第23話 今朝の女神様

ピピピ…ピピピ…


なんか…しっかり寝たんだけど疲れているような…

まぁ昨日は本当に色々あったからな


さて、起きて支度をするか


………


そういえば、昨日の夜に先輩から初めてRAINが来た。

今日からまた、昼休みに花壇へ来れるかという確認の内容だったが、それはつまり行っても良いということで嬉しかった。


それにRAINの交換はしてあったけど、結局今まで使う機会がなかったし、ただの雑談などを送る勇気もなかった。


でもこうして先輩から送ってきてくれたということは、少なくとも気軽に送りあえるような仲になれたってことで。


…あの女神様となんていまだに実感がわかない。


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登校しながら何となく周りを見ても、やはり先輩はいないか。

たまに俺と未央ちゃんを見かけたと言っていたから、ひょっとしたら会えるかな〜と思ってしまった…


学校について上履きに履き替え、教室へ向かう。


教室に入るの億劫だな…


先輩のことがあっても、このクラスが改善された訳じゃない。

俺の懸念材料まで消えた訳ではないのだ。


ガラガラガラ…


教室に入ると、いつものバカ騒ぎしてる連中が少し大人しい感じだった。

そういえば、今日は廊下まで騒ぎ声が聞こえていかなかったな…今頃気付いた。


…そういえばこいつら、昨日のバカ共と繋がりがあったか。

その辺りで何かあったのかもな…どうでもいいけど


そんなことを考えていると、逆に廊下の方が騒がしくなってきたような気がする。


いや、気がするじゃなくて廊下の方でざわざわしてないか…?


ガラガラガラ


「失礼致します」


!?

先輩が来た!?

なんかいきなり機嫌悪そうな表情だが…

あいつら絡みかと思って見ていたら、どうやら違ったようで先輩と目が合った。

その途端に、先輩は嬉しそうに微笑んだ。


普段笑わない先輩の、その微笑みは破壊力がヤバい…


そしてそのまま真っ直ぐこちらに近付いてきた。


「おはようございます、高梨さん」


「お、おはようございます先輩。どうしました?何かありましたか?」


「いえ、朝お会いできませんでしたので、HRが始まる前にご挨拶を…と」


「そ、そうだったんですね、すみませんわざわざこんなところまで」


うぉぉ全員から注目されてるよなこれ…廊下からも見られてるし…


あの微笑みにやられてそうなやつらが見えた。


破壊力が高すぎる…今まで学校で先輩があんな顔したことあんまりないだろうし…


というか、俺もやられ気味な訳で。


「ふふ…どうかしましたか?」


そんなことは気付いてないであろう先輩が、コクンと首を横にかしげた


可愛い…


「い、いえ、何でもないですよ!先輩が会いにきてくれたことが嬉しかったというか」


「突然押し掛けてしまい申し訳ございません。特にこれといった所用があった訳ではないのですが…折角なのでお顔を見てお話を…あ、ついでという訳ではありませんが、昨日RAINでお伺いしました通り、お昼休みは…」

「はい!大丈夫です!その話は大丈夫ですから!」


俺は先輩に先を言わせない勢いで被せた。

ここでその話しは宜しくないし、個人的に秘密にしていたい…色々な意味で。


「……おいおい、今RAINって言わなかったか?」

「……なんだよあれ、あいつなんで女神様と」

「……ファンクラブが黙ってないだろあれ」

「……あんな笑顔見たことないぞ、どうなってやがる」


あー、このままではヤバいことになりそう…

というかファンクラブってなんだ?


「薩川先輩!おはようで〜す!せっかくの機会だし、俺達とこっちで話…」

「いや~、朝からラッキーですわ!他の連中もいるんで…こっちに…」


バカ共調子にのって先輩に話しかけた。

すると、俺に向かって微笑んでいた先輩が、一瞬でいつもの表情に戻った…


いや、スゲー睨んでるぞあれ…


「…私が今、高梨さんとお話しているのが見てわかりませんか? 自分達が失礼なことしていると、高校生にもなって理解出来ないのですか? 不快ですよ」


「いや…その…」

「俺達は、ただ…」


「赤の他人から突然馴れ馴れしく話しかけられる謂れはないはずですが」


これは…止めないとヤバいかもしれない。

先輩が一番嫌いなタイプだからなあいつらは。

だけど、前もここまできつく言ったかな…?


「先輩、時間が無くなっちゃうんで止めましょう。無視でいいです。」


「……申し訳ございません、高梨さんとのお話に割り込まれてつい…」


「いえ、そう言って貰えて嬉しいですよ」


「高梨さん…」


先輩がこうしてちゃんと笑いかけてくれる。

先日までの状況を考えると感無量な気がする。

…笑顔の先輩を見て、チャンスがあると思ったんだろうなあいつら…


「申し訳ございません高梨さん、やはりここですと周りが邪魔なので、後でまた改めまして。」

「は、はい。それではまた後で」


邪魔って言った…はっきりと…


「では、失礼致します」


笑顔でそう言うと、先輩は帰っていった。


「「「「「……………」」」」」


俺に誰も話しかけてこないのは、俺に関わるつもりがないからだろうが、今回ばかりは助かった。


今後のことも考えて、先輩と話をした方が良さそうだな…

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