第546話 あまりにも膨大なこと。また、そのさま

一月振り二度目の報告です。

二週間後の5月9日にコミックポルカ様にてコミカライズが公開!!……の予定です。

詳しくは近況ノートをご確認ください。

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 フィッシュアンドチップス。

 物凄ーく平たく言えば白身魚とポテトのフライ。

 だがしかし、駄菓子菓子!

 日本のフィッシュアンドチップスは本場イギリスのそれとまるで別物!!

 いやまぁ、この知識はネットのとあるスレに貼られてたものなんだけどさ。

 日本のフィッシュアンドチップスは、本場イギリスの物と比べて――美味しいらしい。

 何を言ってるかって話なんだけど、実はちゃんと理由がありまして。

 イギリスのフィッシュアンドチップスって、ギリ食えるか食えないかレベルの鮮度の魚を使い。

 使い古されて汚くなった油で揚げるもんだから味は全然なんだそう。

 で、そんな事を日本でするかって言われると……絶対にノーじゃん?

 と言う訳で本場イギリスよりもフィッシュアンドチップスが美味しいんだとさ。


「揚げるだけか?」

「ですね」


 フィッシュアンドチップスがどう翻訳されたかは分からないけど、揚げ物だとは伝わってるみたい。

 なので、それだけ? となってるラベンドラさんだけど……。


「なまじ食材が美味いですからね。変な細工せずにシンプルに調理するのが美味いと思いますよ?」


 イセカイカワブタのポテンシャルを考えるに、ただ揚げるだけでも美味い。

 別に俺が料理を考えるのが面倒になったからじゃないよ?

 いいね?


「そうか」

「です」


 よし、押し切った。

 言いくるめに数値振っといて良かったよ。


「じゃあ、衣を作りましょうか」


 というわけで調理を開始。

 ボウルに小麦粉、塩、片栗粉、重曹と入れ、そこにビールを注ぐ。

 これがフィッシュアンドチップスの一番の特徴かな。

 衣に重曹とビール。

 ……まぁ、お店によっては重曹じゃなくベーキングパウダーだったり、卵を入れてみたり……。

 あと、今回使ったのは某スーパーのオリジナルブランドのラガービールだけど、ラガーじゃないビールで作ってみたりとか……。

 結構なアレンジが施されているらしい。


「カケル、ポテトは?」

「あ、揚げちゃってて大丈夫です」


 ちなみにチップスの部分は俗に言うフレンチフライの事。

 俺らが想像するチップスは、イギリスだとクリスプスって呼ぶらしい。


「揚がったら油を切って、パンの中に詰めてください」

「分かった」


 普通にフィッシュアンドチップスを作ってもこの人達の腹は満たせないだろうからね。

 案の定というか、バゲットを横に切って、そこに詰めてサンドすることに。

 レタスは既に敷いてあり、ソースはタルタルソースを使う。

 間違いないでしょ、これなら。


「よし」


 重曹とビールで泡立つ衣を、塩を振ったイセカイカワブタに纏わせまして。

 油の海にドボーン!

 ん~……いい音だ。


「なぁ?」

「はひ?」


 急に『無頼』さんに声掛けられた。

 というかこの人、動くのに気配も音も無いの怖い。

 もう少し一般人に配慮をですね……?


「お前、どれくらいレシピ持ってやがンだ?」

「……?」


 どうしてそんな事を聞くのだろう……。

 あと、正確にこれだけ! って絶対に言えないと思う。

 そもそも、数えた事無いし。


「『無頼』」

「なンだ?」

「料理人が自分の作れる料理に関する情報をそう簡単に公開すると思うな」


 料理人じゃないです……会社員です……。


「だが、お前はレシピの公開をしてンじゃねぇか」

「あんなもの、氷山の一角、エルフの森の葉っぱの一枚だ」


 知らん言い回し出て来た。

 

「……いや待て。逆にこれだけ料理を隠すことなく俺らに出せるって事は……」

「あまりにもレシピの数が膨大、という事だ」


 なんだろう、俺が居ないところで盛り上がるのやめて貰っていいですか?

 あと、こいつマジかよ、みたいな顔で『無頼』さんがこっち見てるんですけど。

 いいのか? 公表するぞ? レシピ本を。

 ラベンドラさんとかクッソ喜びそう。


「揚がったな」

「あ、はい」


 イセカイカワブタのフライの揚がる音の変化に気付いたラベンドラさんに言われ、引き上げて。

 新聞紙を敷いたバットにあげ、余分な油を落とす。

 ここに軽く塩を振り、何故かあるモルトビネガーを一回し。

 揚がったポテトと一緒にバゲットに挟み、タルタルをたっぷりと押し込んだら完成っと。


「フィッシュアンドチップスバーガーになります」


 恐らくだけどこの食べ方は一般的じゃないと思うな。

 でも、エルフ達食いしん坊の腹を満足させるためなんだ、すまない。


「貰っていくぜ」

「あ、『無頼』さんにはこれも」


 と、忘れずにアメノサさん用のレモンメレンゲパイを持たせまして。


「俺たちのは?」

「さっき食べたでしょ」


 エルフさんや、デザートはさっき食べたでしょう?


「あいつも泣いて喜ぶさ」

「そんなにです?」

「文字通り、比喩でも何でもなく、泣く」

「……そっすか」


 デザートを差し入れられて泣いて喜ぶアメノサさん?

 それだけ政務に追われているという事?

 他人の何でもないような優しさが心に沁みる位には辛い労働を……?

 ……つまり社畜?


(いや、国の政務が多忙なのは当然じゃろうに。それを自分でほっぽり出してお主の所に来ていたツケを払っとるだけじゃよ?)


 自業自得だったか。

 でもまぁ……何と言うか。

 落ち着いたらまた来そうだな、アメノサさん。

 というか、あの人なら現在進行形でこっちに来るために仕事を調整してそう。

 ……その時は、アメノサさんが食べたい物でも作ってやるか。

 ――仕事に追われる仲間として、さ。

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