第52話 女神様の考え事

翌朝

たまたま目が覚めたらもう10時だった。

とりあえず起きてみるが…う〜ん、ダメだな。

まぁ一日で治るなら苦労しないけど


今日は午後から沙羅先輩が来てくれるとのことだったから、今のうちに片付けをしたかったが…無理だ諦めた


冷蔵庫からヨーグルトを出し、朝食代わりに食べる。

暇だけど体がダルいし…横になってネット見て過ごすか…


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「書類のまとめは終わりそうですか?」


「以前、副会長が指示してくれた通りでしたので。」


「そうですか。それより、そろそろ作業速度も早くするよう心掛けて下さい。」


「は、はい、頑張ります」


作業がなかなか終わりません。

最近、効率が悪くなっているような気はするのですが…


「副会長、目安箱の中にあった生徒からの要望なのですが」


「…何か問題かありましたか?」


「こちらで判断のつかないものが増えてしまって、一度チェックを」


「先日、私が用意したガイドラインを確認しましたか?それでも判断はつきませんか?」


「あ…いや、その、ガイドラインは読んだのですが…」


この反応は、ただ読んだだけですね…

何のために用意して配ったのか理解していないということですか


「………会長はどうしましたか?」


「会長は職員室へ行ったままです」


「はぁ…書類のまとめが終わった人から、少しでもいいので他の人のフォローを。チェックが必要なものはまとめて私の方へ流すように。こちらで全て確認します。いいですか?こういうときの為にガイドラインを作ったのです。理解していないのなら読み直しなさい!」


「「「「「はい!」」」」」


「薩川さん凄いなぁ…私の方が年上なのに」

「いや、あれはもうそういう次元じゃないから」

「ほら、早く終わらせましょうよ」


時計を確認すると、もう11時を回っていました。


…早く高梨さんのお家へ伺いませんと、お昼ご飯が遅くなってしまいます。

体力が落ちているであろう高梨さんが、お腹を空かせて待っているというのに…


それに、汗もかいていらっしゃるでしょうから、お身体を拭いて差し上げて、お着替えも…

あ、先にお食事の材料の買い物をしませんと…これではどんどん遅くなってしまいます。

困りました…


「…なんか今日は少し機嫌が悪いかな…」

「…あんたがガイドラインの確認サボったからでしょ」

「…多分、効率を上げるやり方を考えてくれたりしてると思うよ」

「…副会長の真面目さを少しは見習ったら?こうやって、いつも皆の為に色々考えてくれているんだからさ。」

「…早くやろうぜ。また怒られるぞ」


ガラガラガラ


「すまない、遅くなった。」


「会長〜今日は随分遅かったですね」


「すまん、先生の世間話に捕まってしまって、お茶に付き合わされて…」


「会長…」


「い、いや、薩川さん、私は別に」


「いいから早く作業に戻って下さい!高梨さんのお昼ご飯が遅くなってしまいます!」


「申し訳ない!急ぎます!」


「「「「「……高梨さん?」」」」」


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ピンポーン


!?

いつの間にか寝ていたようだ。

だるい体を動かし起き上がる。

ドアを開けると、大きなバッグを持った先輩が立っていた


「こんにちは、高梨さん。調子は如何ですか?」


「こんにちは。調子は…まださすがに。あ、荷物を持ちますよ」


「ダメです。高梨さんは今すぐベッドに戻って下さいね。」


「はい……」


さすがに玄関で問答を続けるわけにもいかないので、俺は大人しくベッドに戻ると先輩がそれに続いて部屋に上がる。


台所に荷物を置くと、ベッドに近付いてくる。


「お熱は計りましたか?」


「あー、まだです。」


体温計は…どこだっけ?

昨日使って…


「じっとしていて下さいね」


先輩が俺のおでこに手を当てた

この前もやってくれたけど、実際にそれでわかるのだろうか?


「まだ高いですね。この感じだと、38度を越えてはいないと思いますが。あとで体温計が見つかったら、改めて計りましょう。」


「はい…」


「まずは、ゆっくり体を落ち着けてくださいね。いきなり起こしてしまったでしょうから」


そう言うと、また俺の頭を撫で始めた

ゆっくりと丁寧に撫でてくれる


……白状します。

俺は先輩にこれをやられるのがすごく好きです…子供みたいだと思われようと、好きなものは好きなんだからしょうがない。


そして先輩の優しい笑顔が見れるのがまた…


「遅くなってしまいましたが、昼食をご用意いたしますので。高梨さんはこのまま休んでいて下さいね」


そういうと、先輩は台所に向かった。

置いてあるものを確認しているようで、暫くすると


「調理道具をお借りしますね」


という声とともに


トントントン…


リズミカルな包丁の音が聞こえてくる。


台所に立つ先輩を後ろから眺めていると…

なんだろう、何か…不思議な気分だ…

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