第459話 信心深く……

 ……朝です。

 と言う訳で朝から晩御飯の準備をしていきましょう。

 まぁ、とか言ってもやることは大変じゃないデスヨ?

 ちょっと夜まで煮込み続けるだけなんで。


「新しい解呪のやり方も試しときたいし、やること多いな」


 最近ね。

 休みの日でもやりたい事が多くて楽しいんだ。

 人間、何かに打ち込んでると人生のクオリティ上がるよね。

 例えそれが、自分以外から見ると無価値なものだったとしても。

 ……異世界食材をどう調理しようだとか、解呪の方法を試すとか、正真正銘無価値なものな俺は一旦置いといて、ね?


「んーと、買い出しと……あー。デザートも調達してこなくちゃ」


 ちなみに最近の悩みの一つはこれ。

 四人に振る舞うデザート、今までそんなに意識してデザートとか食べてこなかったから、俺の頭の中のレパートリーはもう既に尽きているんよな。

 と言う訳で適当にドライブしながら良さそうなお店を探すのも追加しよう。

 まぁまずは、晩御飯の準備ですわよ。


「ご馳走さまでした」


 朝ご飯は久しぶりに異世界食材に頼らないトーストにジャム。

 そこにコーヒーを加えてのモーニング。

 ゆで卵も付けたかったんだけど、昨日のユッケでこっちの世界の卵を使い切っちゃったからね。

 流石にリボーンフィンチの卵一個を朝からはちょっと……。

 なんだったら、アレ一個で食事一食分とかになるし。


「ゴー君にご飯あげて、買い出し行って来よ」


 と言う訳で買い出しに出陣!



 ただいま! という事でね。

 早速取り掛かりますわよ。

 まずはフライパンを熱し、バターを落としまして。

 玉ねぎを刻んであめ色玉ねぎからの玉ねぎペーストになるまで炒めます。

 作ろうとしてる料理がシンプルなだけに、こういう工程を疎かにすると味に直結するからね。

 丁寧な仕事を心掛けるべし。


「うし、出来た」


 玉ねぎペーストが出来たら一旦置き、バハムート肉の解呪を試みる。

 買って来た清酒の一升瓶を前に二礼二拍手一礼。

 日本におわす八百万の神々たちよ、あなた方の力を持って異世界の食材を祓い給え清め給え。

 っと。

 供えた内の一本を頂き、開けまして。

 キッチンペーパーに染み込ませたら、バハムート肉の表面をなぞる。

 ……すると、


「うわっ……すっげ……」


 キッチンペーパーの肉に触れた部分が濃い紫色に。

 全く色の着色元が不明なのが不気味さ極まる。

 まぁ、呪いなんだけども。


(神様、ちなみに酒に浸すだけでも解呪は可能です?)

(可能じゃぞ。そのペーパーで包んだ上から酒を振りかけるとよい。塩も忘れず振れば完了じゃ)


 じゃあこっちの方がだいぶ楽だな。

 時間跳躍必須の塩釜焼きなんてなかったんや!


(しかしのぅ……)

(?)

(ここまで力のある神々たちがおるのに、なぜこの国の人間は無宗教なのじゃ?)


 あー……。

 こればっかりはしょうがないと思う。

 実際、海外の人も疑問に思うって聞くしね。

 日本……生活の一部に宗教が浸透し過ぎてて、俺らの当たり前が海外の人から見ると宗教関係の行動なんよな。

 それこそ、食前の言葉である『いただきます』なんてのが代表。

 俺らとしたら当たり前だけど、宗教によっては食前は神に感謝するものなわけで。

 無宗教だけど無意識下で神に対する信仰とかはあるよねって言う……。


(不思議な国なんじゃな)


 それはもうおっしゃられる通りで。

 世界的にも特異点のソレなので……。


「……言われた通りに解呪するか」


 切ったバハムート肉をキッチンペーパーで巻き、バットに乗せて清酒をふりかけ。

 既にキッチンペーパーに紫色が滲むのを横目で見つつ、無駄に高い場所から炒り塩を振り振り。

 あとは時間置くだけっと。


(……ゴーレムってお酒飲むんですか?)

(? 飲まん事は無いと思うぞい)


 じゃあ、解呪後はゴー君にあげるか。

 流石に呪いが溶け込んだ酒なんてガブロさん飲まないだろうし。

 ……飲まないよな? 飲まないよね?


「じゃあ、こっちを再開っと」


 牛赤身肉を鍋に入れ、バターで表面を焼きまして。

 そこに投入したるは赤ワイン! 銘柄とかよく知らんけど、姉貴が辛口が合うとか言ってたから辛口のフルボディのワインを買って来ました。

 それを一本マルっと投入。

 あとは火にかけ出てくるアクを取り、玉ねぎペーストを入れ、コンソメで味を調えてバターを追加で入れたら煮詰めるだけ……。

 な訳も無く。

 レンジで加熱調理したバハムート肉を入れて煮詰めていきますわぞ~。

 今作ってるのはビーフシチュー。

 これを煮詰めるだけでビーフシチューになるって動画投稿者が言ってた。

 今回はそれを検証したいと思います。


「もう匂いだけで美味しそうなんだけどね……」


 ちなみに焦げ付いてもその焦げも美味しいとの事で、あまり気にしなくていいんだって。

 時間だけが掛かるって感じだね。

 ……その間に、


「パテでも作るか」


 お昼ご飯を用意しましょ。

 解呪後加熱済みのバハムート肉、スライスした玉ねぎ、同じくスライスしたニンニクをオリーブオイルで炒め、炒めたらそこに赤ワイン。

 更に水を入れ、コンソメで味を付けまして。

 水分がなくなるまで煮詰めたら、フードプロセッサーへ。

 ……今日の俺って煮詰めてばっかだな……。


「えーっと、生クリーム、バターっと」


 バターもめっちゃ使ってるな。

 あ、オリーブもある。入れちゃお。

 塩コショウを振り、スイッチオン!

 撹拌したら、ちょっと味見。


「あー! 美味い! ……んでももうちょい生クリーム」


 サッと溶けるようなパテにしたくて、もう少し生クリームを追加。

 ……正直、このパテ美味い。

 なんか、他の材料で作らなくなるくらいには美味い。

 グヘへ、お昼が楽しみだぜ。


「うし、後は冷やして完成っと」


 撹拌を終えたら容器に移し、冷やして固めて完成。

 冷えるまではビーフシチューの御守と、洗い物を済ませちゃいましょうねぇ。

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