第25話 今後のこと、朝のこと

とても幸せだった昼食が終わった。

一服したら花壇の水やりを始めるのだが、その前にこの時間で話をしておかなければならないことがある。


でもその前にちゃんとお礼を言わないとな


「先輩、ご馳走様でした。何度も言ってますが、本当に美味しかったです。特にハンバーグは最高でした。こんな嬉しい食事は本当に久しぶりです。」


実際、俺は一人暮らしを始めてから、コンビニで買うかカップラーメンの二択がメインだ。

あとは、たまに豪華に弁当屋の弁当があるくらい。

料理なんてできないし、まぁありがちだよな…洗濯はするぞ、着るものが無くなってきた頃に纏めてだけど。


「喜んで頂けて良かったです。では明日からもお作りして大丈夫そうですね」


明日からって言った?


「え、先輩、今後も作ってくれるんですか!?」


「ええ、お祖母ちゃんからもお礼を頼まれていますし。それに、私はいつも自分の分を作ってますから、一緒に作ればいいだけですので。」


「いや、先輩、本当に嬉しいですけど、それならたまにでいいです!いくら先輩が大変じゃないと思ってても、俺が申し訳ないです!!」


いくらお礼とは言え、毎日なんて申し訳なさすぎる。

嬉しいけど、じゃあお願いしますなんて軽々しく言えるほど、俺は図々しくない。


「私は大丈夫ですよ?」


「いえ、これは俺の方の気持ちの問題でもあるんで。先輩がそう言ってくれるのは本当に嬉しいんですが、たまにでお願いします。」


先輩は俺の目を見ながら少し考えて、ニコッとした


「わかりました、高梨さんがそう仰るのであれば、毎日は止めておきます。ただ、たまにではなく、せめて週に一度は作らせて頂けませんか?」


先輩が妥協案を提示してきた。

俺としても食べたいのが本音た。週一くらいなら先輩の負担も小さくなるかな…


「わかりました、じゃあご面倒おかけしますが、それでお願いします。なんか、本当にすみません。でも嬉しいです。」


「はい、では曜日を決めましょうか?私は何曜日でも大丈夫ですが。」


「いえ、先輩の都合がいいときで大丈夫です。こう言ってはあれですが、どうせ俺はおにぎりしか持ってこないんで」


「…すみません立ち入ったことをお伺いしますが、その…御家族は…?」


「あ、いえ、ちゃんといますよ。ただ、俺が一人暮らししてるだけです。」


先輩は不安そうに聞いてきたが、俺の答えを聞いてホッとした表情を浮かべた。

聞いてはダメなことだったらどうしようとか思ったんだろうな


「そうでしたか。ご自身では」


「はい、さすがに料理はできないんで。でも夜は母のお姉さん…伯母さんが作ってくれるので」


……勿論嘘だ。食生活を知られたら、何となく怒られそうな気がして、とっさに嘘をついてしまった。


「なるほど。それでお昼はおにぎりだけだったのですね。」


「はい」


「わかりました。それではお弁当は私の方の都合で用意させて頂きますね?」


「すみません、宜しくお願いします。」


「いえ。さて、それでは花壇の水やりを…」


「あ、その前にもう一つだけ話をさせて下さい。今朝のことなんですが」


俺は本題を切り出した


「今朝ですか?高梨さんに朝のご挨拶で伺ったことでしょうか?」


「ええ。俺は嬉しかったんですが、クラスのバカ共が近寄ってくるし、周りも煩いんで、先輩に迷惑をかけてしまうと思うんですよ。」


「…確かに、迷惑と言いますか邪魔でしたね」


やっぱ邪魔って言った!

でも…俺だけ特別扱いしてくれてる感じがして、正直嬉しい…


「なので、朝、先輩と会えるのは嬉しいんですが、教室まで来て貰っちゃうと、先輩に余計な迷惑が…」


「……高梨さん、一つ提案があるのですが」


少し考える素振りを見せた先輩が、人差し指を顔の横に立てて話しかけてきた。


やだ可愛い…



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