第555話 おうちカクテル

「ふぅ……食べた食べた」

「お前これまでで一番食ったンじゃねぇか?」


 いなりをたらふく平らげて、若干ぽっこりとなったお腹を擦るアメノサさん。

 それを見ながら、珍しい物を見た、という表情と呆れた表情が半々の『無頼』さん。


「個人的にすまし汁が滅茶苦茶美味かった」

「分かりますわ」

「あの卵焼きも至高の一言じゃったぞ」

「ふふん」


 で、すまし汁やら卵焼きやら、自分の作った料理が褒められて嬉しいラベンドラさんがこちらになります。

 耳どころか鼻までなげぇわ。


「カケル!」

「ふぁい」


 そんな団らんムードもつかの間、アメノサさんが勢いよく俺に話しかけてきて。


「今日のデザートは!?」

「あ、じゃあ準備しますね」


 自分の出番を取られたと、これにはマジャリスさんも不満顔。

 いや、不満がる所そこか?

 と言う訳で取り出したるは秘密のお薬――ではなく、カシスリキュール。


「それが昨日言っていた?」

「はい。カシスという果実のお酒です」

「ワインとは違うの?」

(はっ倒すぞ小娘)


 ステイ、神様ステイ。

 あと、アメノサさん? お酒興味ないのは分かるけど、間違ってもワインと一緒にしちゃあいけないよ。

 色々と敵に回すから。

 主にそっちの世界の神様とか。


「違いますね。まぁ、飲んで貰えば分かりますよ」


 と言う訳で~。

 色々作っていきましょう。

 まずはド定番のカシスオレンジ!

 何を隠そう俺が人生で初めて飲んだカクテルがこれ。

 甘くて飲みやすくて……自分のキャパを超えて飲んで地獄を見た、甘いのに苦い思い出の一杯……。

 続いてカシスソーダ!

 こいつも定番、カシスとソーダの爽やかな飲み心地が癖になる一杯。

 まだまだあるよ定番カクテル、カシスウーロン!

 まさかのウーロン茶と合わせる衝撃とは対照的にスッキリと飲みやすい、食事のお供にも可能な一杯。

 昨日の牛乳と合わせてみたカシスミルクもご提供。

 レシピもしっかり存在しござい。

 オレンジが合うならこっちも合う、という事でカシスパイン。

 オレンジとはまた違った味わいをどうぞ。

 最後に飲むヨーグルトと混ぜ、お洒落にミントなんかを乗せちゃったカシスヨーグルト!

 ヨーグルトを使う事でよりデザート感が増す甘いカクテル。

 締めの一杯として最高でしょ。


「どうぞ」

「……」


 全員目が点なんだけど。

 どうしたのさ。


「カケル」

「はい」

「お主……酒のレシピも大量にあるんか?」

「……まぁ」


 俺が、というか、人類が、だけども。

 不思議な事に、料理はそこまで……って国でも酒だけは力入ってたりするんだよな。

 何なら、酒がメインみたいな国すらあると思ってる。

 どことは言わないけど。


「一番甘いのはどれだ?」

「カシスヨーグルトですかね」

「サッパリしたのをくれ」

「カシスウーロンなんてどうです?」

「わしにもサッパリしたのを」

「じゃあソーダですかね」

「定番のを頂けます?」

「カシスオレンジをどうぞ」

「ウンと甘いの」

「カシスパインです」

「残ったのを」

「カシスミルクです」


 ……ヨシ、全員に行き渡ったな。

 ……俺? 俺はちゃんと自分用にカシスオレンジを作ってるよ。


「それじゃあ飲むか」


 と言う訳で。

 異世界組、初めてのカシス系カクテル――実飲!!


「んま~~あ」

「甘い……のにサッパリ」


 特に甘党な二人組の反応。

 カシスヨーグルトにとろけ切った表情のマジャリスさんと、カシスパインの味に驚いてるアメノサさん。

 アメノサさんに至っては目を見開いてカシスパインを凝視してるよ。

 

「まぁ、これ位なら」

「全然うめぇな」


 一方飲兵衛組はサッパリ系を渡したけど、普通にごくごく飲んでる。

 まぁ、さっきまで焼酎飲んでたし。

 下手すりゃチェイサー感覚だよな、これらのカクテルは。


「トロッとした甘みと酸味、ほろ苦い感じのバランスがもう最高ですわ!!」

「香りはさわやか。だが酸味などはミルクが包んでいてかなり優しい味わいだ」


 カシスオレンジにハマってそうなリリウムさんと、冷静に分析しているラベンドラさんになります。

 二人とも美味しそうに飲むね。


「次、マジャリスが飲んでたやつ」

「俺もアメノサが飲んでたやつを飲みたい!」

「もう飲んだんですか!?」


 あっという間……はちょっと言い過ぎか。

 さっという間に飲んだ甘党二人組。

 リクエスト通りにお互いのを交換して作ってあげて、


「カケル、もう少し甘くねぇのねぇか?」

「わしもそれが良い」


 という事なので飲兵衛二人にはドライジンジャーエールと混ぜたカシスジンジャーを。

 甘さより辛さを感じるような不思議なジンジャーエールだけど、多分合うだろ。


「同じものをもう一杯お願いしますわ」

「リリウムのものをこちらにも」


 で、リリウムさんはやっぱりカシスオレンジにハマってましたと。

 ラベンドラさんは多分あれだな、色んな味を飲んでみたいんだろうな。


「美味い!」

「美味しい。本当にデザートみたい」

「これいいな。全然甘くねぇ」

「炭酸強めもサッパリして締めとして最高じゃな」

「は~……なんて美味しいのでしょう」

「すこぶるバランスがいい……満足感も高い……」


 とまぁ、六人の反応を楽しみつつ。

 俺もカシスオレンジのグラスを傾けるのだった。

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