第262話 好意を向けられるということ

 こちらを見ている山川の表情は、いつもと違う雰囲気が漂っているようにも見えた。勿論その理由は考えるまでもない、「あの話」をしようとしているからだろう。

 ただ…今はタイミングが悪すぎる。

 花子さんは、目の前で騒いでるバカ共のせいで、見るからに機嫌が悪くなっているからだ。そこに同類だと思われている山川が話しかければ、結果がどうなってしまうかなんて、想像するまでもない。


「…なに?」


「いや…その…」


「前も言った筈だけど…用がないなら、イチイチ話しかけないで」


 これはキツい。

 花子さんは山川の相手などしたくないと言わんばかりで、拒絶するように突き放す言葉を口にした。

 いや、これはもう実際に拒絶しているんだろう。

 

「い、いや、用はあるんだよ!! 真面目な話があるんだ!! 今からだと時間的に無理だし、次の休み時間に付き合って欲しい!!」


 花子さんから普段以上の冷遇をされてしまい、山川が焦りを滲ませ矢継ぎ早に用件を口にする。

 花子さんが山川に対して否定的な態度を取る姿はよく見るが、それでもここまでキツい態度を取ったのは初めてかもしれない。


「それは今ここで話せない?」


「で、出来れば二人で…」


 もうここまで言ってしまえば、余程鈍感な相手でもない限り、告白を考えていますと宣言したようなものだ。

 ただ花子さんは山川の気持ちに気付いているので、それに反応を示すことはない。寧ろ一層冷めた目で、山川を一瞥してから再び小さな溜め息を溢すだけ。


「ハッキリ言うけど、私は一成以外の男に興味はない。一成以外の男と二人で話をするつもりもない」

 

 花子さんから、明確なまでの拒絶を感じさせるキツイ一言が返ってきてしまう。こんな風に言われてしまえば、いくらポジティブ思考の山川でも可能性が全く無いことを理解するしかないだろう。

 そして比較対象が俺になっていることも、山川からすれば複雑な気持ちだと思う。

 花子さんが俺に対して恋愛感情が無いと知っているのに、それでも花子さんは俺に固執しているのだから。


「…全部わかってる。俺はそれでも話をしたいんだ」


 辛いなこれは…


 日曜日の話で、山川は自分に可能性がないことも、どんな返事が帰ってくるのかも全て理解している。

 でもそれを踏まえて、その上で話をしたいと訴えている。最初からフラれるつもりで告白をするつもりなのか、日曜日に気付いたことを謝罪するつもりなのか…或いは両方なのか。


「…わかった、話は聞く」


「え!? い、いいのか!?」


 これは山川だけでなく、俺としてもかなり驚きの返答だった。

 花子さんの心情を考えれば、寧ろこの場で終わらせてしまう可能性すらあると俺は思っていたからだ。

 

「別に深い理由はない。さっきの借りを返すだけ」


 借り?

 どういう意味だ?


 俺の見ていた限り、そもそも花子さんは先程の会話に参加していない。だから山川に借りどころか、そもそも今日は接点すらなかった筈だ。

 強いて言うなら、寧ろ俺の方が、男子達との間に入って貰ったことで借りが…


まさか…

 

「花子さん、それは…」


「一成は気にしないで。少しでもお姉ちゃんらしいことをさせて?」


 これはつまり、俺の予想通りということだ。

 花子さんは、俺の代わりに山川へ借りを返そうとしてくれている。それが全ての理由なのかはわからないが、少なくとも直接の理由はそれだと言っている。

 もちろん俺のことをそれだけ大切に思ってくれているのは嬉しい。花子さんの気持ちが嬉しくない訳がない。

 でも俺だって、自分のことで花子さんに負担を強いるような真似だけは絶対にしたくないという気持ちはある。


 それなのに…


 ナデナデ…


 花子さんは俺の頭に手を伸ばし、ゆっくり二度、三度と丁寧に撫でてくれた。

 柔らかな微笑みを浮かべ、先程とまでとはまるで違う優しい眼差しで俺を見つめている。

 そんな花子さんの表情に、俺は何も言えなくなってしまう。

 花子さんの優しい眼差しが、俺にその続きを言わせてくれないから。

 

 「高梨…」


 山川は、そんな俺達の姿を複雑そうに眺めていた。不意に俺の名前を口にしたのは、呼んだのか、呟いただけなのか。


「お前も、話に付き合ってくれないか?」


「い…わかった」


 本当にいいのか?

 俺はそう出かかった言葉を飲み込みこんだ。山川の覚悟を考えれば、俺を同席させる理由など一つしかない。だからそれを聞き返すなど野暮でしかないからだ。

 それに、花子さんが俺の為に動こうとしているのなら、このまま黙って見送るなど俺は自分が許せない。余計な口を挟むつもりはないが、何か問題があれば割って入ることくらいはするつもりだ。


「さんきゅー! それじゃ次の休み時間に宜しくな!」


 不自然な程に明るく振る舞いながら、山川は自分の席へ戻っていく。

 せめて山川が、少しでも納得のいく結末を迎えられるといいんだけどな…


……………

………


 朝のHR


「明日の放課後は料理教室です。特別な理由がない限り全員参加して下さい。」


 委員長からの連絡事項(俺が委託した)は、いよいよ明日に迫った料理教室の件だ。

 当初は調理担当者だけにするという話もあったが、クラスメイト達の希望により全員参加に変更されていた。ただしそれは土曜日の一件が起きる前の話であり、今となっては特に男子達がどうするのか…という懸念があった。


「どうする?」

「出るに決まってるだろ。それはそれだ」

「ほんそれ。薩川先輩の料理教室なんてレアイベントだろ」

「俺、他のクラスのやつに自慢しちまった。血涙で悔しがってわw」

「でも…薩川先輩は高梨と結婚するんだよな」


「「「それを言うなぁぁぁぁぁ!!!!」」」


「馬鹿と言うべきか、逞しいと言うべきか…」

「馬鹿に決まってるじゃん」

「でもレアイベントなのは確かだよね。あの薩川先輩だよ!」

「高梨くんにはホント感謝だよ。」


 どうやら、男子達の参加意欲に変わりはなかったようだ。

 勿論それ自体はいいことだと思うが、男子達の考え方が引っ掛からない訳じゃない。

 「恋愛感情としては諦めても憧れだけは捨てられない」という川村の考察は正しかったということなんだろう。

 でもそうであれば、一応は沙羅さんに言い寄る可能性が無くなったと考えてもいいのだろうか?

 そうであるなら、まだマシだと思うしかないのかな…


……………

………


 一時間目終了、そして休み時間。


 時間に余裕がある訳でもないので、俺は取り急ぎ山川と花子さんを連れ立って例の踊り場へ直行することにした。

 あの場所は、上の階が放課後にしか使われない教室が多い。だから日中は、ほぼ人の通りのない穴場的な場所になってるからだ。


「二人とも、付き合ってくれてさんきゅーな。」


「…時間がないから、話をして。」


 到着早々、花子さんは早くも山川に先を促した。

 これは別に焦っている訳ではなく、単にさっさと終わらせたいと考えているだけなんだろうな。


「…わかった。まず先に、これまでのことを謝罪をさせて欲しいんだ。」


「…は?」


 寝耳に水とばかりに、花子さんがきょとんとした表情を浮かべた。

 この状況から、いきなり謝罪してくるなど全く予想していなかっただろう。俺だって、日曜日の話がなかったら同じようなリアクションをとった自信がある。

 そういう意味では、花子さんの認識は決して間違っていない。


「俺は今まで、自分のことしか考えてなかった。もう分かってると思うけど、俺は花崎さんに本気で一目惚れしたんだ。だから、何とか仲良くなりたくて必死だった。花崎さんが迷惑に思ってるなんて思わなかった。思えなかった。だからごめん。」


 山川が遂に本題を口にした。

 告白と謝罪、やはり山川にとってのケジメは両方だったということだ。ただ告白よりも謝罪がメインだということは、山川の様子を見ればわかる。照れはまったく感じないし、只ひたすら申し訳なさそうにしているだけだから。


「…そう。何でいきなり考え方が変わったのか知らないけど、そこに気付いただけでもあいつらよりはマシかもね」


 山川が謝罪に重きを置いたことが功を奏したのか、花子さんの態度が少し緩和されたような気がする。

 あくまでマシになったと言うだけで、それ以上の何かになる気配などは全くない。精々いつもくらいといったところか。


「本当に悪かったと思ってる。ただ、正直に言うとそこまで嫌がられるとは思ってもみなかったんだ」


「…この際だからハッキリ言っておく。私は一目惚れが嫌い。所詮は人を見た目だけで判断してるに過ぎないし、中身なんか見ていないから。しかもそれで言い寄るなんて、軽薄すぎて相手をする価値もない」


 知っていた話だとしても、俺から聞かされるのと本人から直に言われることではダメージが桁違いだろう。

 花子さんは、心の底から毛嫌いしているのだと、まるで汚いものを吐き捨てるようにバッサリと言い切った。

 しかも花子さんの冷えきった眼差しは「お前もそうだ」と痛烈なまでに山川へ突き刺さっているようにも見える。


「…そ、そうだよな…確かに俺も、その、花崎さんの見た目が好みだったから惚れたんだ。言い訳するつもりなんかない。」


 ある程度の覚悟はしていたとしても、ここまで思い切り言われてしまえばやはりショックは大きいだろうな。


「…でも俺は、花崎さんのことを知りたかった。教えて欲しかった。だから早く仲良くなりたくて必死だった。それに、高梨とだけ仲がいいってことで焦ってた」


「…そういえば、あからさますぎて引いてたけど、直接的に言われたことはなかった」


 確かに言われてみれば、必死に言い寄ろうとしていた姿は何度も見たけど、山川から直接的な言葉を聞いた覚えは俺もない。

 あくまで言葉としては…というだけだが。


「俺だって、花崎さんのことを全く知らないでいきなり告白するようなことは考えてなかった。ちゃんと仲良くなってからって思ってたさ。花崎さんの容姿に惚れたことがスタートなのは事実だけど、そこから始まる恋だって真面目にやれると俺は思ってる」


 本来であれば、この言い分には一理あると俺も思う。

 一目惚れからだったとしても、しっかりと関係を構築して、その上で告白というのであれば決して軽薄だとは言えないと思うから。

 でも現実として、山川はそれをすっ飛ばしてしまった。しかも花子さんに対してのそれは、もう取り返しがつかないと言ってもいいレベルだ。


「なるほど…ね」


 山川からの話を聞いてどう思ったのか…

 俺と同じで、多少は思うところがあったのか…


 花子さんは、頭ごなしに突っぱねるようなことをしなかった。

 山川から視線を外すと、考え込むように目を閉じた。

 

「もう一度言うけど、俺は花崎さんとちゃんと仲良くなって、その上で告白したかった。でも花崎さんに近付けなくて、結果嫌がることをやっちまった。それについては謝る」


 花子さんは考え込んだままだったが、山川はその様子を見ながらも深々と頭を下げた。

 花子さんがこの謝罪をどう受け取ったのかは分からない。ただ少なくとも、刺刺しさや拒絶の雰囲気を感じなくなったことだけは確かだ。


「…わかった。謝罪は受け取る。私も過剰に反応した部分はあったと思う。」


 どうやら、花子さんとしても理解できる何かがあったらしい。

 毛嫌いする要素だったとしても、その中から冷静に受け入れることができる部分を見つけたということなんだろう。今までのように全てを完全に否定せず、多少なりとも柔軟に考える心理的余裕が生まれた。それは花子さんも確かに成長しているのだと、改めてそう感じることができる一幕だった。

 

「さんきゅー! じゃあ、次で最後だ」


 最後…恐らくは告白をするつもりなんだろうな。

 山川は花子さんの様子に一先ずホッとしたようで、口調もいつも通りの軽さに戻っている。でも表情にはそこまでの余裕が感じられない。いくら答えを覚悟しているとはいえ、告白に緊張するのは当然のことだから。


「花崎さん…初めて会った日から、俺は花崎さんが好きになりました。ここまで誰かを好きになったのは初めてです。花崎さんが一目惚れを嫌いだというのはわかってるけど、俺はそれを乗り越えるくらい真面目にやっていく自信があります。もしいきなり恋人じゃダメなら、それを前提にした友達からでもいいです。お願いします!!」


 山川は大きく頭を下げると、花子さんに向かって真っ直ぐに手を伸ばした。

 後は花子さんが、この告白に対して答えを出すだけだ。


 ……それだけなのに、俺のことじゃないのに、何故俺はここまで緊張しているのだろうか?

 花子さんのことだから?

 友達のことだから?


 いや、それなら雄二と夏海先輩のときも同じだった筈。

 何が違うんだろう?

 俺は何に対して緊張のような、焦りのような何かを感じているのだろうか?

 自分で自分のことがよく分からない。


 そして…


 花子さんが真正面から山川に視線を向ける。その表情に変化は見られない。あくまでもいつも通り、無感情といえば無感情。淡々としているといえばそんな感じ。


 つまり、それが答えということだ。


「先に返事をする。ごめん、私は付き合えない。そういう対象に見れないし、やっぱりどこかで嫌な気持ちが残ってる。だから今後も無理」


 実に花子さんらしい、直球以外の何物でもないキッパリとした断り方だった。

 こうなることは最初から予想していたのて、俺としてもその答えに驚きはない。


 驚きはないのに

 言い様のない不安感があるというか…上手く言えない何かがある。

 俺はいったいどうしたんだ…


「そうだよなぁ。分かってたけどさ。やっぱ無理かぁ…そうだよなぁ…」


 山川だって答えは分かっていた。分かってた筈だったと言うべきか。

 覚悟はしていただろうに、やはりこうして直接断られたことのショックは想像以上に大きいのだろう。泣いている訳ではないが、どこか悲しそうにも見える。


「なぁ…ちなみにさ。もし…もしだけどさ、もし俺が高梨より…」


「それは無理。一成は私にとって、掛け替えのない特別な人だから。例え誰であっても、一成以上にはなれない。並ぶことも出来ない」


「あ…」


 山川が言おうとした言葉を遮って、花子さんがバッサリとそれを否定する。

 山川も本気でそれを言った訳ではないだろうが、俺の名前を出されたからなのか、花子さんは先程以上にキッパリと否定の言葉を口にした。


「そもそも、一成と比較する意味がない。一成は弟であって恋人じゃない。並んでも、越えても、恋人になれる訳じゃない」


 この言葉で一つだけ分かったことがある。

 それは、花子さんが俺の立ち位置を、あくまで弟であり恋人ではないと明確に考えているということだ。

 今考えるべきことではないが、この点が分かっただけでも、俺としては安心して花子さんと付き合っていける。


「…ただ、少なくとも一成と並べるような人じゃないと、無理かも」


 うーん…

 でもまぁ俺としても、花子さんを託せる相手は少なくとも俺以下では論外だと思う。

 ただ、これは別に山川が俺以下だとかそういう風に思っている訳ではない。それを決めるのは花子さんであって俺ではないから。


「そっかぁ…」


 結局、結論から言えば全否定という形になってしまったということだ。

 山川は完全に意気消沈してしまったが、こればかりは俺が口を挟むことじゃない。

 

「でも…ありがとう」


 ここで花子さんが、突然お礼の言葉を口にした。それだけじゃない、少しだけど確かに笑顔を見せている。今まで山川に笑いかけるなどしたことがないのだから、それを考えるだけでもこれは本当に驚くべきことだ。

 だから山川も、花子さんの笑顔に驚きと見蕩れの様子を見せていた。


「…花崎さん?」


「私は今まで、男子から告白されたことはない。こうして好きだと言われたことも初めて。でも、素直に嬉しいと思った。そう思えた」


 そういうことか…


 確かに、花子さんがこうやって男から告白されたことは初めての筈だ。それに、俺だって親しく付き合ってはいるが、勿論「好き」という言葉は口にしたことがない。

 親友としての「LIKE」はあっても「LOVE」はないからだ。


 そういう意味では「LOVE」と言われたこと自体が初めてということ。

 誰かから好きだと言われること。好意を持たれるということ。それを初めて体験して、確かに嬉しいと実感したということだ。


「だから、ありがとう。私を好きになってくれてありがとう。それと、ごめんなさい。私は、山川くんとは付き合えない。そういう相手に思えない。」


 花子さんが、初めて山川のことを「山川くん」と呼んだ。

 お礼の意味もあるのかもしれないが、この変化も驚きのレベルではある。

 声を聞いている限りそこまでの親しみは感じないが、それでも今までに比べたら雲泥の差だろう。もしこれが出会った初期の頃であれば、或いはもう少し違った結末もあったかもしれない。

 

 でもこれで…花子さんにとっての山川は「よくて友達」だと、完全な答えが出てしまった。

 これ以上はないという、明確な答えだ。


 それを感じたのは山川も同じだろう。

 切なそうなで、今にも泣き出しそうな、そんな表情に見えた。


 そして俺は…

 そんな山川の表情に、一層の「何か」を覚えた。

 よくわからないが、何かマイナス的な感情が押し寄せてきているのが自分でもわかる。

 先程から感じていた言いようのない「何か」が強くなっているのがわかる。


「わかった。ごめん花崎さん、時間を取らせた。なぁ…せめてって訳じゃないけど、これから少しくらいは話しかけても…」


「クラスメイトなんだから、そのくらい別にいい。でも、変な期待は持たないで。それが守れるなら、普通の友達くらいには…」


「そ、そっか!! それだけでも嬉しいわ。それならせめて、高梨と同じくらいを目指して…」


「それは無駄だと言った。そんな存在は永久に現れないし誰もなれない。私にとっての一成は、そういう存在」


「うぐ…、き、厳しすぎる…」


 早くも乗り越えたのか空元気なのかは分からないが、山川は普段と変わらない様子を見せ始めていた。花子さんもそれがわかっているようで、調子を合わせるようにいつも通りの応対をしている。


 これで一応は決着がついたのだろう。

 今回のことで花子さんが、人の好意に対して嬉しさを感じることが出来たということは、素直に良かった思える。


 それにしても、山川は強いな。

 覚悟をしていたとはいえ、こうして自分の気持ちをキッパリと断られて失恋をしたというのに、もうそれを乗り越えようとしている。花子さんの友人ポジションだけは確保しようと前向きに動いている。


 これがもし俺だったら、こんな風にできただろうか?

 俺は今まで沙羅さんにしか告白をしたことはない。だから告白を断られた経験はないし、それがどういう気持ちなのかもわからない。

 でも、もし俺が沙羅さんにフラれていたとしたら、こんな風には…


 あ…………


 わかった…わかってしまった。

 先程から感じていた「何か」の理由がわかった。


 山川の姿は…

 俺にも有りえたかもしれない、もう一つの可能性なんだ。


 沙羅さんと出会えなかったら、恋人になれなかったら、自分はどうなっていたのか…それが垣間見えてしまった。


 あくまで「たられば」の話であり、考えることに意味なんかないとは思う。

 でも、山川が最初の一歩を間違えたせいで、取り返しのつかない結果に繋がったという事実。

 それはつまり、俺も一歩間違えていたら、ボタンを一つ掛け違えていたら、沙羅さんと今のようになれなかったかもしれない未来も確かに存在したのだということ。


 今までもそれを考えることはあった。でも現実の話ではないのだから、当然実感までは感じることがなかった。

 でも今回、山川の姿を見てそれが垣間見えてしまった。意味がないとわかっていても、不安を感じてしまった。


 でもだからこそ…


 俺と沙羅さんの出会いは奇跡でもあり運命なんだと、改めて実感することも出来た。

本当にそうなんだと、今なら心から自信を持って言える!


 そんな二つの相反する気持ちが、「何か」として自分の中に渦巻いていたのだと、今、ハッキリと分かった。


 だからなのか、今無性に沙羅さんに会いたい。

 今すぐにでも会いに行きたい。

 半ば焦りに似た気持ちが溢れていると、自分でも感じていた。


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大変お待たせしております。近況ノートでも触れましたが、絶賛スランプ中です。

ライターズブロックという状態らしいです。

今回はリハビリのつもりで書いています。今後も悩みながら書いていくことになると自分でも思います。読んでいて違和感やおかしい部分を感じてしまうかもしれませんが、どうぞご容赦下さい。頑張ります。


そして、カクヨムコンの中間を通りました。

正直かなり驚いています。いつも応援して頂きありがとうございます。


という訳で、後書きが長くなりそうなので、お付き合い頂ける読者様はいつものように近況ノートでw


ちょっと予定が変わって、次回は一成が沙羅の教室の「近く」まで行ってしまいます。誰かさん達と遭遇するようですw

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