第15話 例えどう思われていようと

夏海には「違うと思う」と言われたが、それでも気になった私は屋上へ来てしまいました。


そして…今私の目の前には5人の男子生徒。


見たことがあるような気もする、告白してきた生徒もいるような…全員のような。


後ろのドアは屋上に出た直後に閉められてしまいました。

鍵は確認はしていないが、確認しようと後ろを向くのは危険な気がする…


罵詈雑言を浴びせられているのはわかっているけど、私はこういう手合いの言うことを一々聞く気もないし、真に受けるつもりもない。


私の無反応に業を煮やしたのか、男子生徒が一人こちらに近づいてきた。


距離を取るため離れましたが、屋上では難しく、壁際に追いこまれる形になってしまった。

こちらに伸ばしてきた手を振り払い、位置を移動する。


「いつまで逃げられるか賭けようぜ」


ニヤニヤとこちらを眺めていた男子達が何か始めた


捕まってしまえば、力で勝てないのは自分でもわかっていた

でも、やはり屋上では逃げられる場所がなく、追い込まれてしまった。


「何をするんですか!?止めなさい!?近寄らないで!!」


腕を捕まれ、今度は振りほどけなくなってしまった


「おっと〜ゲーム終了かなぁ」



私は…こんなところで…何をして…


こんな時なのに、ここ暫くの色々なことを思い出してしまった。


私は高梨さんに自分の本心を伝えられず、副会長としての有りようだけしか伝えられていない。


その部分だけでは…要はこんなことをするような人達と、高梨さんを同列に見ていると宣言しただけであり、あの悲しそうな顔の理由が今ならわかっていた


自分の情けなさ…人を思いやる気持ちのなさ…高梨さんを悲しませた事実…今までの自分…今、自分の状況…


色々な思いが重なり…私は…いつの間にか涙が出ていました


そして私の腕を掴んでいた男子は、私が諦めたと思ったようで…私の顎に手を当てて、顔を上に向かせた。

私はそれを急いで振り払おうとして


高梨さん…


------------------------------------------


俺は屋上の入り口に近づく手前で止まり、ゆっくり動いた


ドアが見える位置に着いたとき、ドアは閉まっており…

案の定、見張りなのかチャラそうなやつが一人居た。


もっとも、ドアの隙間から屋上を覗いているのでこちらには気付いていないようだが。


こっそり近付いたところで…


「何をするんですか!?やめなさい!!近寄らないで!!」


これは…聞き間違える訳がない…先輩の声だ


ドアの隙間から聞こえてきた、怒りとも悲鳴とも思えるような、聞いたことない先輩の声


俺はもうなりふり構っていなかった


覗き込んでいたチャラ男の尻を真後ろから蹴りとばし(ドアに顔面をぶつけて痛みで転げ回った)、こちらに注意を向ける為にわざと大きな音を立ててドアを開け放った


屋上に飛び出すと、目の前に数人のチャラ男

か見えた。


そして周りを見回すと…


男に腕を捕まれた先輩が見えた…


泣いている先輩が見えた…


血の気が引いたというべきなのか、逆に頭に血が昇ったというべきなのか…


もう細かいことなど、どうでもよかった


先輩にどう思われていようと関係なかった。


ただ、先輩を悲しませた、傷つけたこいつが、こいつらが!


俺はこのとき、中学のあの日、あいつが…柚葉が…

柚葉が泣いたあの日よりも…俺は完全にキレていた


実際には俺は殆ど立ち止まっていなかった。

半ば屋上に飛び込んだ勢いを残したまま俺は走り出し


「何してやがるこの野郎!!!」


驚いて先輩から少し離れた男をその勢いで殴り飛ばした


倒れた男の腹に蹴りを入れ、立ち上がってくる気配がないことを確認すると、荒い息を抑えることで少し自分を落ち着かせる。


倒れているそいつを尻目に、驚きで棒立ちになっていた他の男達を視界に捉えた


一斉にこられたらどうにもできない


どうする?今なら先輩を引っ張って逃げれるか?悩んでいる時間はない


「高梨さん!!」


そのとき、真横から飛び付いてきた小さい誰か…泣いている先輩だった…


無事で良かったと思う気持ちを優先させたかったが、この場をどう乗り越えるか頭を働かせることが先決だった。


「てめぇ…何してんだゴラァ!」


どうやら固まっていたバカ共が再起動したらしく、バカの一つ覚えのお決まり台詞を吐いた。


逃げるタイミングを失った

どうする…

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る