第37話 適材適所
「ぷはー! 満腹満腹!!」
缶ビール片手におっさんみたいな事言ってる姉貴は無視。
俺は泣く泣く追加のエビフライを揚げていた。
はい。全滅しました。大量のエビフライ……。
まさかここまで食うとは……。
「しかし、よく食べたな、今回」
「しばらく動けそうにありませんわ」
「気付いたら次のエビフライとやらに手を伸ばしておったからのう」
「やはり油で揚げるという調理法は秀逸だ」
四人は珍しくそう言ってリラックスタイム。
流石に大量のエビフライを腹に収めて苦しいらしい。
「あ、にしてもさぁ、今日食べたエビフライ、過去一で美味しかったけどなんてエビ使ってるの? やっぱ高いやつ? クルマエビとか?」
と、そんな話を聞いていた姉貴から、今更とは思うけど当然とも思う質問が飛んできて。
別に隠しても仕方ないか、と本当の事を告げることに。
「俺もなんてエビか知らん。……というか、分からん。リリウムさん達から貰ったエビダトオモワレルモノだから」
「へ?」
俺の言葉に間抜けな声を上げ、固まる姉貴。
そして、
「……てことは、あれって異世界の食材なわけ?」
「そうだよ?」
「――よもつへぐいとか大丈夫?」
「それは死者の国の食い物口にしたらじゃないっけ? 流石に異世界は死者の国じゃないでしょ」
なんて聞いてくる。
酔ってるのかな? そもそもそれなら異世界に持ち込めないと思うんだけども。
「そうかな……。そうかも」
まぁ、納得したならいいんですけどね?
さて、エビが揚がりましたよっと。
今回はエビフライの形状じゃなく、カツみたいにややぶ厚めに切り出して、正真正銘のエビカツにしてみた。
こいつの油を切り、千切りキャベツを敷いたバンズの上にドーン!!
そこにとんかつソースとタルタルを乗せてバンズで挟み、文字通りのエビカツバーガーの完成。
絶対美味い。けど、今の腹具合だと味見すらノーサンキュー。
皆さんに持たせるだけにしときますわよ。
一人二個ずつでタルタルもしっかり使い切り。
おかげさまでエビダトオモワレルモノも残りわずか。
消費の手伝い誠に感謝感激雨霰っと。
「お持ち帰り出来ましたよ~」
と四人に渡せば。
「いつも助かる」
「美味しくいただきますわ」
「これもまた美味そうだな」
「挟んでいるパンも美味そうだぞ」
なんて騒ぎはじめ。
「何あれ!? ねね、お姉ちゃんには?」
「無いよ。ていうかまだ食う気か?」
姉貴が便乗してくる。
「食ーべーまーせーんー! 明日の朝ご飯!!」
「朝からエビカツとか重いだろ。朝は別に作るから大丈夫だっての」
「お? マジ? じゃあ期待しとくねん♪」
と、姉貴が納得したところで。
「そうじゃ。忘れるところじゃったわい。そろそろ食材も少なくなってきたじゃろ? というわけでほれ」
ガブロさんが、虚空から何かを取り出して。
ドン! ドン! ドン! ドン! とテーブルに着地。
それは――、
「なになに? 生ハム!?」
見た目は生ハムの原木っぽい見た目の肉。
オレンジとピンクの中間みたいな色で、半透明な見た目。
プリプリとしており、見た目だけなら鳥のささ身や胸肉に非常に近い感じだった。
「ああ、それか」
「俺たちの世界でもそこそこに高級な食材だ。是非ともカケルの手で料理してもらいたい」
「美味しい食事を期待していますわ」
渡す四人側はこの肉が何の肉か分かってるからこの反応だけど、俺らからするとマジで未知の食材だからなぁ。
……とりあえず明日塩茹でにして味見しよう。
今日はもう何も口に入れたくない。
「あ、それから。こちらも渡しておきますわ」
と言って俺に手渡される赤い宝石。
……ルビー? まぁ、料理を作ってる代金なんだろうけど、渡されてもなぁ。
質屋でもそこまでの値が付かなかったし……。
「ん? それちょっと見せて?」
と、姉貴からの声が。
うん? 気のせいか? 今めっちゃ声が低かったような……?
「……かなり状態も質もいいガーネットね。色も大きさも申し分ない」
部屋の明かりに透かしたり、回転させたりしてガーネットを観察する姉貴。
なんだろう、姉貴がこんな真剣な表情してるの、久しぶりに見たかも。
「こんなガーネット、貰ってもあんたじゃ持て余すだろうに。……なんで?」
「なんでって……」
「私達からの代金ですわ。いくら素材を提供しているとはいえ、それだけで打ち消されるような料理ではありません。ましてやこうして元の世界に戻った後の食事すら用意して貰えているのですから、それに対しての報酬としてこちらの世界でも価値のあるという宝石を……と」
リリウムさんの説明を黙って聞いていた姉貴は少し考えこむと。
「あー、なるほどそう言う事ね。完全に理解したわ」
と、ネタ的に言うと何も分かっていないフレーズを口にすると。
「リリウムさん」
「なんでしょう?」
「今後宝石は私に頂戴。私、こういう宝石をやり取りして儲ける仕事に就いてるの」
「そうなんですか!?」
「そう。で、私に宝石渡してくれれば、それを売った金額をこいつに渡すから」
そう言って俺を指差す姉貴。
「あんたも宝石貰ったところで質屋に流すくらいが関の山でしょ? 私に宝石渡せば、生活費とかは私が出すから」
俺にもそう説明し、
「いやぁ、マジでラッキー。宝石商って最初が無茶苦茶大変って聞いてたから、こんな良質な宝石が手に入るならイージーモード突入よ」
一人でテンションの上がる姉と共に、四人を魔法陣へ見送った。
ちなみに寝る前、ちゃんとブルートルマリンのリングも姉貴に渡しておいた。
クッソ興奮してしばらく眺めてたね、リングを。
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