第64話 混沌の生徒会室
「さて、今日の議題を始めよう」
どうやら打ち合わせが始まったようだ
何となくだけど、聞こえてきてしまうんだから仕方ないよな。
別に聞いてはいけないってことはないだろうけど。
続けて沙羅先輩の声が聞こえる
いつも俺が聞いているより、凛とした感じの声に聞こえた
「では、来月の体育祭についての注意点の洗いだし、司会進行の確認……」
そういえば、もうすぐ体育祭があるんだよな。
クラスに入りきれていない俺は、どうなるんだろうか
中学のときは、いつの間にか個人種目のみになってたけど…それならそれで気楽だけど
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ガチャ…
「すう…すう…」
あら、高梨さんは寝てしまったのですね。
病み上がりで疲れていたでしょうから、当然ですね…
こんな何もやることのない場所で一人にしてしまい、申し訳ないです…
またしても私の我が儘で…っといけませんね、こんな考え方をすると、高梨さんに叱られてしまいます。
どうしましょうか…休憩時間なので、お茶でもと考えたのですが…
やはりこのまま寝かせて差し上げましょう。
ーー少しくらいはいいですよね?まだ休憩時間はありますし……
では失礼して…このままタオルを抜いて…頭をなるべく動かさないように…
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……ん?
何か、枕の感触が変わった?柔らかくて寝心地がいい…
なで…なで…なで…
はぁ……落ち着く…
コンコン
ガチャ
「失礼しま〜す。薩川さん、お茶を淹れたんですけ……ど…、お邪魔しました〜」
ガチャ
「…おい、何でお茶を持って帰ってくるんだよ。」
「…なんだその微妙な笑顔は」
「…無理、私には無理だから、あれに割り込むなんて不可能だから」
「…はぁ?」
「…ちょっと、何してんのよ。じゃあ私が持っていくから貸して」
コンコン
ガチャ
「失礼します。ごめんなさい副会長、何かお茶を持って………帰ります、失礼しました。」
ガチャ
「…あれは無理だから」
「…無理なのよ」
「…何でだよ?」
「…あー面倒臭い。薩川さんが、あの高梨さんって人に膝枕していい子いい子してあげてるのよ。聞けて満足?」
「「「聞きたくなかった…」」」
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「う…ん」
「高梨さん、起きてしまいましたか?」
目を開けると、目の前に二つの大きい…
そしてこの後頭部にある柔らかい…
あれ?これって膝枕されてる?
「はい、あの…」
「申し訳ございません、その、私が勝手に…」
どうやら寝ている間に先輩が膝枕をしてくれたらしい。
もちろん謝られるようなことは何一つない。
こんな幸せなこと俺はいつでも大歓迎だし、寧ろお礼を言うのは俺だ
「いえ、その、嬉しいんで…ありがとうございます。」
コンコン
「失礼するよ?」
これは会長の声かな?
って、よく考えたらここは生徒会室の隣の部屋だった。
こんなところ見られたら、俺はともかく先輩に迷惑がかかる。
俺は沙羅先輩にぶつからないように、素早く起き上がった。
少し立ち眩みというか、ふらつきを感じでしまったが、先輩がすかさず横から支えてくれる。
「高梨さん、急に起き上がっては体に宜しくないのですよ。」
「ありがとうございます、沙羅先輩」
俺が起き上がったと同時に、会長が入ってきた。こちらを見ると、なぜか納得したような表情を浮かべた。
何に納得したのだろうか?
俺と先輩は、ソファに並んで座っているだけだ。
まぁ正確には、沙羅先輩が俺の左肩と左腕を押さえてる姿勢なんだが
「寝ていたみたいだけど、すまないね。そろそろ打ち合わせの続きをやるんだけど、よかったら高梨くんも聞いていてくれないかな?」
会長が参加を打診してきた。聞くだけでもいいみたいだけど…最初に相談があるようなことを言ってたし、それ絡みかな?
「会長、高梨さんは体調が…」
「沙羅先輩、大丈夫ですよ。相談の絡みもあるんでしょうから、会長、わかりました。」
「ありがとう。では薩川さんの隣に椅子を出すから座ってくれ。」
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?
部屋から出ると、何故か役員の男性陣からは睨まれていて、女性陣からは興味津々の目付きで見られている…ような。
この人達はよくわからないというか、最初にここへ来たときのリアクションもそうだし、変わった連中の集まりなのだろうか…
俺に続いて部屋から出て来た沙羅先輩は、俺が睨まれてると瞬時に判断したようで
「高梨さんに何か言いたいことがあるようですね? 私が聞きます。言ってみなさい?」
あ…先輩がキレ…
「!?」
「すみません、何でもないです!」
「ごめんなさい!」
「薩川さん、彼等はショックを受けただけだから許してあげて…」
「会長は黙っていて下さい」
「…はい、すみません」
これは、俺が悪いんだろう。
普通に考えて、役員でもない俺がいきなり入ってきて休ませて下さいなんて図々しいよな。
しかも真面目に仕事をしている人たちの横で寝ちゃってるし、怒るのもしかたない話だ。
これは俺がフォローしないと申し訳ない。
「沙羅先輩、俺は大丈夫ですから。それより打ち合わせの続きを始めて下さい。せっかくなので沙羅先輩の副会長姿を見せて欲しいです。」
「高梨さん…はい! 私、頑張りますから見ていて下さいね」
先輩がとてもいい笑顔で、俺に返事を返してくれた。
機嫌も直ってくれたみたいだし、これなら他の人も話をしやすいだろう。
「「「…ぐおおお!」」」
なのに、何故か男連中は床にへたり込んだ
「…膝枕…羨ましい…悔しい」
「…俺達なんて、笑顔すら」
「…諦めよう」
三人で馴れ合うように肩を組んだ
ちょっと気持ち悪い
「…あ〜もう男連中はダメね」
「…それより、薩川さん可愛い」
「…それよそれ、何あの笑顔、あの二人絶対にデキてるでしょあれ」
女性陣は相変わらず興味津々というか、ニヤニヤして何か小声で話をしてるし
「…どうやら、いきなり効果を確認できたな。」
そんな中、生徒会長だけが冷静に何かを感じているような素振りだった。
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