第84話 手紙の中身
こういうものは、普通なら一人で見るべきだろう。
だが気になる。
ラブレターなら可愛い封筒だろうし(決め付け)、ハートのシールで封をされているはず(決め付け)
それに…沙羅先輩と初めて会ったあの日も同じパターンだった訳で。
「…ん? なんか妙にシンプルだなぁ。封がセロハンテープってのも色気がないね。」
百戦錬磨(?)の速人からダメ出しが出たことで、この手紙は男からの嬉しくないラブレターである可能性が高くなった。
なのでこの場で開封する。
「放課後、焼却炉までこい」
実にレトロな呼び出しだった。
クラスで俺に接触できなくなったから手紙で呼び出しだろうか?
まぁあいつらと決まった訳ではないが。
「…おお、随分と熱烈なラブレターだね」
いつの間にか、速人が後ろから覗き込んでいた。
女子からじゃなかったから別にいいけど。
「あいつらかな?」
恐らく、以前速人が俺を呼びにきたときのやり取りから予想したらしい。
俺も十中八九そうだと思う。
つまりこれは男からのラブレターであり、内容は多分嬉しくない告白で、その後に実力行使の可能性もあると。
「多分。面倒臭いなぁ…」
無視してもいいけど、同じクラスだから次はどうなるかわからない。
更に余計な面倒になる可能性もある訳だ。
「無視しても同じクラスか。というか、対策してから来て下さいって、ご丁寧に教えてくれてるよね。」
こんな風に呼び出せば当然そうなる。
本当にバカなの? 何か絶対の自信でもあるの?
油断している訳ではないが、対策をしてから行けば今後の学校生活がもっと良くなる可能性もある。
「どうする?」
「あー…速人は放課後、時間あるか?」
どうせここまで乗りかかっているのだから、一緒に乗って貰おう。
なので、素直に協力を依頼することにした。
「んじゃ、撮影班と何かあったときの遊撃班はお任せ。」
速人はニヤリと笑ってそう返答してきた。
この状況では言わなくてもわかるだろう。
最悪、一目散に逃げることも有りだ。
「わりぃ…それじゃ放課後宜しくってことで。」
あああ面倒臭い…
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放課後、俺は一成と別行動している。
RAINで打ち合わせをして、一成が見られている可能性を考慮して俺が先に行ってポジショニングすることにした。
自分で言うのも嫌だが、学校で俺に近付いてくるやつはあの手合いばかりだ。
あの二人が勝手に俺の友人を名乗り、女性に声をかけていることは有名だった。
だから俺はあいつらを嫌っていることを周囲にハッキリと言っていたのだが、いつの間にかつるむやつらが居なくなって二人になっていたようだ。
目障りだったし、一成の為にも消えて欲しいというのが本音だ。
そういう意味では、スマホというのはとても便利な物だと改めて思う。
「いたいた! 横川!! なあ、高梨と連絡取れないか?」
あいつは一成のクラスで今朝話をしていたやつだ。
名前は知らないが…どうかしたのだろうか?
「どうかしたかい?」
真面目な表情だったのが気になった。
「さっき変な集団が高梨の名前をブツブツ言って移動してたんだけど、あいつ大丈夫か? 高梨に教えてやった方が」
集団?
今回の件はあの二人ではないのか?
となると話が見えなくなってしまった。
これはマズい。早く行かないと…
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「夏海先輩、大変です!!」
いつも応援団をやってくれている子が、慌てて走ってきた。
沙羅も一緒にいるので、二人で足を止めて続きを待つ
「薩川先輩のファンクラ…」
「気持ち悪いことを言わないで下さい」
沙羅はあいつらを居ないものとして頭の中で処理しているから、聞くことを嫌がる。
だが大変とはどういうことか?
「あいつらがまた何かしたの?」
「あ、はい! 夏海先輩のお友達の男子が…」
「高梨さんがどうしました?」
高梨くんのことになると、相変わらす食い付きが早い。
「あの集団がお友達を呼び出したそうです! 情報を仕入れた仲間から連絡があって、今あいつらが焼却炉のあ…」
沙羅が走り出そうとしたので押さえる。
危なかった…一人で行かせる訳にはいかない。
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呼び出された。
それは高梨さんにとっても、私にとっても嫌なことを思い出します。
あの集団の存在は嫌だったのに、実害がなかったことと私の目の前に現れることが殆ど無かったので、接触したくない気持ちから放置してしまいました。
ですがそのせいで高梨さんに…
もし高梨さんに指一本でも触れるようなことをしたら絶対に許さない…
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どうやらいい話ではなさそうだ。
あの連中は陰で動くことが多いから、その分過激なことをやる実例がある。
嫉妬で高梨くんを呼び出したとすれば、何かする可能性も考えられる。
様子を見に行った方がいいだろう。
「夏海、離しなさい! 私は今すぐ行かなければ…高梨さんに手を出すなら全員…」
沙羅が命令口調になることは滅多にない。
一人で行かせたら、あの連中に何をするかわからない。
今の沙羅は一番酷かった頃に近い感じだ。
言い寄る男を塵のように見ていた沙羅は、機嫌が悪くなると口調も荒む。
今は高梨くんという守りたい存在ができたせいで、そこが豹変してしまうポイントになってしまったのかもしれない。
「一緒に行くよ!」
沙羅が暴走する可能性があるので目を離す訳にはいかない。
手を離さないように走りながら現地に向かう。
焼却炉の近くまで来ると周りを確認しながら進んでいく。
すると、木の陰に隠れるようにして潜んでいる横川くんが見えた。スマホを構えているので恐らく録画をしているのだろう。
向こうもこちらに気付いていたようで驚いた表情をしていたが、すぐにまた今まで見ていた方にスマホを向けている。
どうやらあちらに高梨くんがいるようだ。
横川くんに近付くと、内容はまだわからないが声が聞こえてきた。
「!!」
沙羅が飛び出そうとするので、何とか押し止る
「沙羅…大丈夫だから落ち着いて」
「私は落ち着いています…」
本人は落ち着いているつもりなのかどうか知らないが、今まで見たことのない表情をしている。目が鋭すぎて怖い
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