第105話 誘うのは

いくつか選んでいる内に、マネキンが着ている水着に目に止まった。花柄のワンピースにパレオを巻いた清楚な水着だった。


…この水着、沙羅先輩に似合いそうだな…


「あの、沙羅先輩…この水着なんですが」


「はい、ではこちらの試着をしてみますね。」


思いきって勧めようとすると、沙羅先輩は皆まで言わせず当然とばかりに受け入れてくれた。

サイズの確認などもあるだろうし、少し離れた場所で待機しよう。


ちなみに夏海先輩は現在試着中だ。

ビキニにすると騒いでいたので、本人が候補を何着か選んでその中から決めてみた。

もちろん自信はない。


沙羅先輩が試着室に入ったのを確認して、今度は近くで待機すると、夏海先輩が出てきた。


「お待たせ〜。どうかな、似合う?」


う…

水着の女性をまじまじと見るなんてできる訳がないと今頃気付いたのだが、感想を言わなければならないのか…


夏海先輩はスタイリッシュな雰囲気なのでビキニがよく似合う。沙羅先輩とは系統が違うのだが、こんな美人に見せつけられるかのようにされると流石に照れるというか…


「いや、その、似合ってます…はい」


俺が照れ臭そうにしている姿を見て満足したらしい夏海先輩は


「よし、それじゃこれにしよう。けって〜い」


そう言って試着室に引っ込んで、さっさと元の服に着替えて出てきた。


「沙羅はまだ決まらない?」


「今着替えてますよ」


そんなことを言っていたら、カーテンが空いた。

中から恥ずかしそうにしながら、俺の選んだ水着を着た先輩が出てきた…


「………」


思わず惚けてしまったというか…


少し大人しめな水着なのだが、清楚な先輩によく似合う花柄のデザイン、黒髪と、水着のベースになっている白のコントラストが映えて…


綺麗だ………


「ふふ、畏まりました。」


満面の笑みでそう一言を残すと、沙羅先輩は試着室に戻ってしまった。

これは間違いなく俺の表情から読まれたのだと思う。

うう…これは恥ずかしい


「ふ〜ん、沙羅は言葉にできないくらい綺麗だったと」


そして夏海先輩にジト目で睨まれる嵌めになるのだった。


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「そういや高梨くんは誰を誘うの?」


夏海先輩が気になったようで、突然聞いてきた。


「あ〜実は悩んでるんですよ。速人か俺の中学時代からの親友か…」


実はまだ決まらない

うーん


「そうねぇ…そう言えばいつか会った高梨くんの友達とは、気まずい別れ方をしたままだったわね。」


…そう言えば、あのときは俺が勘違いでネガティブ全開だったから、雄二もあまりいい印象じゃなかったよな。

只でさえ学校が違うんだし、これはいい機会かもしれない。


「あー、そうですね、確かにあのときのままでは俺としても不本意です。でも大丈夫ですか? 雄二だと最初が気まずいかもしれませんよ?」


「一成さんの大切なお友達であれば、私もご挨拶させて頂きたいです。」


「横川くんなら学校や部活でも会えるからね。」


うーん、速人については夏海先輩は全く気付いてないみたいだなぁ。

だけどこれは雄二を誘う流れになってるし、俺としても雄二の印象が悪いままというのと嫌だからな。


「では雄二を誘ってみますね。」


速人にはまた他の機会でフォローするとして、今回は雄二を誘ってみよう。


「ふっふっふ…」


…?


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その日の夜


「マリンガーデンプール?」


まずは予定を聞いておこうと思い、雄二に連絡してみた。

夏海先輩はテニスの大会があるので、練習も含めて避けなければならない日も多いから上手く合えばいいんだけど


「沙羅先輩とその友達が来るから4人なんだけど、どうだ?」


「俺は大丈夫だ。合わせられるぞ。」


どうやら大丈夫らしい。

これであとは行くだけだな。


「それじゃ、集合時間とか場所は追って連絡するよ。」


「ああ、楽しみにしてるよ…お前の彼女にも挨拶しないとな。本当に手のかかるやつだけど宜しくってさ」


「はいはい。悪うございました」


実際、雄二には色々迷惑かけたり助けてもらったりしてたから、あながち否定できないところが辛い。


でも雄二と遊ぶのはかなりの久々だから、今回のプールは二重の意味で楽しみだ。

夏海先輩は人当たりがいいから、雄二ともすぐに仲良くなれるだろう。

沙羅先輩はさすがに厳しいかな…

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