第305話 翻訳魔法さん、後で職員室
確かにさぁ、最近○○ガキみたいな表現を聞くようになったけどさぁ。
シャコガキは無いでしょ、シャコガキは。
「今……なんと?」
「? この『――』の幼体に合うタレを作るのだろう?」
「……です」
これは翻訳魔法さんが察したか?
全く、頼むよ。
あんまりこっちの俗世に馴染まなくていいんだよ?
学ばなくていい事も多いからね?
「ベースは醤油で、そこにごま油、ニンニク、コチュジャンを入れます」
「分量は?」
「お任せします」
下手に俺が味付けするより、ラベンドラさんの方が間違いないからね。
それに、俺は俺の好みがあるし、ラベンドラさんにはラベンドラさんの味の好みがあるじゃん?
俺の味付けを押し付けるのもあまり良くないのではと思う今日この頃。
「分かった」
あとね、俺がラベンドラさんを信用する理由の一つに、味付けする時にちゃんと味見することがあるんだよね。
混ぜる前の調味料とか、初見調味料とか必ず少量舐めて見て確認してる。
それで自分の中で配合の比率とかを構築してるから、味付けで全然外れないんだよね。
この味見って行為、かなり大事なんだけれども。
……うちの姉貴は俺が何度口を酸っぱく言ってもしないんだわ。
――やめよう、姉貴と比べるの。
「醤油に……ごま油、ニンニク……コチュジャン……」
ボウルに醤油を入れ、そこにごま油を少量垂らし。
チューブにんにくとコチュジャンも同じく少量。
ごま油は香りつけの為だし、ニンニクも多いと香りがキツイ。
コチュジャンが多いと辛いだけになっちゃうから、やっぱりラベンドラさんは分かってるねぇ。
「……ふむ、少し甘みだな」
で、出来たタレを味見したラベンドラさんが砂糖を追加。
よーくかき混ぜて完成っぽい。
俺も味見させてもらお。
「うま」
普通に完璧でした。
最後の砂糖の影響かな? 醤油とか、コチュジャンとかの塩辛さや辛みの角が取れてるの。
凄く丸い味わいに整ってる。
やっぱりラベンドラさんは最高だぜ。
「これを混ぜるんだな?」
「です、入るだけ行っちゃいましょう」
というわけでコシャコナリケリをボウルにぶち込み。
混ぜて貰ってる間にお湯を沸かす。
盛り付けまでをラベンドラさんに任せるから、その間に俺はみそ汁を作る。
「今日の味噌汁は手作りか」
「まぁ、結構言われましたからね」
軽く照れつつ、出汁パックをお湯に沈めるっと。
何に照れたかって? お前の味噌汁が毎日飲みたい事件ですよそりゃあ。
沸騰したら出汁パックを引き上げ、今日はオーソドックスにワカメと豆腐のお味噌汁。
増えるワカメと共に手の上で切った豆腐を投入し、お味噌溶いて完成。
その間にラベンドラさんも盛り付け終わってくれてるね。
丼にご飯、その上にユッケタレを絡めたコシャコナリケリを、まるで花びらみたいに盛り付けてくれてさ。
中央が空くから、ラベンドラさんはそこに小さな花びらをコシャコナリケリで作ろうとしてたみたいだけど。
ユッケときたら卵の黄身じゃん?
俺がそれを制止して、卵黄を落としましたわよ。
湧き上がる拍手。
最高に気持ちがいいね。
「というわけで今日のメニューはユッケ丼です」
「まず見た目が美しいですわね」
「『――』の幼体がどんな味か楽しみじゃわい」
「……何と言うか、このご飯とみそ汁に漬物が付いてくるセットを見ると落ち着くな」
「実家のような安心感ですわね」
「実家……しばらく帰ってないな」
なんか変な懐かしさを思い出してない?
あと、定食スタイルを見て落ち着くのはそれはもう日本人なんですよ。
異世界生まれの異世界在住日本人のエルフとか字面だけでややこし過ぎるのでやめてもろて。
「では早速、いただきます」
「「いただきます!」」
あと、当たり前にみんなで手を合わせていただきますするのとかもうね。
俺は小学校を思い出しますわ。
というわけで、今日はみんなと一緒にユッケ丼をパクリ。
ラベンドラさんがコシャコナリケリをたっぷり乗せてくれたおかげで贅沢に頬張れるね。
まずは黄身を崩さず、コシャコナリケリとご飯だけで……。
「「うまーっ!!?」」
俺とマジャリスさんの声がハモった。
いやうんめ! なにこれうんめ!!
エビのユッケで大体の味を想像してたんだけど、想像の三倍は美味い。
ていうかこのユッケタレがめっちゃ合う。
米にも、コシャコナリケリにもめためたに合う。
コチュジャンのピリッとした感じが、米の甘さとコシャコナリケリの甘さと調和しててさ。
醤油の塩味がそこに来るわけでしょ? でごま油の香りが来るでしょ?
美味すぎるに決まってるだろ!!
「これヤバいな」
「ヤバいわい」
「ヤバいですわね」
嘘だろ。
あの今まで饒舌に食レポしてた三人がヤバいしか言ってないぞ。
語彙力消失マジックかよ。これはヤバい。
「つ、次は黄身を崩して……」
「たっぷりと絡めていただきましょうか」
で、どうやらみんな最初は黄身を絡めなかったらしい。
思考は同じですわね。
「よ、よし」
「では……」
黄身無しで食べて衝撃の味だったから黄身を絡めて食べる前に気持ちを整理してるの傍から見てると面白い。
まぁ、それはそれとして俺も一回唾を飲みこむんだけどね?
で、各々が覚悟を決めて、黄身を絡めていただいたわけですよ。
結果? 分かり切ってるよね?
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