第344話 異世界VS現代
四人が登場、いらっしゃ~い。
……あれ? なんか元気ないな? どしたん? 話聞こか?
「聞いてくれ、カケル」
「なんでしょう?」
「我々の世界の聖水より、こちらの世界の塩の方が強かった」
……はい? いきなり何の話?
聖水と塩を戦わせたの? 何その異種格闘技戦。
勝敗の付け方は? 塩が溶けきれなかったから水の負け、とかやったのかな?
溶解度って知ってる? 水に溶ける塩の量って決まってるんだぜ?
「こちらの世界でも解呪した鱗を、我々の世界に戻った後でやってみたのだがな?」
「こちらの世界の聖水を使い、こちらの世界の塩を炒って溶かしたのですけれど……」
「鱗一枚の解呪が限界じゃった。それ以上は入れてもうんともすんともじゃ」
……嘘やん。
鱗一枚で限界来たのか。
それでさっきの、こっちの世界の塩の方が強かった発言か。
「改めてこの世界の材料が規格外だと知った。……ただ、量は必要であれど解呪の方法は確立された。今後は研究が進むだろう」
……まさかなぁ。塩水で解呪されることになるなんて、魔物たちは想像してないよなぁ。
「ところでカケル、今日の料理は?」
「ふっふっふ。今日はお寿司を握って貰いますよ!」
「……?」
まぁ、ピンとこないか。
というわけでいでよスマホ! 握り寿司の解説動画を出して!!
「ふむ?」
まぁ、その解説動画をラベンドラさんに見せまして、今の内にシャリの準備。
今回は赤酢を使っていくわぞ~。
やや固めに炊いたご飯に、赤酢を入れて混ぜていく。
本来は酢に砂糖や塩も混ぜるんだけどね?
なんと日本の企業は素晴らしい事に、それ一つで美味しいシャリが出来る赤酢を開発しちゃったんだよなぁ。
本日お店で見つけたので買って来てみました。
というわけで炊いたコメの量に既定の赤酢を入れまして。
ボウルの中で混ぜ合わせていきます。
本当はね、木で出来たおひつとかあったら雰囲気最高なんだけどね。
身近に曲げ物屋さんとか無いかしら。
「なるほど。米の成形とネタに合わせるのをこうやって行うのか」
「手で直接行うのは独特ですわね」
「流れるような手際が凄い。恐らく、相当な修練を積んでいるのだろう」
存分に学んでくれ給え。上手く握れたら俺も恩恵受けられるし。
「ちなみにカケル、今日の具材は『――』の鱗だけか?」
「後はこいつらも握って貰おうかと」
ネタの事を聞かれたので、シャコナリケリとコシャコナリケリを見せまして。
「ふむ」
と納得はすれど、まだまだ表情が硬いラベンドラさん。
言いたいことは分かりますよ、足りないんじゃないかというんでしょう?
ならば!!
「さらにここに、姉貴から送られてきたこの国でも最上位に入る様な牛肉を追加します」
「なんじゃと!?」
「お肉を……お寿司に!?」
「というかこの世界でも最上位だと!?」
はいそこ。この世界でとは誰も言ってないでしょ。
まぁ、和牛はもはや世界規模で美味い肉の代名詞になっている事に関して否定はしないけども。
「部位ごと、品種ごとに分けて薄切りにしていきます」
「……気付いたのだが、握るのは私か?」
「ですよ?」
もしや? とかって表情で聞いて来たんだけど、そうですよとしか。
じゃないとわざわざ寿司の握り方解説動画なんて見せないでしょ。
「ちなみにカケルは何を?」
「自分は軍艦を作ります」
「……軍艦?」
ウニとコシャコナリケリは軍艦にしようかなって。
握りだとやりづらいでしょ? ……一応、ウニの握りはあるみたいだけどさ。
「一応、やることはあるのだな」
「そうですけど……何かありました?」
「いや、私に全てを任せて食べる側に回るのかと」
ドキリ。
あはは、まさかそんな……。
出来たらそうしたいんだけどねぇ。
流石にこっちの調理法とかを、口頭だけで完全にやれって言うのは無理だろうからね。
……たまには異世界で作った料理を持ち込みとかしてもいいんですよ?
オフチョベットしたテフをマブガットしてリットした料理とか言われてもちんぷんかんぷんだけどさ。
「あ、ちなみに肉寿司は最後に表面を炙る作業があるので……」
「私たちの出番、という事ですわね?」
「任せておけ」
「……わしは何も無いんか?」
他の人たちが何かしら仕事を与えられた中、何も言われてないガブロさんが心配そうに聞いて来たよ。
でもなぁ……別にガブロさんにして貰いたい事もなぁ……。
「特には……」
「むぅ」
「ガブロは肉の焼き加減を見てくれ。あの二人に判断させるのは些か不安が残る」
「分かったぞい!!」
ガブロさん、自分に仕事が出来て嬉しそうだ。
……やる事、ほぼ二人の子守りだけど大丈夫そ?
「さて、では握っていくか」
「握りの方は先ほど言った通りお任せしますので」
「分かった」
それではいざ、握り寿司!! &軍艦!!
……思ったけど、今回はシャコナリケリも炙りで頂こうかしらね。
火さえ通せば食べれるわけだし、わざわざ塩茹でにすることも無いだろう。
――べ、別に下ごしらえでやるのを忘れてたとか、そう言うわけじゃないんだからね!!
茹では何度も食べたから、ちょっと別の調理法で食べたくなっただけなんだから。
……四人に知られなければ誤差だよ、誤差。
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