第408話 再びパーティー会場へ
「…なた、そろそろ起き…」
「…ん…?」
何処からともなく聞こえてくる、慈愛に満ち満ちた女神の声に導かれ…
ふわふわと何処かを漂っていた俺の意識は、少しずつ覚醒を始める。
そして後頭部に伝わってくるのは、天国と呼ぶに相応しい極上の心地良さと温もりと、まるで揺りかごのように俺の身体を優しく揺らす、愛しい愛しい…
「…さ…ら…さ…」
「…んっ」
ちゅ…と、不意に柔らかく温かい"何か"が俺の唇に触れ…
それがトリガーであったかのように、俺の眼がパッと開き、その視界に飛び込んできたのはもはや神々しさすら感じさせる、俺の愛しい「女神様」の笑顔と、自己主張強めな二つ…
二つの…
…何でもないです、はい。
「おはようございます」
「お、おはようございます」
「…どうかなさいましたか?」
「え、い、いや、何でもないっすよ?」
「ふふ…その言い回しでは、何かあったと言っているようなものですよ? さぁ、正直にお話し下さい」
「えーと、その…」
困ったぞ、これはいきなり大ピンチ。
まさか、起き抜け早々目に飛び込んきた"それ"をモロに意識してしまっただなんて、そんなこと沙羅さんに言う訳にはいかない。断じていかない!!
ただ一つだけ言わせて貰いますと、今日の沙羅さんは普段なら絶対着ない身体のラインが出てしまうドレスを着ている訳でして…しかも今は上着を脱いでしまっているので、つまりですね。
「?」
でも当の沙羅さんはそれを全く気にしていない…と言うよりかは、普段俺の考えをアッサリと見抜いてしまうあの鋭さも、こういう方面に関しては何故か全く機能しない(俺限定)ようなので…それはそれで困ると言うか、助かると言うか。
俺だって、一応は健全な男子高校生なんですけどね?
「さ、沙羅さん?」
「あ…」
俺が苦し紛れに名前を呼ぶと、沙羅さんは急に何かに気付いたような…先程の不思議そうな様子とはまた違う、僅かながら表情を曇らせ…
ひょっとして俺、何かやらかしました?
「沙羅さん?」
「ふふ…何でもございませんよ?」
「いやいや、その表情は何でもないって顔じゃ…」
「でしたら私も、そっくりそのまま一成さんにお返し致しますが?」
「うぐ…」
そう返されてしまうと、俺もこれ以上追求する訳にはいかないというか…でも気になる。
「本当に大したことではないのですよ? 別に今焦らなくても、将来そうなって頂ければいいだけの話ですし」
「そ、そうなんですか?」
「ええ。それに一定の効果が出ていることは確認出来ましたから、これからも定期的に練習を重ねていけば問題ないかと」
「な、なるほど?」
うーん…沙羅さんが言っていることの意味が全く分からん。
取り敢えずマイナスに捉えている訳じゃないなら大丈夫そうではあるが…とは言え。
「ふふ…一緒に頑張りましょうね、あなた?」
「分かり…わ、分かったよ、沙羅」
「はい、良く出来ました♪」
こうして沙羅さんが見せてくれる笑顔そのものには、陰りなど全く感じないので…それにあっちの話は何とか誤魔化せたみたいだし。
だから取り敢えずは…
ま、いっか。
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「お帰りなさい、坊っちゃん」
「お疲れ様でした」
「あはは、ただいまです」
ドアの外に待機していた案内係の女性社員さん達に連れられ、パーティー会場に戻ってきた俺と沙羅さんは、そのまま竹中さん達と無事に合流。
ここまで行動する度に何かしら騒動に巻き込まれていたので、今回は何事もなく目的地に到着出来たことを少しだけホッとしていたり。
「あれ、政臣さん達は…」
「専務と奥様はまだお戻りになっておりません。お迎えには向かっておりますので、もう暫くすればお戻りになるのではないかと」
何気ない俺の疑問に空かさず答えてくれたのは、竹中さんの横にいる上山さん。どうやら政臣さん達は、まだ大叔父さんとの話し合いが終わっていないみたいだが…あちらはあちらで、一体何の話をしているのかワリと気になる。
「それで坊ちゃん、会長との面会は如何でしたか?」
「特にこれと言った話をした訳じゃないんですけど…強いて言えば、俺の意思確認って感じですかね」
「意思確認…ですか?」
「ええ。沙羅さんとの将来や今後の進路を、俺がどこまで本気で考えているのかって」
「あぁ、そういう…」
竹中さんは俺の話に合点がいったのか、うんうんと大きく頷き…
「私との将来ですか?」
「はい。これから先も沙羅さんと付き合っていく為に、俺が無理してるんじゃないかって」
これは厳密に言えば少し意味合いが違うのかもしれないけど、大叔父さんの話にそういう側面があったことは間違いないと俺は思っているので…嘘ではないはず、多分。
「あ、先に言っときますけど、俺は全然無理なんかしてませんからね? 寧ろ自分の夢と希望を理想を兼ね揃えた、最高の進路だと思ってますし」
「ふふ…存じておりますよ。もし一成さんが無理を為さっていると感じていたら、私も後押しなど致しませんし」
「ですよね? とにかく、大叔父さんとの話し合いではその辺のことを再確認したって感じです」
「「大叔父さん!?」」
俺が何気なく口にした「大叔父さん」という呼び名に、竹中さんだけでなく、横で話を聞いていたチームの皆さんまで大きな驚きを見せ…そう言えば、その辺りの話もしてなかったか。
「さ、佐波の会長を大叔父さん呼び!?」
「こりゃスゲェ…いや、坊っちゃんの立場を考えたら普通なのかもしれないけど、でもスゲェ」
「うーん…こういうの聞いちゃうと現実味が増すよねぇ」
「はは、それで会長は何と?」
「えっと、俺の意志はしっかりと分かったし、これからは親戚として宜しく…って」
「ということは、無事に認めて頂けたのですね?」
「はい。と言いますか、大叔父さん的には最初から認めてくれてたみたいで、その上で俺の意思を再確認したかったってことみたいです」
これはもっと正確に言えば、他ならぬ沙羅さんが認めた男であり、しかも"あの一件"があったからこそという話ではあるが…まぁ、そこまで説明しなくてもいいか。
「良かったですね、坊ちゃん! これで正真正銘、会長のお墨付きですよ!」
「坊っちゃん、おめでとうございます」
「おめでとうございます!!」
「あ、ありがとうございます」
ちょっと大袈裟すぎる気がしないでもないが、こうして色々な人からお祝いして貰えるのは素直に嬉しい。
正直、今日のパーティーに於いて大叔父さんとの面会が一番の難所だと思っていたから、それが無事に終わったことも地味にありがたいし。
「これで後は、今日のメインイベントを残すのみで…おや?」
「ん?」
「えっ?」
「へ?」
それぞれ満面の笑顔で喜びを見せてくれていた竹中さん達が、唐突に何か気付いたように声をあげ…
それと同時に、俺の背後で何やら「くいくい」っと、上着を軽く後ろに引っ張られるような感覚。
…おや?
この動き、妙に馴染み深いような…
「…花子さん?」
「えっ!?」
沙羅さんが口にしたその名前に大きな驚きを覚えつつ、俺も慌てて振り返ってみると…そこにはいつものように、俺の上着の裾をちょこんと可愛らしく握りながら、無言でじっとこちらを見上げている一人の少女…花子さん。
と言うか…
何でここに!?
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はい、という訳で、もう一人参加者が追加されました(ぉ
そして申し訳ないのですが、どうしてもこれ以上時間が取れなかったので、今回はここまでとさせて頂きました。もう忙しくて忙しくてorz
私は明日明後日も予定が詰まっていて、年明け二日から成人の日が終わるまでは全て仕事で埋まっているので、この続きを書く時間は暫く取れないかもしれません・・うう。
とまぁそんな嘆きはここまでにして・・・
皆様、今年も一年、大変お世話になりました&ありがとうございました。
今年は定期のスランプに加え、本編をぶったぎって色々と騒いでしまったこともあり、それでもこうしてついてきて下さる読者様がいらっしゃることにひたすら感謝感謝です。
そして来年こそはスランプを抜けたい・・・あと、せめてもう少しくらい、ちゃんとした形で書けるようになりたいです。自分で読み返してみるともう本当に酷くて、思わず項垂れてしまうくらい・・・
とにかく、また来年も頑張りますので、引き続きどうぞ宜しくお願いいたします。
それでは皆様、よいお年を・・・
P.S. 本当に忙しくて仕方ないので、コメントのお返事はもう少しお待ちください・・・
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