第155話 一応の決着を迎えて…

「さて…後味悪いけど、一応終わったのかな?」


静まり返っていた会場の空気を、少しでも明るくしようと考えてくれたのか、夏海先輩が気を取り直したように大きめの声を上げた


「そうですね、笹川さんの件は残念だったけど、山崎からは離せた訳だし…あとは本人次第ですね。」


速人が夏海先輩に合わせるように、少し明るめの返事を返す。


「そういえば、山崎は結局どうなるのかな?」


立川さんの問いかけは、きっとみんなも気になっていることだろう。

どうなるのか…

本人達もそうだが、会社は? 今後は? 仕返しは済んだとはいえ、その辺りは気になるというのが本音だ


「少しくらいならわかりますよ?」


西川さんは何かしら知っているようで、立川さんの問いかけに答え始めた。


「まずわからない部分としては、あの二人がこの後犯罪者として処罰されるのか? されるとすればどんな処罰か…という部分です。その辺りはさすがに警察や検察の仕事なので、私達一般人ではわかりませんね。ひょっとしたら他の罪も出てくるかもしれませんし。」


一般人…西川さんが一般人のカテゴリに収まるのかどうか突っ込み所はあるけど。

それはともかく、最終的に裁判がある可能性まで考えればその辺りは全くの未知数だろう。


「そしてお父様の話では、まず会社については西川が関係している某小国の会社からの買収という形になるそうです。そしてあの二人については私も詳しいことは教えて貰っていないのですが、お父様の話ですと日本には帰ってこさせない…という話でした。まぁ奥さんとはとっくに離婚していて、親戚とは絶縁しているようなので、問題なさそうですね」


日本に帰さない…買収する会社がある国に行かせるって意味か?

難しい話っぽいしよく分からないから、その辺りは西川さんのお父さんに任せるしかないだろう


「それなら二度と山崎の顔を見ることはなさそうだね。どうせならあいつも捕まればいいのに」


「清々した。これで顔も見たくない相手を調べるのも終わりだし、私も普通の高校生活に戻れる。」


立川さんの意見には俺も同意だな。

あ、そういえば山崎の件が終わったら、花子さんが名前を教えてくれるようなことを言ったような言わないような


「花子さん、山崎の件は片付いたし、そろそろ名前を聞いてみたいかも」


「花子さん」で慣れてしまったから、このまでも良いような気もするけど…なんとなく興味があるので聞いてみた


「……ひょっとして、私に興味があるの?」


花子さんがニヤリと笑いながら俺に聞き返してきた。

何だろう…確かに興味があるから聞いたんだけど、そんな意味深な返しをされるとニュアンスが変わってしまうな気が…


「……興味が、あるのですか?」


ゾクッ


後ろにいる沙羅さんは普通に言っただけのはずなのに…何故か寒気を感じた

急いで振り返ると、沙羅さんはいつものように笑顔を浮かべている。

でも何故だろう…妙なプレッシャーが


「そう…気付かなくてごめんなさい。いつの間にか高梨くんを魅了していたなんて。」


「一成さん……?」


ロ◯キャラの花子さんが、そういう台詞を吐くと背伸びしているようで微笑ましいのだが、今は勘弁してほしい。


それはともかく再び沙羅さんが俺に問いかけてきているし、これは早く説明しなければ!?


目が笑っていない沙羅さんの側に焦って寄ると


「えいっ」


沙羅さんが可愛い掛け声と共に、まるで俺を捕まえるように横から勢いよく抱き付いてくる。そのまま反対側まで腕を回して、しつまかりと確保されてしまった


「えっ!? 沙羅さん!?」


「…どうかなさいましたか?」


表情が上手く見えないが、多少は機嫌が直ったのだろうか?


「いや……その、怒ってませんでしたか?」


「……怒っておりませんよ?」


よく見ると頬を膨らませていた。

なので、そんなこと言われても説得力が…

とりあえず沙羅さんの好きにさせてあげようと思い、このまま会話を続けることにした。


「それで、本当の名前は…」


「焦らなくていい。次に運命が交差するそのときこそ、高梨くんには私の真名を教えてあげる」


…つまり、次に会ったら教えてくれるということか?

どうも大袈裟というか何というか。

しかし、山崎を潰すという目的が成されたからなのか、花子さんはいつもより機嫌がよさそうだ。


「なら俺にも教えてくれるのかな? 気になっているのは一成だけじゃないんだけど」


「そうだな。俺もいい加減気になるぞ?」


速人と雄二が俺の話に便乗した。

自分達も加わることで、沙羅さんへのフォローに協力してくれているというのは考えすぎか?


しかし…ああいうさらっとした雰囲気で聞けば余計な勘繰りを受けずに済むのか。さすが速人だ…と思ったら、花子さんが微妙に嫌そうな顔をした。


「二人はフラグが立ってないから無理。特にイケメン」


「「………」」


花子さんが速人を苦手としていたのは気付いていたけどバッサリだな


「あら? 橘くんも花子さんに興味があるのかしら?」


ここで夏海先輩が話に加わるとは予想外だ。

しかも…速人ではなく雄二に突っ込みをいれるとは思わなかった。

からかっているのかいないのか、微妙な雰囲気の一言だったが、やはりあの二人は俺が思っているより仲がいいのかもしれない。

この前の話もあるし、きっと沙羅さんもそんな感じで二人を見ているだろうと、何となく視線を向けて確認……


何故か頬を膨らませたまま、今度は俺の顔を睨むようにじっと見ていた。あれ…何で?


「花子さんと何があったのですか? 一成さんだけ特別扱いのようですし、随分と仲が良いようで…」


「いや、俺には心当たりが…」


「橘くん、そういえば花子さんと前から関係があったようだし、連絡も取り合ってたんだよね? ひょっとして仲がいいのかしら?」


「い、いや、それは山崎に関する話だけで、それ以上のことは何も…」 


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「ふぅ…私は罪な女。」


花子さんが面白がっているのは見ればわかるけど、あの二組はリアクションが同じで確かに面白いかも…ごめんね高梨くん

でも高梨くんと薩川先輩は恋人だからわかるんだけど、ひょっとして橘くんと夕月先輩も?


橘くんのことはまだよく知らないけど、学校が違うしどういう関係?

ちょっと気になる〜って、横川くんどうしたんだろう?

ちょっと寂しそうな…大丈夫かな?


「横川くん、どうしたの?」


思いきって声をかけてみた。

学校では接点もなかったから、声をかけるなんて考えたこともなかったけど…今の私達は仲間だからいいよね?


「えっ? いや、何でもないよ。」


私から声をかけられるとは思っていなかったようで、ちょっと驚いた様子を見せたけど、直ぐに笑みを浮かべて返事をしてくれた。


うーん…確かにイケメンだとは思う。

こうしてマジマジと見ると、女子から人気があるのは当然かなぁ…私はそうでもないけど。

でも高梨くんとのやり取りを見る限り、性格も友達思いで真面目みたいだし、見た目から感じるイメージとは違うんだろう。


それって損をしているのかな? 得をしているのかな?


まぁそれはともかく、何でもないって顔はしてないんだけどな…

うーん…何か…あ、そうだ!


「はい横川くん、これあげる」


未央ちゃんにあげる飴を持っていたことを思い出したので、横川くんに渡してみた。


「あ、ありがとう。」


横川くんは飴を不思議そうに眺めると、そのまま袋を破いて口に入れた。

少し表情が和らいだ?


「甘いものを食べるとホッとするよね?」


未央ちゃんも、ぐずったり不機嫌になったときに飴をあげると笑ってくれるから…

横川くんも少しは気分転換になってくれるといいんだけどな


「………」


あれ…どうしたんだろう?

なんかボーっとしてる?


「横川くん、どうかした?」


「い、いや、何でもないんだよ。うん、ありがとう。嬉しいよ。」


今度はしっかりと笑顔を浮かべてくれた。

うん、よかったよかった


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結論から言うと、あの後沙羅さんは直ぐに機嫌を直してくれた。

すぐにハッとした表情を浮かべてから、俺に謝ってきたのだ。


「申し訳ございません…あくまでお友達として仲が良いということはわかっているのですが…これは私の悪い癖です…」


「沙羅さん…前も言いましたが、俺は沙羅さんが嫉妬してくれることも嬉しいですから、謝らないで下さい」


これは本心だからな。

もちろんわざと嫉妬させるようなことは絶対にしないけど、気持ちは嬉しいし、そんな沙羅さんも可愛いと思っている。

シュンとしている沙羅さんも可愛いと思いながら、頭を撫でて安心してもらう。


「ふふ…ありがとうございます。こうして頂くと安心しますね…幸せです」


暫く撫でていると、嬉しそうに笑顔を浮かべて機嫌を直してくれた。


そこまでは良かったのだが


「ええ、俺はいつも沙羅さんにこうして貰っていますから、幸せだと思う気持ちはよくわかりますよ。沙羅さんが可愛いです」


「……でしたら次は、一成さんに幸せを感じて頂く番ですよ。」


「へ?」


言うが早いか、いつものようにあっさりと俺の頭を捕まえると、そのまま胸に押し当ててぎゅっと抱きしめられてしまった


「ふふ…やっぱりこれが一番落ち着きます。一成さん、如何ですか?」


いつも思うのだが…沙羅さんは無頓着なのか、まだわかっていないだけなのか…


俺も男な訳で、自分の好きな人の胸に顔を押し当ててぎゅっとされてしまうと…

いや、もちろん嬉しいんだけどね


「幸せです…」


「はい、私も幸せですよ…一成さん可愛いです」


ずっとこのままでもいい…そんな心地好さに身を任せていたかった。


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「そろそろ蹴っ飛ばす?」

「…ちなみそれはどっちを?」

「もちろん高梨くん」

「そんなことしたら、あの強烈なビンタが飛んでくるんじゃないかな?」

「……あれは死ぬ」



「橘くんは今回頑張ったよね。結構立ち回りが上手いみたいだし…私的にはちょっとポイント高いかも?」


「え!? いや、俺は一成の為に…それを言うなら、あの人数のバカ共を相手に独りでやりあった夕月さんも凄いと思いますよ? 俺は尊敬します」


「へ?」


「「…………」」



あの…皆さん…この後どうするのか話をしたいのですけど…

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