第38話 トリッポイオニク
「カラフルスワンプトードとか珍しいなおい!!」
「体表に毒があるので近付いてはいけませんよ?」
「炎に弱いからありったけぶつけろい!!」
「それで身が焼けたらどうすんだ!! 出来るだけ生でカケルに渡したいぞ!!」
「む、むぅ。そうじゃな……」
四人は、『OP』枠を脱するためにとある依頼をこなしていた。
というのも、
「意識の改善が見られるなら『OP』枠の解除を認めると会議で決まった。ただし、その為にはこちらで用意した依頼をいくつかこなして貰うぞ」
というお達しがあったためで、現在はその一つ目の依頼をしている最中。
依頼内容は、『町の近くの沼にモンスターが住み着いたので討伐して欲しい』とのこと。
別に自分らに頼まずとも……と思った四人だが、ここに住み着いたモンスターを見て自分たちに依頼が投げられた理由に納得。
というのも、リリウムの言う通り体表に毒があるため近接がまともに攻撃できず。
また、群れるという事もあって集団による数の暴力に押切られかねない。
近接が応戦できなければ後衛の時間稼ぎが出来ず、後衛も満足に働けないという一言で言えば面倒くさいモンスターの一種であった。
――が、そんなのは四人には関係なく。
「電気で感電させるのはどうじゃ?」
「あまり強いとこれも身を焼くぞ?」
「もう面倒なので無属性で焼きましょう?」
「……もうそれでいい」
リリウムの、一見すると意味の分からない言葉に賛同する三人。
そして、
「無慈悲な光、それは眩む閃光、刺し射る輝き。白き炎、全てを包む、滅する純白」
突然の詠唱に入るリリウム。
当然、カラフルスワンプトードが襲い掛かってくるが、突然、リリウムの姿は消失し。
「いや、無詠唱かつ他の詠唱中に転移魔法発動はズルいだろ」
距離を取り、遠くから見ていたマジャリスがぼやく中。
「『ソー・ラー』!!」
リリウムの上空から放った純白の炎は、瞬く間に一帯を包み込み。
ドゥモンッ!! というくぐもった音を発し。
「一丁上がりですわ」
華麗に着地したリリウムの言う通り、その場に居たカラフルスワンプトードは全てひっくり返り煙を上げており。
「じゃ、こっからは儂の仕事じゃな」
そうしてひっくり返ったカラフルスワンプトード、合計20体。
その全てが解体されるまでに、そう多くの時間はかからなかった。
*
朝です。
ええ、朝です。
顔を洗って歯を磨き、朝飯どうすっかなーとか考えてたらクッソ薄着の姉貴が降りてきて、そういやこいつ居たわとか思い出した朝です。
朝飯何か作るとか約束してましたわね昨日の私。
「一応聞くけど、何か食いたい物のリクエストある?」
「……エビカツバーガー?」
「重いよ朝から。……なんか適当に作るわ」
流石に却下。何が悲しゅうて朝から揚げ物とか食わにゃならんのじゃ。
胃もたれで夜に食欲が無くなるわ。
朝か……何か軽いものがいいんだよな。
無難にスクランブルエッグとソーセージでも焼こう。
エビダトオモワレルモノも焼いて添えておけば文句も言わんでしょ。
……あ、そうだ。生ハムの原木みたいなやつも味見だけはしとかんと。
味によっては買い物に影響しちゃうからな。
というわけで生ハムの原木っぽい肉を少し切り出し。
どうせだしソーセージと一緒に焼いちゃおう。
しっかり火を通せば大丈夫だよねきっと。
「おー、いかにも朝食っぽい朝食」
「朝からエビとか出てきたらビビるけどな、俺」
というわけで出来たので食べる。
まずはこの焼いた生ハムの原木肉をパクリ。
すると――シャキッ! と。
いや、野菜みたいなシャキシャキ感は無いんだけど、それに近いくらい歯ごたえの良い肉で。
しかも肉汁が凄い。噛むだけ溢れる。
これあれだ。大分に旅行行った時に食べたとり天に似てる。
こんな感じのシャキシャキした食感だったんだよなとり天。
思い出すわぁ……。ゆず胡椒付けて食うと美味いんだよなぁ。
……確かゆず胡椒はあったはず。
ここら辺に……あった!
「ん? 何してんの?」
思わず席を立ってゆず胡椒を探したら、姉貴に言われちゃったや。
「いや、昨日貰った生ハムの原木みたいな奴さ。焼いてみたらクッソ美味い鶏肉みたいな味してさ。ゆず胡椒つけて食べたくなったから探した」
「は? 何それ? 私も食べる!」
「いや、俺が食ったのは味見の為で――」
「黙れ。食わせろ」
「あ、はい」
姉貴に凄まれ追加で肉を焼くことに。
……これ、ステーキみたく焼いて食ったら絶対に美味いよな?
……ジュルリ。
お、俺もすこーしだけ焼こう。
少し……すこーしね?
というわけで姉貴の分と俺の分。
二枚分のチキンステーキを焼き、焼いた後のフライパンにバター、ゆず胡椒と醤油を入れて混ぜ合わせて簡易ソースを作り。
朝から重いものは……なんて言ってたくせに、ペロリと平らげました。
めちゃクソ美味しかったですが何か?
─────
カラフルスワンプトード:名前通り、見るからに毒のある様な見た目の色をしている巨大なカエルのモンスター。群れを作り、毒液を吐き出して獲物の動きを遅くし、捕食する。
体表がぬめぬめしているが、そのぬめぬめの成分は皮膚から分泌された毒であり、有害。
触れると痺れや痛みを伴い、体内に入れると呼吸困難に陥ることも。
分泌される毒は可燃性であり、火の魔法にめっぽう弱いが、燃やすと肉まで燃えるため、素材がほとんど残らなくなる。
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