第133話 読み通りよ
ラベンドラさんにも梅酒の梅を提供し。
ようやく盛り付けへ。
と言ってもやる事無いよ?
丼にご飯よそって、その上に千切りキャベツを乗せて、タレ漬けにしたスティックフライを乗せるだけ。
ね? 簡単でしょう?
「ビジュアルがここまで狂暴的になるか……」
「お腹の中のキングベヒんもスが私に早く掻き込めと囁いていますわ……」
お帰り語彙力。
で、リリウムさんお腹に何飼ってるって? まぁ、言葉の綾なのは確定的に明らかか。
気にしない方向で。
「こうしてみるとカツ丼みたいじゃな」
「まぁ、似てる所はあるかもしれませんね。中身はまるで違いますけど」
そういや、この人達の中のカツ丼って、俺が出したドミカツ丼になってるんだよな。
提供したのは俺とはいえ、俺自身との認識のズレがあるのがちょい気になる。
今度普通のカツ丼――いわゆる卵とじのカツ丼を作ってやるか。
「それじゃあ、頂いちゃいましょうか」
そう俺が言うと、みんな丼を持ち上げて掻き込み始める。
ちなみに俺はみそ汁から。
本日は豆腐とわかめの味噌汁なり。
「ふむっ!! 美味い!!」
「染み込んだタレがたまりませんわ~!」
「米が――米が無尽蔵に入っていくわい!!」
「変にくどくない、うま味の強いタレだ。フライによくマッチしている」
とまぁ当たり前に好評ですよ奥さん。
大体フライには天つゆの要領で作れば間違いないんすわ。
「フライも凄いぞ。ふっくらとした身なのに歯が当たるだけでホロホロと崩れる」
「噛むと歯ごたえが柔らかで、押しつぶされるごとに美味しいジュースが溢れてきますの」
「自分で言うのもなんだが揚げ具合は完璧だ。『太刀魚』の美味さを十二分に引き出せているな」
「王都の一流レストランでも出せるか分からん味じゃぞ! 美味すぎるわ!!」
さぁ、盛り上がってますわね。
それじゃあ俺もフライに手を付けますか。
しっかりお箸で持ってね、ザクッとな。
「……あー、美味い!」
ようやく絞り出せた言葉はその一言です。
うん、美味い! 美味いわ!!
なんて言うんだろうな、滅茶苦茶よく出来た唐揚げみたいな感じ。
しっかりした衣の下から出てきた身を噛んで、たっぷり肉汁が溢れてくる感じ!
俺が作ったタレもベストマッチだわ。フライなのに和風って言うのが完璧に調和してる。
それこそ業務用スーパーで買った冷凍の白身フライとは比較にならん。
マジでこっちのは唐揚げみたいなんだって!
こう、何というか……美味しくて、ジューシィで……。
あかん、語彙が死ぬぅ。
とにかく――そう! 美味しい!!
「マジで米が進む味ですね」
みんながフライと米の無限ループに陥ってる理由がよく分かる。
これは米の友ですわ。
「カケル、この漬物は?」
前回ワサビ漬けにやられて警戒してるマジャリスさんが持ち上げるのは、琥珀色をしたお漬物。
ふっふっふ、その漬物こそ俺のマイフェイバリット漬物。
奈良漬けである!
「奈良漬けと言って、酒粕を使った漬物ですね」
「なぬ!? 酒!!?」
と、奈良漬けの説明をした瞬間に、酒なら見境ない五郎左衛門のガブロさんが光の速さで反応。
誰よりも先に一切れ持ち上げ、そのままバクリ。
皆に見守られながら、その感想は――。
「おほーっ!!」
……嫌じゃ!! わしはひげもじゃおっさんのオホ声なんぞ聞きとうなかった!!
「あ、鼻に抜ける香りがとてもいいですわね」
「舌に付いた油が流れていくようだ」
「味の濃いものの後でもしっかりと味わうことが出来るな」
俺には美形三人衆の反応がオアシスです。
で、マジャリスさん正解。
この奈良漬け、鰻の脂をリフレッシュする目的で、鰻のかば焼きの定番の付け合わせになってるからね。
だから俺も奈良漬けを選んだわけですね。
「そうか、酒に漬ける、という手法もあるのか」
「あー、直接酒に漬けてるわけじゃありませんからね? 日本酒を作る時に出来る、副産物みたいな奴に漬け込むんですよ」
「なるほど」
むかーしむかし、徳さんに連れられて醸造所見学に行ったことがあるんだ。
その時に色々説明してもらったのを覚えてるよ……。
今じゃ、もうかすれた記憶だけどね。
「みそ汁が美味い!」
「分かる。カケルはレベルの高い合格点を越えるみそ汁をオールウェイズ出してくれる」
「具が違うのも素晴らしいですわ。毎回みそ汁も楽しみの一つですもの」
「シンプルなのもいいし、具沢山なのもいい。さらには汁の味自体も微妙に変わるから、楽しみは尽きない」
はい、懺悔します。
今まで全部インスタントのお味噌汁を使わせていただいてます。
……大丈夫かな? みそ汁はお湯を注いで作るものとか言う認識になってたりしない?
俺もたまにはみそ汁を自分で作るからね?
たまには……。
「そう言えば、先程何やらおかわり用のソースを作ってると聞こえたが?」
既に丼が空になったガブロさんが、身を乗り出して聞いてくる。
はいはーい、白線の内側でお待ちくださーい。
「さっきまでとは一転して今度は洋風なソースをご用意してますよ」
「是非頼む」
「私も気になりますわ」
「当然私も食べる」
「わしは大盛りで頼むぞい!!」
というわけで、読み通り全員おかわりっと。
え? 俺? ……無理無理、そんなに食えないって。
というわけでおかわり作りに着手!
――あ、ラベンドラさーん? 出番でーす。
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