第24話 お礼のランチタイム
昼休み
朝のことがあり、微妙な雰囲気だった教室でそれでも話しかけられなかったのは、俺と関わることを避けたからであろう。
でも若干、話しかけてきそうな動きを見せたやつらもいた。同じ孤立組(?)だったが。
まぁ教室のことはどうでもいいとして、早く花壇へ向かおう。今後のことも考えて、先輩と話をした方がよさそうだし。
いつものコンビニおにぎりとペットボトルのお茶が入った袋を手に、花壇へ向かう。
だんだん人を見かけなくなり、花壇へつく頃には人が全くいなくなる
先輩は…ベンチに座る先輩が見えた
先輩もこちらに気付いたのか、笑顔で小さく手を振ってくれた。
…今朝もそうなんだけど、今まで凛としてちょっとキツい感じの先輩を見てきたから、ギャップが凄いというか、動作の一つ一つが可愛く見えて困る…いや、困らないんだけど困るというか…
「高梨さん、こんにちは」
「はい、先輩こんにちは」
先輩はベンチにお弁当を並べていた…並べている?先輩一人にしては量が…
「さぁ、お昼ご飯を頂きましょう。高梨さんはそちらに座って下さいね。」
「あ、はい。」
以前、一緒に食べたときのような形になる。
「はい、これは高梨さんのお箸です。そして、こちらが高梨さんの分です。多目に作ってきましたから、遠慮なく召し上がって下さいね?」
「あ、ありがとうございます。…って先輩、お弁当作ってくれたんですか!?」
「あ…すみません、先を急いでしまいました。もう色々ありすぎて、どのお礼なのかわからなくなってしまいましたが、その一つとしてお弁当を作ってみました。宜しければお召し上がり下さい。」
おおお、こんなサプライズを用意してくれるなんて!
それで昨日から何度か確認してきたのか…
「ありがとうございます。何か、申しわ…いえ、正直に、素直に嬉しいです。本当に嬉しいです。」
先輩はとても眩しい笑顔で俺を見てくれている。
「ふふ…そう言って頂けると私も嬉しいです。後は、内容と味で高梨さんに喜んで頂けたら尚更です。」
「以前、先輩のお弁当を頂いているので、絶対に美味しいと確信してますよ」
「ありがとうございます。実は…あれはこのお弁当を作るために、高梨さんの好みを調査するつもりだったのですよ?」
そう言って、先輩が少し悪戯っぽい表情を見せてくれた。こんな顔もするんだ…今日は驚いてばかりだ…
「そうだったんですね。あのときはラッキーだと単純に喜んでたんですが」
「さすがにいきなり色々試せなかったので、とりあえず普段と同じように作ってみて、お口に合うかどうかを確認させて頂いたんです。」
「夏海とはたまにおかずの交換をすることもあるのですが、誰かが食べることを考えて作ったことはなかったので、お口に合わなかったらどうしようと少し緊張していました。」
ということは、お礼とはいえ初めて自分用じゃないお弁当を作ってくれたってことだよな…俺の為に…
これはあれか?
今までの俺が可哀想で、神様が救済をしてくれたのか?
というか、先輩は女神様だった
「いや、本当に美味しかったんで、それにあんな豪華な昼食嬉しかったです。」
「ふふ…そう言って頂けて嬉しいです。さぁ、申し訳ございませんお話が長くなってしまいました、お弁当を食べましょうか」
「はい、じゃあ頂きます」
お弁当の蓋を開けると……ハンバーグだ!?
「おお!やったハンバーグ!」
「ふふ…本当にハンバーグがお好きなんですね?」
「ええ、こればっかりは変わらないというか…って、あれ?先輩は俺がハンバーグを好きなの知って…」
「前回、参考までにとお伺いしました」
「………あ、そういえばなんか話の流れでそんなことを」
「はい。あのときの最終目標は、高梨さんの好物を伺うことでしたので。」
お礼とはいえ、そこまで俺のことを考えてくれていたなんて本当に嬉しい。
逆に、そんな先輩を信じないで、勝手に誤解したあの件が改めて申し訳ない…
「さぁ、どうぞお召し上がり下さいね。高梨さんの好物と聞いて、頑張ってみたんです。お口に合うとよいのですが…」
正直、先輩の手作りというだけで既に美味しいんだけど…この美味しさを何と言えば表現できるのだろうか…
「美味すぎる〜幸せだ〜」
ただひたすら美味しい&嬉しい
先輩も自分のお弁当を食べながら、時折こちらを見ては微笑みを浮かべていた。
俺はちょっと照れ臭くなりつつも、夢中で食べてしまった。
「ご馳走様でした…いや、本当に美味しかったです…」
「ふふ…お顔でそう思って頂いているのがわかったので、安心できました。」
「すみません夢中で食べちゃいまして…」
「いえ、私も嬉しいですから。」
先輩が弁当箱を片付け始めた
「すみません、このお弁当箱は俺が洗って明日返します!」
「ふふ…ダメですよ、それも含めて私のお弁当作りです。」
そう言うと、素早く俺からお弁当箱を回収してしまった。
……可愛くて優しくて料理も上手いとか、最強すぎるだろ…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます