺も同じだと思う
「……冗談だったのに、まさか本当にそこまで考えてるの?」
夏海先輩の、驚きと呆れの混じったような言葉に沙羅さんが反応した。
「い、いえ、まだ早いですよね、一成さん」
「まだ」って言った…
「そ、そうですね、そういう話はまだ早いですよね、俺達は今日付き合ったばかりなので。」
この話は止めた方がいい。
今後変に意識してしまうのは色々と困る。
「うふふふ…高梨さん、まだ早い話ですからね。」
だから止めて下さい…
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思いきって今日も二話更新しました。
まだ帰り道が残ってますけど、明日から更新ペースは通常に戻ります。
という訳で、やっと二人が恋人になったところまで書くことができました。
告白シーン含め、自分なりに頑張って書いたつもりですが、少しでも読み入って頂けたようでしたら幸いです。
ちなみにですが、これから私は全力でいちゃラブを書くつもりですが、マンネリ化しないようにまだ先の段階をしっかり残しております。
なので、いちゃラブをお求めの読者様にはもう一段楽しんで貰えるように頑張ります。
予想がついてもネタバレしないで下さいね(笑)
そして…過去編もちゃんと書いておりますので…
それではこの先もどうぞ宜しくお願い致します。
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