第650話 物を知らん姉だね

「持ち帰りの料理、どうします?」

「シュニッツェルをサンドにして持って帰ろうと思う」

「賛成!!」

「ソースも選べると嬉しいぞい」

「バターソース、醬油ソース、ワサビソース、シュニッツェルに使ったソースから、だな」

「じゃあチーズとかも挟んでホットサンドにします?」

「いいな、それ」


 と言う訳で話はまとまり、まずはシュニッツェルを揚げる作業。

 まぁ、これはラベンドラさんに任せるとして。


「ちなみにラベンドラさん」

「どうした?」

「この魔物の骨ってあります?」

「出汁でも取るのか?」


 一つお尋ねをば。

 いやぁ、だってマグロでしょう?

 マグロで骨があるのかと聞くって事は、狙ってることは一つな訳で。

 

「骨の周りに付いた、捌いた時に残った肉が使いたいんですけれど……」

「そういえば、残っていましたわね」

「大トロや中トロ、頭トロに目が行って使っていなかったな」

「てことはあるんですね? 中落ち」

「あるぞ。少し待て」


 と、揚げ終えたシュニッツェルを油から引き上げ、バットの上に乗せて油を切っている間に、ディメンションバックをゴソゴソと漁るラベンドラさん。

 ――そして、


「これだな」


 取り出したるは、ワインレッドの綺麗な赤身。

 これよこれこれ。


「明日はこれを丼にしましょう」

「中落ちマグロ丼? 最高じゃん」

「でしょ?」


 中落ちのマグロ丼と聞いて姉貴のテンションが上がりましたわね。

 やはり中落ちってワードを聞くだけで心を躍らせてしまいますわね。

 私と一緒。


「では明日は楽しみにしておくとしよう」

「今日ほど美味しいかは分かりませんけどね」


 少なくとも、俺には記憶に残りまくるフルコースだったからな。

 これを越えるのは、多分しばらく無理だと思う。


「おら、各々で好きなソースをかけてホットサンドにしろ」

「はーい」


 で、油を切り終わったシュニッツェルをパンに挟み、チーズも挟んでホットサンドメーカーへ。

 俺何にしようかな。ワサビソースかな、やっぱり。


「ラベンドラさん特製スパイスをくださいな」

「ほぅ」


 姉貴はシュニッツェルにかかっていたソースに入ってたラベンドラさん配合の特製スパイス、か。

 あれも美味しかったもんねぇ。


「よし、では!」

「明日も楽しみにしておりますわね」

「次は日本酒がいいな。焼酎でもいい」

「わしもじゃわい」

「ワイン」

「同じく」


 なんて言いながら、異世界組が紫の魔法陣を潜って自分たちの世界へと戻っていく。

 ――さて、と。


「もう無理。酔った」

「眠いんでしょ? 小さく船漕いでたし」

「眠い」


 飲み過ぎた。

 というか、ワインがあんなカパカパ減るような料理を作るラベンドラさんが悪い。


「水飲んどきな。お酒と同じ量の水を飲むと明日に残らないって言うわよ」

「飲む……」


 姉貴が珍しく頼りに見える……。

 俺疲れてるのかな……。


「水飲んだらベッドまでは歩いて行きな。流石にもうあんたを抱えて動いたり出来ないから」

「……それ出来たの、小学校低学年頃では?」

「出来てた事実に変わりはない」

「さいで」


 なんてやり取りしたのがこの日の俺の最後の記憶。

 ちなみに、姉貴に勧められて水を飲んだのが効いたのか、二日酔いにはなってなかった。

 本当に少しだけだけど見直したわ、姉貴。



 ふわぁ……。

 ねむ。

 翔は仕事に言った後か。

 朝は昨日作ったホットサンドを温めろって言われてたんだっけ。

 ふぁ……。


「うっま。朝から目覚めるわ」


 朝から食べるにはあまりにも美味し過ぎるホットサンドを完食し、時計を確認。

 時刻は午前11時45分。

 午前って付いてるから朝だね、ヨシ。


「ん、赤福食べたい」


 そして食後にお茶を飲んでいたら、無性に赤福が食べたくなりまして……。

 

「よし、買いに行こう」


 思い立ったが吉日。

 結界すらも飛び越えかねない即行動。


「大阪で買って帰って来よ。駅弁とかも買っちゃって~」


 普段は世界を飛び回ってるから、国内の移動なんて抵抗感一切無し。

 赤福買うためだけに、大阪に乗り込みじゃ~!


「焼酎やら日本酒やらせがまれてたし、大阪の地酒でも買っていてあげるか」


 赤福を買ってくる事と、お酒を持ち帰る事を翔に報告。

 俺の名前を言ってみろ、と。


「あとたこ焼きもいくつか買って食べたいな」


 と言う訳で弾丸大阪日帰り食べ歩き、行ってきます!



「赤福を! 冷蔵庫に!! 入れるな!!」

「冷蔵庫に入れないと悪くなるでしょ!!」

「常温保存で悪くなる前に食べるの!! 冷蔵庫に入れたら餅が固くなるだろ!!」


 姉貴のやろう……。

 デザートも、お酒も調達してきてくれたから見直したのに。

 あろうことか赤福を冷蔵庫に入れてやがった。

 許される事と思うなよ?


「ちなみに翔」

「何?」

「中落ちマグロ丼って、切った中落ち乗せるだけ?」

「いや?」


 何をおっしゃるうさぎさんよ。

 俺がそんな単純なもの出すわけないじゃん。


「中落ちと中トロ、たたきとネギトロの四種類の具をのせるよ?」

「最高か?」

「よせやい照れるじゃねぇか」


 ネギトロだけにしてもいいんだけど、それはまぁ……異世界組はお代わりするだろうし……。


「ちなみに味変用にコチュジャンとウズラの卵も買って来た」

「よく出来た弟過ぎる」

「赤福を冷蔵庫に入れる姉とは違うのだよ姉とは」

「じゃあ赤福あげない」

「へへへ、肩でもお揉みしましょうか姐御……」

「三下ムーヴが板に付き過ぎている……」


 なんてバカなやり取りをしながら、異世界組の登場を待ちましたとさ。

 ……赤福貰ったら覚えてろ。

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