第338話 結果発表
side 楠原 豊
私は今、夢を見ているのだろうか?
本当に、これは現実なのか?
「そ、そうです!! 言うに事欠いて婚約だ結婚だなどと…意味も分からず、おままごとで騒いでいる子供のようですね!!」
玲奈に何があったのか、何があいつをあそこまで駆り立てるのか、私には分からない。理解できない。そもそもの話、玲奈があれ程まで攻撃的になっている様子は初めて見る。だが、それならばお嬢様が、玲奈に何かしたのかと聞かれてしまえば…やはりそれも想像できない。
嘗てパーティーの席で目にしたお嬢様の姿、そして薩川専務の話を鑑みても、お嬢様が率先して玲奈に接触するとは到底思えないからだ。
となれば、やはり玲奈側に何か問題があったとしか…いや、もはや問題はそこではないのだ。
今、最も考えなければいけないことは、玲奈がお嬢様に対し、明確な敵意を持って暴言を繰り返していること。そして薩川専務が、そんな玲奈に対し不快感を見せているという事実。
これが私に…いや、玲奈の父である我が社の社長、引いては我が社そのものにとって、非常に由々しき事態であると言える。
率直に言って洒落にならない。
「そしてそれが全部落ち着いたら、その時点で俺は沙羅さんと結婚する!! これは嘘でも冗談でもない!! 俺達は本気だ!!」
そして、先程からステージ上で行われているのは、あの男による演説のような何か。如何な高校生とはいえまだまだ子供であり、そんな男が結婚だ何だと騒ぎ立てたところで、本来であれば真に受ける必要など微塵もない。
…筈なんだが、今回に限って言えば…
他ならぬ"あの"お嬢様との、目を疑う程の親密ぶり。しかも同棲中という衝撃の事実に加え、プロポーズに婚約宣言。事もあろうにステージ上でキスまで交わし…それも、お嬢様からキスをするなど、もはや「信じられない」という言葉で済むような話ではない。
更に極めつけは奥様…薩川真由美さんまでもが、二人の婚約を歴として認めてしまった。もうこうなってくれば、話の"重み"そのものが全くもって変わってくる。
「ふぅ…この話は、まだ大々的に公表するつもりはなかったんだが…本人達にそれを伝えておかなかったのは私のミスか。まぁ、二人がここまで思いきったことをするとは思いもしなかった訳だから、これはこれで仕方ないと言えるのかもね」
「さ、薩川…専務、この話は…」
「…事実だよ。でもこれ以上のことについては、先程も話をした通り、年末パーティーでの発表を待ってくれ。まだ公表するつもりはない」
「か、畏まりました。ですが、それはつまり…このお話については、まだ先が…」
「そうだね。あの子達の婚約は、話の半分…と言ったところかな?」
「は、半分!?」
薩川専務のお嬢様が婚約したという事実だけでも、果たしてどれ程の騒動になるのか想像もつかないというのに!!
まだ語られていない情報が、少なくとも半分以上残っているだと!?
この話は会社…いや、佐波グループという超巨大企業に於いて、上から下まで駆け巡る大騒動に発展する可能性がある!!
特に、お嬢様との接近を切に画策していた勢力からしてみれば、これはもう死活問題と言ってもいい。
しかもそのお相手が、まさか名前すら聞いたこともない「誰か」となれば…こんな話、そう簡単に受け入れられるとは到底思えな…
まさか…
パーティーで公表される話というのは…
その辺りにまで絡む程の内容だとでも言うのか!?
「とにかく、これ以上の詳細については、年末のパーティーまで待ってくれ。それと、今日の話をどうするのかは君達の判断に任せる。今この場に、他の会社関係者がいないとも限らないし…人の口に戸は立てられないと言うからね」
「か、畏まりました。この件については、内々で留めておくことと致します」
「そうかい。それじゃあ済まないが、私はここで失礼させて貰うよ」
「えっ? ま、まだミスコンは終わっておりませんが…」
「最後まで見たいのは山々だけど、真由美をあのまま自由にさせておくのは色々とマズそうだからね。仕方ないから、さっさと連れて帰ることにするよ」
「さ、左様でしたか…」
確かに、奥様のあれは…そもそも何故あそこに居るのか甚だ謎ではあるが、奥様にあんな一面があるとは…そういう意味では、お嬢様も同じと言えるのかもしれない。
やはり親子ということか?
「うっきゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!! いい加減にしろやぁぁぁぁぁぁぁ、この超絶先走りバカップルがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「これはマズいな。全く、真由美は一体何を考えて…それじゃあ、私は失礼するよ」
「か、畏まりました!! お気をつけて」
「ありがとう。あぁ、それと」
「は、はい?」
「…彼女の件は、最終的に君の方で対処するように。少し気になることもあるし、場合によっては後日報告を求めるから、そのつもりで」
「は、はい…大変、申し訳ございませんでした。可能であれば、お嬢様にも直にお詫びを…」
「それは必要ない。あの子は、一成くん以外の男性に近寄られることを極端に嫌うからね。逆効果だよ」
「はい…」
「それじゃあ、失礼するよ」
最後はニコリともせず、愛想笑いすら見せないまま、鋭い視線だけを残して立ち去って行く薩川専務。
そんな専務に、私は玲奈の件で何一つフォローすることが出来ず、悪印象を与えたままで…失点どころかマイナス評価を免れることすら叶わなかった。
しかもそればかりか、あの様子では後日、何らかの報告を求められる可能性が高い。果たして玲奈の何が気になったのか分からないが、そうであれば、私としても詳細を問い質すことに本腰を入れる他はない。これは今後の対応次第で、更にマズいことになりかねない重大事案だ。
そして玲奈の方は、お嬢様との関係は間違いなく絶望的…恐らく奥様からの印象も最悪だろう。私も挨拶をするどころか、間接的に評価を下げることになったのはほぼ間違いない。実に最悪の結果だ…
後はあの男、高梨と言ったか?
あの男のことを、わざわざ「企業パーティー」という場で発表するというのだから、単に婚約という事実だけを報告するとは考え難い。そして薩川専務の「半分」発言…恐らくあの男個人に関することでも、何らかの発表がされるのだろう。
果たしてそれが何なのか、今はまだ想像の域を出ないが…専務の意味深な様子を見るに、かなり嫌な…いや、まだそう結論付けるのは早いか。
とにかく、実際にパーティーの席で顔を合わせる機会があるかどうかは分からないが、何らかのフォローを前もって考えておく必要はある。それが最終的に、お嬢様や奥様のご機嫌に繋がる可能性があることは、ステージ上のやり取りで何となく読めた。
後は玲奈とお嬢様の間に存在しているトラブルが、決定的なものでないことを祈るだけ…場合によっては社長に報告する必要もあるだろう。叱責を覚悟の上で…
本当に…
今日は、最悪の一日だ…
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今日は仕事で来ないと思っていた政臣さんが、何故ここにいる…って、今更そんなことを考えても仕方ない!!
それよりも、いつからこの会場に居たのか、どこまで見ていたのか、そこが一番重要な部分だ!!
「ま、政臣さん…あの、いつから…?」
「ん? そうだね、最終審査の料理対決から…かな?」
「ええええっ!? そ、そんな前から!?」
「すまないね、本当はこんな風に顔を出すつもりは無かったんだが…今日のことについては、また後日にでも改めて」
「は、はい…」
後日改めて…それはつまり、今日のことを見なかったことにしてくれたり、そのままスルーしてくれたり…なんてことにはならないってことですかそうですか。
まぁ…自分でも色々とやらかした自覚はあるし、いくら何でも無理ですよね、分かります。
でも、その話をするのがちょっと怖い…
「真由美、お前には色々と問い質したいが、それは家に帰ってからだ」
「はぁ~い。分かってます」
「皆さん、お騒がせして申し訳ありませんでした。真由美、帰るぞ?」
「えっ、でもまだミスコンが終わってな…わ、分かったから、そんな怖い顔をしないで」
「帰ったら事情を説明して貰うからな?」
「はぁ~い…残念」
流石の真由美さんも、今の政臣さんに逆らうつもりは無いらしく…周囲にペコペコとお辞儀をしてから、最後に客席へ向かい大きく手を振って、素直にステージ中央の階段を降り始める。その途中でそっと振り返り、俺にウィンクをすることも忘れず。本当にブレないな、あの人。
「一成くん、沙羅、本当に済まなかったね。真由美には後でしっかりとお説教をしておくから、今回は許してやって欲しい」
「あ、いや、それは別に!? 真由美さんも、きっと俺達の為に…」
「んふふ、一成くん、大好き♪」
「お父さん、たっぷりとお説教をしてあげて下さい」
「…沙羅ちゃん、酷いわぁ」
「あぁ、分かった。一成くん、重ねて済まないが、この後のことは宜しく頼むよ? それと…今後とも、沙羅のことを宜しく」
「…はい。任せて下さい」
「うん」
それは俺にとっての絶対であり、言われるまでもないこと。だから安心して欲しいという意味合いも込めて、一際堂々とした返事を見せておく。政臣さんはそれを聞き、満足そうに大きく頷くと…爽やかな微笑みを残し、颯爽と立ち去って行く。
そんな政臣さんの後ろ姿を追い掛けるように…真由美さんは、もう一度だけこちらに振り返り、いつも通りの柔らかい微笑みを浮かべ、小さく手を振ってから立ち去って行った。
「…やっと大人しくなりましたね」
「…そうですね」
「一成さん、どうなさったのですか?」
「え、何がですか?」
「いえ、何か嬉しいことでもあったようなお顔を…」
「…大したことじゃないんです。ただ…」
「ただ?」
ただ…政臣さんから「頼む」と言われたこと…
俺のプロポーズを見た上で、沙羅さんを「頼む」と改めて表明してくれたことの意味。それはこれまでと少し違い、より深い意味合いを感じるというか、言葉の「重み」を感じたというか…上手く言えないが、それが妙に嬉しく思えて。
それに、真由美さんがやらかした後始末(不始末?)を、俺に頼ってくれたことも密かに嬉しい。少なくとも、そのくらいは頼りにして貰えたということだから。
「ふふ…それでは一成さん、父の依頼通り、この場をそろそろ収めましょうか?」
「ええ。そろそろ"締め"ましょうかね」
「はい」
色々なことが混ざりすぎてグダグタになってしまったから、俺の婚約宣言がしっかりと狙い通りに伝わったのかどうか分からない。
でもダメならダメで、最後の一押しをする…って、あれ?
「あ~あ…やっぱこうなっちゃうのかぁ…」
「えーと…これは?」
俺達の目の前には、ゾロゾロと列を為し、この場を去ろうとする…もしくは既に去っていく多数の後ろ姿。
それはほぼ全員が男で、肩を落としていたり、項垂れていたり、もしくはお互いを励ますように肩を抱き合っていたり…または、何かから逃げ出すように走りながら、何故か次々と会場から離れていく。
まだ投票が終わってないのに…
「これは…じゃないよ!! あんなに感動的なプロポーズを見せつけた上に、二人で散々イチャついてからに…しかもあんたら同棲中なんでしょ!? そんな状況で子供の話なんかしたら、リアルすぎて薩川さんに惚れてた人達が絶望するに決まってるでしょうが!!! つか、実はもう夫婦になんじゃないの!? 結婚済みなんでしょ!?」
「いや、それはまだ、流石に…」
「ええ、私達はまだ婚約者です。結婚はもう少し先の話ですよ?」
「あーあー、そーですか、そーですかー」
こうして話をしている間にも、観客が…ほぼ男ばかり…次々と会場を後にしていく。
もうここから見た限り、客席に残っている人数は半分程になっていて…こんなに減ってしまったら、投票もへったくれもないような…
どうなるんだろう、これ?
………………
…………
…
「えーと…それでは、投票を始めたいと思いま~す…」
テンションただ下がり中のみなみんから宣言が為され、ステージ横で待機していたスタッフさん達が一斉に動き始める。その行き先は、もちろん客席…なんだが、既に空席ばかりが目立ち、俺がステージから降りる際に確認した時点では、本当に半数以下になっていた。
つまり、どれ程の人数が、ミスコンではなく沙羅さん「のみ」目当てだったのか…それをまざまざと見せつけられてしまった格好だ。
「いやぁ…今日は本当に感動しちゃったねぇ」
「ホントホント、まさか同級生がプロポーズされるシーンを見れるなんて!!」
「指輪を嵌めるところなんか、映画みたいだったよ!!」
「しかもステージ上で…流石は"あの"薩川さんが選んだ男子だよね!!」
「お父さんが宜しくって言ったよね!? もう結婚まで一直線じゃん!!」
「高梨くん、今度カラオケ行かない!? もちろん夫婦一緒に!!」
「ずっる! それ色々と話を聞きたいだけでしょ!? 私も参加するわよ!!」
「ね、ね、どうかな、高梨くん!?」
「え、えーと…すみません、それは沙羅さんと相談してから…」
そして、俺達が陣取っていた周囲の状況もガラリと変わり…今、左右でそれぞれ話をしている集団は、元々後ろの方にいた女性陣。前列が一気に空いてしまったので、それを機に前寄りへ詰めてきた人達だ。
勿論それだけであれば、特に問題はないんだけど…何と言うか、かなり興奮気味らしい。
「絶対に聞いてよ!!」
「普通に誘っても、薩川さんは来てくれないし」
「前に断られたことがあるからねぇ…でも高梨くんが来てくれるなら、薩川さんだって…」
沙羅さんがこうして、同性からコミュニケーションを求められていること自体は歓迎すべきことだと思う。特に、今日は沙羅さんが色々と本音を出した直後ということもあり、それでもこうして好意的に接しようとしてくれるのは俺としても嬉しい。
だだ、沙羅さん本人がどう思うか…だ。
「何だかんだあったけど、全部が上手く纏まりそうだね」
「一成のプロポーズも、馬鹿共に現実を見せる目的も全て達成した。結果的には大成功だったと言える」
「そうだね。一成は男を見せたと思うよ」
「だな。あの場であそこまでやれるとは、本当に大したもんだ」
「いや…それを言うなら、俺は二人から勇気を貰ったんだからな?」
「それは何の話だ?」
「これは全部、一成の強さが生んだ結果だよ? 本当に…ね」
「速人?」
どうしたんだろう…速人の様子が少しおかしいような?
照れ隠しをしている訳でも無さそうだが、俺を見ているようで、他を考えているような…何かを気にしている? そんな感じが…
「はい、投票用紙を回収しま~す」
いつの間に来ていたのか、投票箱を両手で抱えたスタッフさんが、直ぐ隣まで来ていた。現在は隣のグループ…先程まで黄色い声で騒いでいた女性陣から、投票用紙を投函して貰っている真っ最中で…何故か女性陣は、投函する度に俺の方をチラチラとニヤケ顔で眺めてくる。
その意味深なリアクションは一体?
「投票用紙を回収しま~す」
続けて俺達の目の前へやってきたスタッフさんの投票箱に、先ずは雄二が用紙を投函する。そのまま速人、花子さんと一人ずつ順番に入れていき、最後に俺が入れたところで…
「高梨くんは、やっぱ奥さんに入れたよね?」
「お、奥さんって…」
「いやいや、今更照れなくても!! あ、野暮なことを聞きました。どうぞ、お幸せに~」
…と、まさかのスタッフさんにまで茶化される始末。
こんな雰囲気のままで、休み明けに学校が始まったらどうなってしまうのか…今までとは違う意味で、不安しかないぞ、これ。
「はい、これで投票用紙が全て集まりました。"誰かさん達"のお陰で、回収時間も集計時間もかなり短縮出来そうなので…暫くそのままお待ち下さ~い」
ミスコンが台無しになってしまったせいで、相変わらずみなみんのテンションが低い。でも言わせて貰えば、ここまでの事態は完全に想定外であり…そもそも俺は、沙羅さんが優勝した後に事を起こすつもりだった。だから申し訳ないと思う気持ちもあるが、それでも不可抗力だと言いたい。決して意図した結果では無いのですよ。
「むふふふ、奥さんだってぇ!!」
「旦那さんとの馴れ初めを聞きたいって言ったら、薩川さんも喜んで話をしてくれるかな!?」
「わ、私は、二人の私生活に興味津々…」
「年頃の男女が一緒に暮らしてて、何も起きない訳ないじゃん!!」
「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!! や、やっぱりそうなのかな!? 薩川さんも、女にに…!?」
「そ、それ以上はマズいよ!! 乙女の口からこれ以上はダメ!!!!」
そして周囲の女性陣も、相変わらず騒がしい。
というか、今、明らかに一人だけ聞き覚えのある声が混じってなかったか!?
「ま…あそこまで見せちゃった以上、こうなるのは仕方ないね。休み明けから色々と騒がしくなりそうだ…あぁ、悠里は後でシメておくから」
「これはもう、飽きるまで待つしかない。夏海先輩はクラスで嫁のフォローと、ファンクラブに協力要請を宜しく。あとイケメンも。一成は他にもトラブルの可能性があるから、嫁が一緒に居ないときは私が付く」
「りょーかい」
「わかったよ。一成のことは頼むね」
「言われるまでもない」
「あの、花子さん?」
花子さんは、まるで最初から予定していたようにテキパキと指示を飛ばし、あっという間に対応策協議が終わってしまったらしい…本人(俺)抜きで。
「こういうことは、何かが起きると想定して大袈裟に考えておいた方がいい。それで何もなければ、後は笑い話にするだけ」
「…わかった。ありがとう」
「弟の為に頑張るのは、姉の役目」
そんなことを言いつつ、少しだけ照れ臭そうに笑う花子さん。
相変わらず言葉少な目で、要所だけを口にするぶっきら棒なスタイルは変わらないけど…優しさは確かに伝わってくるから。
「はい、お待たせしました~。"もう"集計が終わったようなので、早速、結果発表に移らせて頂きます!! それでは出場者の皆さん、こちらへどうぞ~」
みなみんの合図で、ステージ横から出場者が一人ずつ、エントリーナンバー順に登場してくる。真由美さんが辞退(?)してしまったので、ラストはもちろん沙羅さんだ。
ちなみにタカピー女は、もう愛想笑いすら見せなくなっており…今も居心地悪そうに、客席へチラチラと視線を向けながら、決して真正面を向こうとしない。あれだけ自信満々だった、最初の登場シーンとは対比が凄いな。
「えー、出場者の皆さん、先ずはお疲れ様でした!! 最後こそ何が何だかよく分からなくなってしまいましたが、それでも各審査は熱闘であったと思います!! いよいよこれから結果発表となりますが、実は私も結果を知りません!! イレギュラーなことが多過ぎて、最終的にどうなったのか…ある意味で楽しみです!! それでは続けまして、実行委員会・会長から一言…の予定でしたが、諸般の事情により会長はコメント出来る状況にないとのことです。よって、割愛しまーす!」
会長が諸般の事情?
俺がステージを降りる直前に見た会長は、スカスカになった客席を呆然と眺め、どこか哀愁漂う背中であったことだけは覚えているが…コメントも出来ないくらいショックだったのか。
でも言わせて貰えば、沙羅さんを強引に引っ張り出したことのツケを払って貰ったに過ぎない。
「あの、ところで薩川先輩と真由美さんの勝負って、どうなったんですかね?」
「そ、そう言われてみれば…」
「一成、真由美さんから何か聞いたか?」
「いや、何も聞いてないけど…でも…」
「真由美さんの様子を見るに、恐らく沙羅が勝ったのでしょう」
「ええ。俺もそう思います」
ハッキリと答えを聞いた訳じゃないが、真由美さんは、俺と沙羅さんのやり取りに乗っかって楽しんでいたから…もし沙羅さんが不合格だったのであれば、先に何かしらの反応を見せた筈。
でも何も言わなかったということは、つまり…
「それでは結果発表です!!! 発表は上位三人のみとなりますので、ご了承下さい!! 先ずは…第三位!!!!」
デデデデデデ…
スピーカーから雰囲気を煽る"如何にも"なSEが流れだし、ステージ上のスクリーンにはデカデカと「最終結果発表」の文字。スポットライトが縦横無尽に動き回り、名前がコールされる瞬間を、観客が固唾を飲んで見守る中…ステージ袖からスタッフさんが一人、みなみんに小走りで近寄り、何かをそっと手渡す。
ジャン!!!
歯切れよくSEが止まり、みなみんが渡された何か…メモ用紙のようなものを開き…
「第三位!! エントリーNo.4!!! 佐倉…」
三位にコールにされたのは、今回のミスコン出場者で唯一の三年生。俺の記憶している限り、全ての審査でそれなりの高評価を貰っていた人なので、ある意味順当とも言える結果ではある。でも真由美さんの辞退と、タカピー女が最下位(多分)になったこと考えれば…準優勝は、あの人かもくらいには思っていたんだが?
「あれ? あの人が三位?」
「これはちょっと意外でしたね。でもそうなると、二位は…」
「うーん、まさかあの女…ってことは無いよねぇ、流石に」
やはり皆も俺と同じ予想をしていたようで、こうなるとますますどうなるのか分からなくなってきた。仮にタカピー女が準優勝だったとしても問題ない話ではあるが、さっき「応援してくれる人がいるのか?」などと攻めてしまった手前…あいつがもし準優勝したら、ちょっと気まずいかもしれない。
「さぁさぁ、それじゃ続けて第二位…準優勝の発表です!!!!」
デデデデデデ…
再び雰囲気を煽るSEが流れ出し、先程と同じような演出が始まる。
既に目的を達成した俺としては、沙羅さんの順位そのものの重要性は薄れてしまったが…でもここまで頑張ったのだから、やっぱり優勝して欲しいと願うのは当然のこと。
とは言え、沙羅さんの優勝は間違いないだろうから、特別不安になる必要は何もないけど…
「第二位!!! エントリーナンバー…あれ? ナンバーは? 高梨かず……はぁ!? 高梨一成!!??」
「…はぁ!?」
「…え!?」
「…な、何だそれ!?」
親友達が一様に唖然とした表情で俺を見つめ、対して俺は、自分の聞き間違いを信じてモニターの表示を確認する。
でもそこに映し出された名前は、無情にも「高梨一成」と、しっかりくっきりハッキリと。
えーと…
コレは何ですの?
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ミスコンもフィナーレ間近となり、予定では次回で終了するつもりでしたが…もう一回くらい増えるかもしれません。書いてみないと分かりませんが・・・
次回は優勝者発表と、第二回質問コーナーになります。
それではまた次回
P.S. 気が付けば、お星様が4000の大台を超えていました。特に最近はスランプ続きであったり落ち込むこともあったり、本業でもトラブルを抱え、母親含め健康上のこともあったりと色々ありましたが・・・こうして応援して頂けているからこそ、何とか続けることが出来ているんだと思います。更新ペースはかなり落ちてしまいましたが、今後もゆっくりお付き合い頂けると嬉しいです。
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