第254話 百発百二十中

 んふふ~。

 最近お野菜高いね~。

 でも~? 俺の家の冷蔵庫に~? 美味しいマンドラゴラがい~っぱいあるんだなぁ~。

 ……野菜じゃないんですよ。マンドラゴラなんですよ……。

 美味しいからいいけど。

 てなわけで今日も今日とて晩御飯の準備するか……。

 で、なんだけどもさ。

 昨日の反応から見るに、やっぱり肉とか魚とかあった方が嬉しい的な反応だったじゃん?

 という事で、それを最大限加味してメニューを考えましたとも。

 野菜以外に使う材料は、豚肉とシーフードミックス。

 あとは冷凍のエビも。シーフードミックスにも入ってるけどね、エビ。

 どうしても追加で欲しかったから買っちゃった。

 エビダトオモワレルモノが本当は欲しかったのは言うまでもない。

 どこかに売ってないかな……エビダトオモワレルモノ。

 無理か。


「うし。じゃあ材料だけ切って、生地を作っていきますか」


 本日のメニューはお好み焼き。

 野菜がたっぷり使えるから、冷蔵庫に残った野菜の消化の為に良く作ってたよ。

 大体何入れても美味しいからね。


「まずは~キャベツ~」


 というわけで冷蔵庫を開けまして。

 各マンドラゴラの頭に生えた、キャベツっぽい見た目の部分をむしり取っていく。

 にしてもマンドラゴラって不思議な生態してるわ。

 身体というか、顔とかはそれぞれの野菜なんだけどさ。

 人間でいう髪の部分だけは白菜とキャベツで形成されてるんだよな。

 おかげで葉物に困らなくて助かる。

 ……欲を言えばほうれん草とか、小松菜、春菊辺りがあってくれるとありがたかったんだけれども。

 ……ん? 前言撤回。このマンドラゴラだけ頭に白菜やキャベツじゃなくて――もやし生えてる!?

 まさか白髪って事!? 面白いんだけど!!

 てことはこのマンドラゴラ個体、おじいちゃんなのか。

 ……見た目は長芋だな。

 使うか。お好み焼きに。

 おじいちゃんごめんね、髪むしるね。

 ブチッブチッ。

 よし、キャベツともやしと長芋確保。

 あとは……人参と、ネギも入れよう。


「材料はオッケーと」


 四人が来た時には焼くだけにしときたいし、材料を切っていくわぞ~。

 キャベツと人参は千切りに。特にキャベツはどれだけ多くてもいい。

 長芋は皮だけ剥いて、生地と混ぜる時にすりおろしましょ。

 ネギはみじん切りにして、と。もやしはそのままでいいでしょ。

 てなわけで野菜の準備も完了したのでお次は粉。

 日本で一番有名な、お面が目印のお好み焼き粉。

 まずはこれに書いてある分量通りに生地を作っていく、と。

 お水、卵、粉。そこに先程の長芋をすりおろして投入したら、まずはさっくりと混ぜ合わせまして。

 そこに刻んだ各野菜たちを投入。

 こちらも混ぜ過ぎないよう注意しながら全体と混ぜまして。

 これにて生地も完成っと。

 いやぁ、企業の出してる粉使うと楽だね。

 これで美味しく出来ちゃうんだからホント企業様様ですわ。



「……怒られたな」

「怒られましたわね」

「ダンジョンの難易度が分かるまで無暗に潜るなとは確かに正論だが……」

「無理だと思ったら引き返すっちゅーに」


 アエロスに餌付けをし、満を持して冒険者ギルドへ。

 『夢幻泡影』の顔を見つけた瞬間に、明らかに顔を引きつらせたオズワルドだったが、流石に「Bランク」の冒険者パーティを無視するという事は出来ず。

 深いため息をついて対応すれば、新しいダンジョンの発見報告。

 更には踏破報告までをされて情報がパンク。

 もはや怒る気力さえ湧かないオズワルドが、国王へと手紙を飛ばし。

 異例の速さで返された手紙には、転移魔法を用いて今すぐに謁見せよという内容が。

 その言葉通り、オズワルドを道連れにしつつ王城へと転移すれば。

 待っていたのは、新ダンジョンを発見したらまず報告せよ、というお言葉や。

 仮にやられてしまいダンジョンの情報が持ち帰られなければ国の損失だ、というお小言。

 それらの言葉で一通り『夢幻泡影』へと冒険者の何たるかを説いた国王は。

 献上されたマンドラゴラ倭種やコーヒーに心を躍らせて。

 献上品により今回は不問とするが、次回以降は冒険者としての義務を果たせ、と強めに警告を与える程度に留めた。


「いや、お前らさ……」


 そんな四人の言葉を聞いていたオズワルドが、何度目か分からない深いため息と共に、


「普通倭種が出てきた時点で引き返すだろ……何当たり前に探索続行してるんだよ」

「特に脅威に感じなかったからな」

「最悪私の魔法で跳べますもの」

「いや、そういうわけじゃなくて……」


 追加で何かを言おうとしたが、どうせ言っても無駄だと言葉を飲み込んだ。


「んで? これからどうするよ」

「ダンジョン内での素材の買い取りをお願いしたい。倭種魔物の素材なんだ、高く頼む」

「宝箱の中身についてもですわね。いくつか売れそうな武器が入っていましたもの」

「……例えば?」

「恐らくは投擲武器なのであろう代物だな。魔法が掛けられており、着弾後数秒で手元に戻る」

「ただ、投げるのにコツがいるんじゃわい。ほぼ暗器じゃな」


 と言ってガブロがオズワルドへと見せたのは……。

 現代では棒手裏剣と呼ばれている、忍者が使っていたとされる武器であり。


「……それ、武器か?」


 というオズワルドの問いに。


「見ていろ」


 とマジャリスがガブロから一本受け取ると。


「シュッ!!」


 空へと向けて、投擲。

 数秒後、


「グェー」


 喉元に棒手裏剣が刺さった状態で、ウインドコンドルという魔物が落下してきて。


「この通りだ」


 と、得意気に言うマジャリスを前に、オズワルドの顔がより引きつった事は言うまでもない。

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