第245話 ティラミスのお味は……?
とりあえず、出されたマンドラゴラを冷蔵庫の野菜室に押し込み押し込み。
当然のように入らなかったので、とにかく入るスペースに押し込み押し込み。
ヤダなぁ……顔がある野菜。
朝起きて、眠い目擦りながら冷蔵庫開けたら目が合うんでしょ?
一気に眠気飛ぶって。
あと、絶対に無いけど警察が家宅捜索とかしに来たとして、冷蔵庫開けたらトラウマもんだろ。
顔が付いてる野菜がぎっしり詰まった冷蔵庫なんてさ。
「それが今日のデザートか?」
「ですです。チーズを使ったデザートになります」
で、マンドラゴラを押し込むために、少しでもスペースを確保するってなったら当然デザートのティラミスを出さないといけないわけで。
そんな事をしたら、マジャリスさんが見落とすはずないよねっていう。
まぁ、どうせそろそろ出そうと思ってたからいいんだけども。
「上にかかっている粉はなんですの?」
「ココアパウダーですね。チョコの材料をすり潰して、油脂分をある程度取り除いたもの……だそうです」
なおwiki調べである。
ココアの定義なんて知らなかったからね。
知らない事は調べるに限る。
「というとこれは、チーズを使い、表面にそのココアパウダーをまぶしたデザート、という事じゃな?」
「それは食べてみてからのお楽しみです」
というわけで、ちょっと含んだ言い方をしつつ、ティラミスをそれぞれお皿に取り分けていく。
「む、層になっているな」
で、本当は食べてみてから気付いて欲しかったんだけど、取り分けた断面図から層になっている事に気付いちゃうラベンドラさん。
まぁ、いいんだけども。
「一番下はビスケット、その上にチーズクリームで、カステラを挟んでまたチーズクリームです」
ティラミス買った時に、紹介のカードみたいなのが入っててさ。
それぞれの説明が書いてあったんだよね。
「ビスケットとカステラにはコーヒーとラム酒が染み込ませてあるみたいです」
ちなみに買ったところは大人用のラム酒使用のティラミスと、子供も食べられるラム酒不使用のティラミスがあった。
さらにはチーズクリームじゃなくて水切りヨーグルトを使った、軽めのティラミスなんかも置いてあった。
気になったなぁ……水切りヨーグルトで作られたやつ。
でも、何と言うかティラミスを初めて食べるだろうからと、デフォルトなのを食べさせたかったんだよね。
「いただくぞ」
そんなわけで、第一刀(フォーク)はマジャリスさんから。
しっかりとビスケットまで貫通させゆっくりとパクリ。
「……なるほど」
あれ? 思ってた反応と違う?
てっきり美味い!! とかって騒ぐと思ってたんだけど……。
まさか染み込んでるコーヒーが苦かったとか?
口に合わなかったのか?
「うみゃ~」
あ、壊れた。
顔を思いっきり破顔させて、ふにゃっふにゃの笑顔でティラミス見つめてるわ。
ま、まぁ、気に入ったようで何より。
「ま! 程よく酸味のあるクリームとコーヒーの苦みが甘さを引き立ててますわね!!」
「途中の酒の香りもまた芳しく、楽しむのに一役買っとるぞい!」
「苦みも染み込んだコーヒーだけじゃない。上のココアパウダーとやらからもコクと共に感じられる」
んで、三人にも好評と。
良かった良かった。
「甘み、酸味、苦み、コク。それらがまるで手を取り合い、円陣を組んでこちらにタックルしてくるようだ」
……微妙に伝わらんな、マジャリスさんの食レポ。
「先のチョコレートチーズケーキもそうだが、チーズの特徴の酸味とコクを活かしつつ、甘さの邪魔をさせないような工夫の施されたスイーツだ」
「チーズが使われている分、過去のクリームと比べると重いのですけれど、その重厚感が満足感に繋がりますわね」
「このケーキには苦いコーヒーが欲しくなるのぅ」
「俺は紅茶だ。 断じて! コーヒーではない!!」
「どっちも用意しますよ。紅茶の方が時間掛かりますけど、コーヒー希望の方」
まぁ、美味しいケーキには美味しい飲み物だよね。
えーっと、コーヒー希望はガブロさんとリリウムさんか。
「リリウムさんお砂糖とミルクは?」
「自前の物がありますので大丈夫ですわ」
……このエルフは一体何を言っているの?
と思ったけど、何やらゴソゴソと虚空へと手を差し込んで。
出てくるのは、何かの何かで出来た水筒っぽいもの。
ほら、異世界もので見るような皮で出来た奴。
――びっくりした。突然何を言いだすかと思ったらそういう事ね。
ほんとやめて欲しい。
「カケル、私たちはストレートで」
「うむ」
で、紅茶二人はストレートと。
了解。
「リリウム。そのミルクは『――』だな?」
「ですわよ? 使います?」
「最初はいい。途中で使わせてもらうかもしれんが」
なんて話をしてるエルフを尻目に、ドリップコーヒーとキーマンを用意しまして。
――って、待て待て。
「ティラミスのお代わりは無いんでそれ食べきっちゃったらもうおしまいですよ?」
という言葉にピタッと手が止まるマジャリスさん。
あのね、いつもいつもお代わりが出てくると思うんじゃないの。
もう半分くらい食べちゃってるじゃん。
……ラベンドラさんに少し貰おうとしてもダメ。
もちろん、俺のもダメだからね!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます