第102話 テスト結果と夏休み

「どうだった?」

「もう少しいけると思ったんだけどなぁ」


今日はテストの返却日であり、休み時間になると教室ではその話題で持ちきりだった。

俺の手元にも返ってきたテストがあるのだが、想像を上回る点数に驚いている真っ最中だ。


勉強するとこんなに違うんだな…全部沙羅先輩のお陰だけど。


「高梨、お前結構勉強できるんだな!」

「ちきしょー、教えて貰えばよかったわ。」


そんなこと言われても、俺だって教えて貰っていたからな。


「俺だってこんな点数初めてだから。生徒会で勉強会やったからさ」


「それって女神様にも教えて貰えるのか? マジで羨ましいわ…」

「一般参加させて欲しい」


いや…多分参加しても怒られて終わりだと思うわ…


「一成、テストどうだった?」


「正直、びっくりするくらい良かった…」


休み時間なので、速人もやってきた。

ニヤニヤしているところを見るに、あいつも良かったのだろう。


「へぇ、そりゃ勉強を頑張った…って、そういや一成には専属の美人女性教師がいるか」


「なに、そんないい女性教師いたのか。ぜひ紹介して貰いたいぜ」


速人が余計なことを言ったせいで、話が嫌な方向に向いてしまった。


「いや、あの人は一成以外は相手にしないから絶対に無理だな。俺でもやっと話ができるかどうかくらいだし。」


「横川でもダメとか、逆に高梨とどういう関係だよ」


また余計なことを言うから更に興味をひかれてしまっただろうが。


------------------------------------------


「さて、勉強会の甲斐もあり、全員優秀な成績を修めることができたと思う。今後はテスト前に必ず勉強会を開こう。」


俺も含めて、生徒会メンバーは好成績だったらしい。

ちなみに沙羅先輩は俺以外に教えることを殆どしなかったので、他は全て会長が一人で見ていた。

それで全員の成績を上げるとか凄いな…


「では、夏休み中は生徒会も休みなので、全員怪我や病気などないように気を付けて楽しんでくれ。夏休み明けにまた会おう」


会長がそう締めくくり、一学期最後の生徒会が終わった。


------------------------------------------


「はい、あーん」


ぱくっ

もぐもぐ…


「あーー美味い! お弁当でも美味いけど、作りたては格別だなぁ」


今日の夕食はハンバーグだった。

テストで頑張ったご褒美だ。


「そうですね、それにこうしてその場で作れると色々できますので。」


明日からはお弁当もなくなるので、逆にお昼ご飯も含めてどうするのか決めなければならない。

それに、沙羅先輩は夏休みどうするのだろうか…


「沙羅先輩、夏休みは何か予定があるんですか?」


俺がそう聞くと、先輩は少し考えるような仕草をしてから返事をくれた。


「私の家は基本的に両親が忙しいので、特にこれといった予定はないんですよ。強いて言えば、お祖母ちゃんのところで簡単なお手伝いがあるくらいです。」


あそこは神社といっても小さいお社があるだけで、神主がどうのとかご祈祷がどうのとかそういう場所ではない。だから夏祭りみたいな催しもないんだそうな。


夏祭りか…


「沙羅先輩、それなら俺と色々なことをしましょう。デートも、お祭りも行きましょう!」


「はい、とても楽しみです。もちろん夏休み中も、一成さんのお世話はしっかりさせて頂きますので。そうなりますと、ずっと一緒ですね…とても楽しい夏休みになりそうで嬉しいです。」


そう言って、とても嬉しそうに笑う沙羅先輩だった。


------------------------------------------


「お疲れ〜」

「お疲れ様です…またいきなり電話とか、何かありましたか?」

「? 別にないけど」


突然電話をかけてきたのは夕月夏海さん。


一成の恋人である薩川さんの親友とのことで、以前二人のデートを見守りに行った時に、同じく見守り(?)に来たところで出会った。


あれ以降、情報交換で連絡を取り合っている。

もっともそれ以外の理由の方が多いのだが…それは愚痴がメインだ。


「はぁ…なら何で」

「何よぉ、世間話くらいで電話するなってこと? 嬉しいくせに素直じゃないな」

「はいはい、嬉しくて涙が出ますよ」


夕月さんはかなり人当たりがいいらしく、こうして話しやすい雰囲気を常に纏っている。

実際にはまだ一度しか会ってないのだが、この気軽さに乗せられて俺も気軽に話せるのは楽だ。


「まぁいいや。それより聞いてよ、あの二人ときたら…」


どうやら今回も、あの二人に目の前でいちゃつかれて愚痴を言うのに連絡してきたらしい。

はぁ…これは長くなるかもなぁ


「ねぇ聞いてるの?」

「聞いてますよ。でもあの二人…特に薩川さんは、一成の為なら人目を気にしない感じだから、今後仲が深まれば更に凄くなりそうですね。」


今でも充分凄いが、これで正式な恋人になったら想像がつかない。


「あの二人…もう離れられないんじゃないですか?」

「かもねぇ。高梨くんとああなって初めてわかったけど、沙羅は好きな相手に一途すぎるくらい一途みたいだから、ゆくゆくは先も考えそうね。」


先…つまり恋人の先…高校生でそこまで考えるかなぁ…


「というか、いちゃつかれても気にならないように自分も彼氏作ったらどうですか? 夕月さんなら選り取り見取りだと思いますけど」


薩川さんのように大和撫子的な美人とは違うけど、夕月さんも少しボーイッシュな感じというか中性的な美人だと思う。


「え、そ、そう?」

「ええ、薩川さんとは違う系統で美人だと思いますけど」


リアクションが返ってこない。

珍しいな…


「橘くんの癖に私をからかったわね。今度会ったら覚えてなさいよ!」

「癖にって…そんな理不尽な」


相変わらずの人だな…

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る