第327話 特別は、全て

「それでは……スタート!!!!!」


 ぷぉ~~~ん!!!


 わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!


 みなみんの号令と共に、審査開始を告げるホイッスル…のような何かが、高らかに鳴り響く。


 大歓声の中始まった最終審査の料理対決は、先ずは小手調べの食材選びからスタート。

 お題は自由なので、とにかく制限時間の30分以内に完成させればオーケー。品数の制限も特にない。


 そして審査が始まってしまえば、もう俺の出来ることなど何も無くなってしまうので…

 この場から沙羅さんの勝利を祈りつつ、勝負の行方を見守ることしか出来ない訳だ。


 とっても歯痒いけどな。


「さぁぁぁぁぁ…皆さん一斉に食材へ飛び掛かりました!!!! 早くも一部で取り合いが発生しているような気もしますが、種類は豊富でも数に限りがありますからね!!!! 当然早い者勝ちでぇぇぇぇぇす!!!!」


 取り合いと言っても、お互いが我先にと手を伸ばしているだけなので、特に揉め事その他が起きている感じでもない。

 そしてそれはタカピー女だけでなく、皆さん形振り構っていられないと言った様子。


 但し…沙羅さんと真由美さんは、既に食材を確保済みのようで、悠々と自分のスペースへ戻っていく。

 二人が食材の取り合いをした様子は無かったが、それは周囲が…主に沙羅さんだが…何故か近寄ろうとしなかったような?


 まぁ…沙羅さんは間違いなくガチになってるので、或いは強烈なプレッシャー(?)に圧されて近寄り難かった…とか?


「さて、薩川さんと真由美さんは、早くも調理に取り掛かりましたが、果たして二人は何を作るつもりなのか!!!! 先ずはお互いに皮を剥き終えた玉ねぎを手にしてぇぇぇ………は、早いぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!! み、みじん切りの速度が半端ないですぅぅぅぅぅ!!!!!! なんじゃこりゃぁぁぁぁ!!??」


 うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!


 ステージに設置された大型スクリーンには、沙羅さんの手元…現在、まな板の上で起きていることが映し出されていて、凄まじい速さで玉ねぎが刻まれていく。ときおり真由美さんの手元へもカメラが移動するが、こちらもこちらで凄まじい勢い。

 もはや、素人目では差など全く分からないが…沙羅さんが決して負けていないことだけは確かだ。


 頑張れ、沙羅さん!!


「うぉぉぉ、す、凄すぎぃぃぃぃ!?」


「うっひょぉ…やっぱ沙羅が本気を出すと、凄まじいねぇ」


「高梨さんとの生活が掛かっているから、沙羅も出し惜しみ無しでしょうね」


 普段とは明らかに違う沙羅さんの様子に、皆も驚きを隠せない。鬼気迫る…とまでは言わないが、脇目も振らず料理に打ち込む沙羅さんの勢いは、俺の目から見ても凄まじいものがある。

 そして当の沙羅さんは、早くもフライパンで玉ねぎを炒め始めており…特に和美さんが、驚愕の表情でスクリーン見つめている。


 この場で唯一の主婦だから、何か思うところがあるのかも?

 

「ねぇねぇおにぃちゃん、さらおねぇちゃん、ごはんつくってるの?」


「そうだよ」


「みお、さらおねぇちゃんのごはんたべたい!!」


「そっかそっか。それじゃ今度、俺と一緒にお願いしてみようか?」


「うんっ!! 約束!! えへへ~」


 嬉しそうに何度も頷いて、未央ちゃんは甘えるように俺の肩へスリスリと。

 こうしてあげるのはご無沙汰だからか、今日はいつにもまして甘えん坊のような?

 もちろん、俺としては問題なしだけど。


「…もう完全に馴染みすぎてて、高梨くんが子育て中の若パパにしか見えない件について」

「…いや、私もそう思ったけど…これ以上突っ込むと、またえりりんに怒られるからね?」

「…うっ…そ、そうですね。高梨くんを茶化すと恐くなる人が多いんで、大人しく止めときます」


「ね、ねぇ高梨くん、普段の薩川先輩って、いつもあんな凄い速さでお料理をするの?」


「いや…普段の沙羅さんは、もっと楽しみながら料理をする人だよ。あんな風にはやらない」


 いつもであれば、それこそ鼻歌でも歌いながら、踊るようにリズミカルに…それが沙羅さんのスタイル。

 だから、これを「本気」だと言ってしまえば聞こえはいいのかもしれないが、俺からすれば「無理をしている」とも言えてしまう訳で。


 沙羅さん…


「いやぁ…皆さん流石ですねぇぇぇぇぇ!! この場に出るだけあって手慣れています!!! みなみんは料理が全く出来ない人なので、それだけでも称賛に値しますよ!!!! と言うか、料理が出来る人を恋人にすれば問題解決!!??」


「お、俺は料理できるぞぉぉぉぉぉ!!!!」

「みなみん、それなら俺がオススメだぁぁぁぁ!!!!」


 各テーブルを細かく回りながら、トークを交えて実況解説に花を咲かせるみなみん。

 自分のことまで笑いのネタとしてぶっ込んでいくので、客席は歓声に応援、笑いに突っ込みと、なかなかにカオスな状況を醸し出している。

 でも総括的に言えば、これは「大いに盛り上がっている」と言えるだろう。


 相変わらず上手い…


「さてさて、それではここで、少しインタビューでもしてみましょうか!!! 先ずは誰から…」


「薩川さぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!」

「女神様ぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

「沙羅ちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!」


「はいはい、予想通り過ぎるリアクションありがとうございます!!! ではご要望にお答えして、先ずは薩川さんに…」


 ステージ上のカメラが移動して、沙羅さんとみなみんのツーショットがスクリーンに映し出される。

 みなみんはピースをしながらカメラ目線で笑顔を振り撒いているが、沙羅さんはそれをガン無視して手元から目を離そうとしない。


 微妙にシュールな光景…


「えーと…薩川さんは何を作って…いや、見れば分かるだろって言われたらそれまでなんですけど…」


 スクリーンの映像には、沙羅さんが挽き肉を丸くしている様子(相変わらず速い)が映し出されていて…ひょっとしなくても、あれはハンバーグか?


「ハンバーグですよ?」


「ですよね~。いくら料理の出来ないみなみんでも、これは分かりました。と言うか……形を作るの早っ!!!???」


「成型するときは、手のひらの体温だけでも肉の脂が溶けてしまいますからね」


「あ、そうなんですねぇ……って、いやいや、そうじゃなくて!!!! つか、私と話をしてるのに速すぎで…しかも量ってないのに、全部同じサイズに見えるんですけど!!?? どんだけ!!??」


 「どんだけ」というより「ドン引き」しているように見えるオーバーリアクションに、客席から大きな笑いが溢れ出す。

 スクリーンの映像には、みなみんの言う通り、全く同じサイズに見えるハンバーグがいくつも並べられていて…審査員の人数分。


 あ、ちなみに料理対決の審査員は、顧問を含めた料理部の面々を筆頭に、準備会の主要メンバーを加えた計15人とのこと。


「あ~もう、いちいち驚いてたら私の身がもたないんで、ここらで止めときます。ちなみに薩川さん、何故今回の勝負にハンバーグを選んだのか聞いてもいいですか?」


「……残念ながら、母とまともに勝負をするのは分が悪いですからね。だから、私の一番得意な料理で勝負をするしか…」


「おお、なるほどぉぉ!!! つまり、薩川さんの一番得意な料理はハンバーグと言うことになるんですね!?」


「…そうですね」


 これについては、俺達が付き合う前の話に遡るんだが…


 全体的にそつなく料理をこなせる沙羅さんは、得手不得手の差はあっても、特別「これが得意」という料理は無かったらしい。

 そんな沙羅さんが、何故ハンバーグを得意とするようになったのか…それはもちろん、俺の大好物だったから。


 俺の好物を知った沙羅さんが、何度も研究と試作を重ね、遂に完成させてくれたのが究極のハンバーグ。それは沙羅さんが、俺の為に作ってくれる特別なものであり…だからこそ、理由どうあれ他人に食べられたくないと思ってしまう俺がいる。


 それが情けない独占欲であることも分かっているので…ちょっとだけ、自己嫌悪かも。


「いやぁぁぁぁ、それにしても、薩川さん渾身のハンバーグが食べられるなんて、審査員は役得で…」


「…? 私は別に、渾身で作ってなどいませんよ?」


「…へ?」


 キョトンとした表情を浮かべるみなみんに…実は俺もそうだったりする。


 だって沙羅さんがハンバーグを選んだのは、もちろん真由美さんに勝つ為な筈。

 となれば当然、出し惜しみ無しの全力で作ると思ったんだが…はて?


「もちろん手は抜きませんが、だからと言って、私の作れる100%のハンバーグという訳でもありません。第一、それを作るには材料が足りませんし…それに」


「あ、材料が足りませんでしたか!? それは申し訳ありませ…」


「ちょっと薩川さん、そういう言い訳はあまり感心しませんね? 材料が足りないから完璧な物が作れない等と…それは私達も同じ条件なんですよ?」


 まだ沙羅さんのインタビュー中であるにも関わらず、したり顔で割り込んでくるタカピー女。据え置きのマイクがあるから、こういうとき簡単に割り込めてしまうのがネックだ。

 あと、例え言っていることが正論だったとしても、正直あの顔はムカつく…


「何か勘違いをしているようですが…例え材料が全て揃っていたとしても、私はそれを作るつもりはありませんよ?」


「…はぁ?」


「あ、あれ? そうなんですか?」


「ええ。今回は、あくまでも母から教わったレシピで作ります。それを、今の私の技術で作って勝負する…最初からそのつもりでした」


「な、なるほど!! 言っている意味はよく分かるんですけど…でも100%が作れるなら、それを作った方が確実なんじゃ…」


「それはそれ、これはこれです。母を越えたことを証明するのであれば、教わったもので勝利するのが一番分かり易いですから」


 ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!


 沙羅さんの熱血とも言える強気な発言に、客席から驚きと感動が混じったような大きなどよめきが起きる。

 確かにその考え方は正しいと思うし、心意気も凄いと思う。でもそれは、勝利する難易度が高くなることも確かで…


 …いや…待てよ。


 そもそも真由美さんは、「審査内容で自分に勝利しろ」なんて言ったか?


「とのことですが、当のお母さん…真由美さんは如何でしょ……真由美さん?」

 

 みなみんの問い掛けに反応する気配が無く、真由美さんは料理の手を止めて、嬉しそうに沙羅さんを眺めている。

 今日の真由美さんは、こういうリアクションが微妙に多いような。


「まぁ…どちらにしても、この場で完璧なものは作りませんけどね。私の特別は、全てかず…」


「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! だからそれはまだ早いってぇぇぇぇぇぇ!!!」


 何かを掻き消す(誤魔化す?)ように、両手足をバタバタと振り回しながら暴れるみなみん。それを見て「きゃはははは」と大笑いする未央ちゃんが無邪気で可愛い…じゃなくて!


 ひょっとして、今?


「はぁ…ホント沙羅はぶれないねぇ」


「嫁は一成より大切なものがない。だからどんな理由があろうとも、そこだけは絶対に譲れない」


「自分の特別は、全て愛する人の為だけに…だね。ふふっ…素敵だなぁ、いいなぁ…」


「満里奈は、そういうロマンチックなの大好物だよねぇ」


「本当に愛されてるね、一成は」


「ニヤけてるのは、隠せてないからな?」


「うっさい」


「おにぃちゃん、うれしいの?」


 最後に未央ちゃんが、つんつんと俺の頬を突っつく。

 それはつまり、子供が見ても分かるくらいに、嬉しい気持ちが顔に出ているってことであり…でもそれは仕方ない。

 だって、こんなに嬉しい気持ちを隠せる訳がないだろ?

 自分の大切な人からそこまで特別に思われて、俺は本当に幸せだ…


「さ、さて!!!! 気を取り直して次に行きましょう!!! 続いてのインタビューは…」


 リボンの付いたハンドマイクを片手に、他の出場者の元へ移動を始めるみなみん。

 一緒に移動しているカメラさんの映像は、逐一スクリーンに映し出され、各出場者の調理風景もしっかりとそこに映し出されている。

 沙羅さんや真由美さんのように圧倒的な手際の良さは無いにしろ、全く料理の出来ない俺からすれば、もう十分すぎるくらい凄いと思う。


 但し…あいつは何を作ってるんだ?


「えっと…楠原さん?」


「はい、何でしょうか?」


「それは何を…」


「見て分かりませんか? サンドイッチですよ?」


「いや、それは勿論分かってるんですけど…」


 これに突っ込むべきか否か、みなみんが本気で悩んでいるのが手に取るように分かる…俺も全く同じだから。


 サンドイッチも料理であり、そういう意味ではルール上おかしくない。

 とは言え、他の人達は全員「切る」「焼く」「炒める」「煮る」といった調理をしているにも関わらず、こいつは…「素材をそのまま生かした」とでも言えば、聞こえはいいのか?


 あ、それでも一応、「切る」だけはやっているのか…そのままパンに挟んでいるだけだが。


「全く…去年は料理審査なんてやらなかったでしょう?」


「そ、そうですね。一応、審査内容を毎年変える決まりがありますから…」


「もう少し先に教えて貰えれば、しっかり準備しますのに」


「いや、そんなガッツリと前準備されたら面白くないんで…」


 大方、事前情報が早ければ、実家の方で料理の家庭教師とか呼ぶつもりだったんだろう。

 でもそうなると、前回のミスコンでこいつが優勝できたのは、かなり運が良かったからということになるんじゃないのか?


 沙羅さんが出なかったから、化けの皮が剥がれることがなかった。

 たまたま苦手な審査項目が無かったから、化けの皮が剥がれることがなかった。

 或いは得意な審査項目があったから、化けの皮が剥がれることがなかった。

 

 こんなところじゃないのか?


 …ん?

 何か変なこと言ったか 、俺?


「さ、さぁ、それでは最後の方にインタビューに向かいましょう!!!」


 微妙な愛想笑いを残して、タカピー女のテーブルから離れるみなみん。その行く先は、意図的なのかたまたまなのか、最後に残った真由美さんの元へ。


「さてさて、真由美さんは…っと。あれっ!!?? それはひょっとして…」


 カメラの映像がスクリーンに映し出されると、そこには沙羅さんのときと同じような光景。

 同じ材料を取っていたし、ここからでも作業は少し見えていたので、何となく予想はついていたが…やはり真由美さんもハンバーグだったのか。


「こ、これは驚きましたぁぁぁぁ!!!!! まさかの親子対決は、まさかまさかの同一料理対決です!!!! やはり娘さんへの試練の為に、同じ料理を選んだということでしょうか!!!!!」


「え? これは、たまたまよ?」


「えぇぇっ!!?? じゃ、じゃあ何で真由美さんはハンバーグを…やっぱり得意料理だからですか!!??」


「んふふ~」


 そこで何故か俺の方に、チラリと意味深な視線を投げてくる真由美さん。

 うーん…嫌な予感がひしひしと…


「それは…私の可愛い可愛い息子(義理)の、大好物だから…ねっ?」


 パチンと可愛くウィンクする姿に、妙な色気を感じて思わずド…じゃない!!

 だから、際どいことをしないで下さいってば!!!


「へっ? いや、息子さんって…え、えええぇぇっ!!?? いやいやいや、それはまだ気が早すぎ…あっ!!?? すみません独り言ですごめんなさい!!!!」


 何かを呟いたり叫んだり、今日のみなみんは色々と忙しい。

 でも一瞬、こちらを見てから騒ぎ始めたような気が…これはやっぱり、俺と沙羅さんのことを、ある程度知っていると見て間違いなさそうか?

 

 うーん…

 沙羅さんとの意味深なやり取りといい、何か余計なことにならなきゃいいんだけど…


-------------------------------------------------------------------------------------------------


 side 沙羅


 思わずムキになってしまい、意気込んで勝負を受けはしたものの…

 冷静に考えてみれば、そもそも今回の勝負は明確な勝利ラインが存在しません。


 絶対に勝つ、絶対に負けないと豪語してみたところで、それは結局、どうでもいいミスコンの審査結果でしかない。そんな下らない結果が、一成さんと私の生活に影響を与えるなど有り得ない話です。


 そこで、母の言葉をもう一度思い出してみれば…


 「負け」という言葉を使いはしましたが、審査結果で決着をつけるとは一言も言っていません。

 つまり、単純に結果で勝利する意味は殆どない。「勝負に勝てばいい」という考え方では、恐らく母の設定した勝利基準を満たさないということでしょう。


 我ながら、随分と曖昧な勝負を飲んでしまったものです。


 とは言え、一成さんとの生活を持ち出されてしまえば、私はこの勝負を受ける以外に選択肢がありませんでした。

 普段はおっとりとした優しい母ですが、明確に厳しい一面を持っていることも事実です。そんな母がこういう態度を見せた以上、間違いなく本気でしょうから。

 具体的にどうするつもりなのか分かりませんが、今の私達の生活に、何らかの干渉をしてくることだけは確かです。


 ですが…私達の生活は、私達のもの。


 例え実の母であろうと、絶対に邪魔はさせません。

 一成さんのお世話をするのは私だけの役目、それは私の生き甲斐なんですから。


 母が不自然なまでに一成さんを気に入っていることは、私も以前から気付いています。

 それは今に始まったことではありませんし、最近ますますエスカレートしてきて、隙あらばちょっかいを出そうとする姿は正直目に余ります。

 何故そこまで、母が一成さんを構おうとするのか、理由はイマイチ分かりませんが…

 父もそれに気付いている筈なのに、あまり嗜めようとしないことも気に入りませんし…


 優しい一成さんが、母の行動に対して強く出れないのは仕方ないことです。曲がりなりにも私の実の母ですし、将来は一成さんにとっても義母となるのですから、気を使って下さっているのでしょう。

 だからこそ、母のことについては父に動いて欲しいというのに…全く。


 とにかく、今回のことは色々と想定外すぎて、本来の予定をどうするべきなのか悩み所です。利害の一致とはいえ、せっかく司会者である深澤さんにも協力して貰えることになったというのに…


 …横道に逸れましたね、話を戻しましょう。


 今回の料理審査も、そういう意味では、勝ち負け自体にそこまでの意味は無いと考えられます。そして現時点で、私が母の満足する結果を見せることが出来ているのかもわかりません。


 ですが料理は、私にとって母から教えられた最大のもの。

 幼少より様々なことを教わった結果が、今の生活を支え…一成さんと私の生活に生きているのです。

 それを思えば、確かな感謝の気持ちがあることも事実。


 であれば…この料理審査だけは、母に勝利する意味があると言える。


 今の私は、母から教わったことが全てではありません。

 一成さんとの生活で新しく得た技術があり、お義母様から教えて頂いた技術もある。母の元を離れたことで、私の料理は三つの技術が重なり、それは一成さんへの想いで新しい形に生まれ変わったのです。


 本来であれば、それは全て一成さんの為にだけ…ですが今回は、一成さんとの生活を守る為。

 だから私は、例えこれが茶番の舞台だと分かっていても、全力でいく。


 それが私を、ここまで育ててくれた母への…感謝と恩返しでもあると思うから。


 もう私は、昔の私ではないのです。

 それを今日、証明してみせますよ…お母さん。



 あぁ、もちろん本気と言っても、一成さん専用レシピでは作りませけどね。

 あれを食べていいのは、一成さんと私だけですから♪


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 どうしても沙羅さん視点を挟みたくなったので、予定外でしたが急遽入れることになりました。そのせいで料理対決が終わりませんでしたが・・・次回は終わるでしょう・・・多分(ぉ


 一応補足説明ですが、会場には女性陣もしっかりと存在しています。ですがミスコンなので、騒いでいるのは男性が圧倒的に多く、声もそれに消されてしまっている・・ということです。後で女性陣も声もしっかり出てきますので~


 それはまた次回~

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る