第45話 専用お弁当箱

「おはようございます。」

「おはよ〜」

「おはようございます、沙羅先輩、夏海先輩」


いつもの朝の光景。

でも、今日はいつも以上に楽しみなことがある訳で。


「聞いたよ〜。昨日はお弁当箱以外にもプレゼントしたんだってね〜?」


「ええ、どうしても沙羅先輩の為に渡したかったんで」


「そっか。今度見せてもらうのが楽しみだ」


「普段も使用させて頂くのが、少々勿体ないという気持ちもあるのですが…」


まぁ沙羅先輩ならそんな風に考えてしまうだろうな。念を押しておこう


「沙羅先輩、勿体ないと思って貰えるのは嬉しいですけど、俺は普段でも使って欲しいですよ?」


「…はい、大切に使わせて頂きますね。」


「……朝からまぁ」


「?夏海先輩どうかしましたか?」


「何でもないよ、さて、行こうか」


学校へ向かういつもの道のり

最近は周りも馴れたのか、こっちを見て何か言ってるような素振りがなかったんだが、今日は少し何か言われているようだ。


「それではお昼休みに」

「また後でね」

「はい、また後で」


ガラガラガラ


教室に入ると、これも最近の光景たが下心のあるやつらが近寄ってくる。

まぁ全員かどうかはわからないけど。


「おーす高梨。」

「おいおいおい高梨、お前昨日、薩川先輩とショッピングモールに居ただろ!」

「俺もツレから聞いたぜ、二人でいるの見かけたって」


しまった、浮かれててそういう面を考えてなかったな…ちょっと近すぎたか。

見つかっても不思議はないし、今後はもう少し考えよう。


「…友達と遊びに行ったらおかしいか?」


「いや、全然おかしくないぜ。友達なら当然だよな。今度行くときは俺もさ」

「高梨くん、今度は俺らとも遊びに行こうぜ。他にも誘ってくれていいぞ、もちろん女性でも…」


「……機会があればな〜」


もちろんそんな機会は永遠に来ないが。


しかしこいつら、この前まで俺を無視したりバカにしたりしてて、よくこんな手のひら返しできるな。

恥も外聞もないというか…まぁバカなだけか。


「高梨くん、おはよう。」

「あんな下心見え見えの男達なんか相手にしない方がいいよ。」


「おはよう。まぁそうだよなぁ」


うん、この女子達もよくわからないんだよな。

何で急に…まぁ何か要求してこないから、あいつらよりは遥かにマシだが。


予鈴が鳴り、全員が席に戻ると先生がやってきた。


「よーし、HR始めるぞ〜」


さて、今日はご褒美が待ってるんだから頑張ろうぜ俺…


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「高梨さん、こんにちは」

「お疲れ高梨くん」

「お疲れ様です、お二人とも」


花壇に着くと、既にビニールシートが敷かれていて、それぞれの荷物も広げられており準備万端だった。


「あれ、早いですね?そんなに遅く来たつもりはないんですが…」


「沙羅が張り切っててねぇ…早いのなんの」


「私はいつもと変わりませんよ?」


「えぇ〜だって四時限目の先生の雑談が長くなりそうで、チャイム鳴る直前なんか早く終われと言わんばかりに先生を…」


「夏海?戯れ言を吐き出す口は迷惑なので、この後の家庭科で縫い付けて差し上げますね?」


うおう、沙羅先輩がスゲー笑顔だ。

目のハイライトが消えてるけど…


「ナンデモアリマセン」


「さぁ、高梨さんも座って下さいね。」


「り、了解です。」


俺は何故か正座で座ってしまった


「はい、お待たせ致しました。本日のお弁当です。」


そう言って、先程とは正反対の女神様スマイルで俺に可愛い弁当箱を渡してきた。


「ありがとうございます!」


「ほぉ〜それが高梨くんの新しいお弁当箱か。可愛いねぇ…とっても(笑)」


「はい、高梨さん専用なので、一番可愛いお弁当箱を選びました!」


夏海先輩はからかうつもりで言ったんだろうが、甘い…沙羅先輩はそのまま受け取ったようだ。


この純真さを少しは学んだ方がいいですよ?夏海先輩


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…と思っただろうね、高梨くんは。


甘い…他での沙羅を知らないから。

あの子があんな風に素直で好意的に受け取れるのは私か高梨くんだけよ…


もしこれがクラスメイトで同じ事を言ったら


「今のはどういう意味ですか?早く答えなさい…返答次第ではこちらも黙っていませんよ?」


くらいは言いそうね。

高梨くんに対して言われたら、もっと酷いこと言い返しそうだけど。


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「では頂きましょうか」


「「「頂きます」」」


可愛い蓋を開けると……久し振りのハンバーグだ!!


「ふふ…そんな嬉しそうなお顔を見せて頂けると、作った甲斐がありますね」


「先輩のハンバーグは俺の中で最上級ですから。」


「何?高梨くんはハンバーグが好きなの?」


そうか、前回は沙羅先輩と二人だったから、夏海先輩は俺のハンバーグ好きを初めて聞くのか。


「ええ、俺の一番の好物です。その中でも最強なのが沙羅先輩のハンバーグです」


「へぇ〜…と言うことは、もう高梨くんは沙羅の作るご飯じゃないと最上級の味を楽しむことはできないってことだよね?………既に胃袋は掴み終わってるのね…」


最近、夏海先輩も雄二も、最後に何かボソつと何か呟くんだよなぁ

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