第248話 防衛魔法君もさぁ……

 さて、と。

 今晩が無水のドライカレーに決まったところで、本日のデザートを作っていきましょう。

 冷蔵庫を開けて、目が合ったマンドラゴラは……。

 サツマイモっぽいやつと、カボチャみたいなやつ。

 う~む……確かにデザートに使えそうではある。

 あ、いつぞや見た、きんつばを作ってみようか。

 サツマイモのきんつばとカボチャのきんつば。

 絶対美味しいじゃん? というわけでまずは……。


「味の確認だよな」


 サツマイモの見た目でホタテ味とか、カボチャの見た目して味はニンニクとか、どんな味が来ても驚かないのが異世界食材。

 いや、驚くけど。

 というわけでマンドラゴラの顔が見えないようにまな板に置きつつ、包丁で少しだけ切りまして。

 一応、念のため皮も切り落とし、両方を塩茹でに。

 待つこと数分。


「もうそろそろかな」


 柔らかくなったのを箸を刺して確認し、口の中へ。

 まずはサツマイモから。


「あ、美味い」


 普通に見た目通りのサツマイモ味。

 ただ、繊維っぽさがない。

 スイートポテトみたいな舌触りで、すんごい滑らか。

 甘さもじんわりとした甘さで、時間が経つごとに徐々に甘さが濃くなってく感じ。

 緑茶欲しい……。


「次はカボチャ」


 ……こっちも美味い。

 というか、甘さならこっちのが甘い。

 やっぱり繊維っぽさはなく、漉されたカボチャのきんとんっぽい。

 いや、果物みたいに甘いぞ? パンプキンプリンとか、クッキーにしても絶対に美味い。

 半面、煮物とかには邪魔になる甘さかなぁ……。

 もう少し控えめの方が、煮物とかには向いてる気がする。


「これなら両方使えちゃうな」


 味見も終わったし、本格的にきんつばを作っていきますわぞ~。

 なんて思っていたら。

 ――キュボッ!

 と、突然聞いた事無いような音が。

 ……いや、違うな。この音聞いたの二回目だな。

 一回目は確か……うわ、思い出したくねぇ……。

 ルフ鳥の卵を開いた時に、あの白い寄生虫に襲われた時に聞いたんだった。

 確か、リリウムさんの防護魔法的な何かの白い炎が発生する音……。

 てことは、今俺襲われた? 何に? 

 ……まさかマンドラゴラ!? 

 と思ってまな板を見るも、その上には何ら変わらず横たわっているマンドラゴラ二つの姿が。

 あれ? 違う? じゃあ何?

 と思った時。

 プーーーーーン。という耳障りな音が。

 その音の主を発見し、目で追って。

 俺の腕にとまろうとしたので叩く準備で腕を振り上げたら。

 キュボッ! 俺の腕より先に、白い炎が蚊を燃やし尽くしてました。

 ……リリウムぁ!!

 あぶねぇだろうが!! というか、会社とか外でこの魔法発生しなくてよかったぁ……。

 先輩とかの目の前でキュボッ! とかなったらなんかもう色々とヤバい。

 ちょっとリリウムさん問い詰めなきゃ……。

 あと、蚊対策のコンセントに刺して使う、九十日効果が続くアレもね。

 そう何度も白い炎が発生されても困る。



 というわけで気を取り直して、まずはカボチャとサツマイモの皮を包丁で切り落としまして。

 弱火でじっくり時間をかけて煮崩れるまで加熱。

 じっくり加熱すると甘さが強くなるんだって。

 加熱が終わったら引き上げて水を切り、それぞれボウルに移して潰していく。

 潰す際に砂糖と少量の塩を加えて、混ぜ合わせながら潰しますと。

 マッシャーっていう、マッシュポテトとか作る時に使う器具があると楽。

 何故かうちにはあるのでもちろん使って潰しまして。

 そいつらを、適当な大きさや形に形成。

 星とか、丸、三角、四角などちょっと遊び心を出して作りまして。


「えーっと、ガワは薄力粉と白玉粉……」


 まずは白玉粉に水を入れ、よーくかき混ぜまして。

 そこに、ふるいにかけた薄力粉と少々の塩を入れ、また混ぜる。

 割と緩めになるよう水を入れ、完成。

 あとはさっき形成したカボチャやサツマイモを、このガワ生地を付けてフライパンで焼くだけ。

 思ったより大変じゃないな。

 ……というわけで、味見用に小さく成形したやつを焼いてみて、と。


「全面満遍なく焼いて……」


 ここで気付いたんだけど、きんつばってガワを付けて焼く都合上、円柱型や星型は異様に焼きづらい。

 円柱はまだ転がしながら焼けばいいけど、星型は物理的にというか、形的に無理。

 というわけで泣く泣く先程成形したやつらを四角や三角に成形しなおしていく。

 ちなみに味見用は小指の先程度のサイコロ型だったので問題なく焼けましたとさ。

 いやぁ、ガワを付ける前に気付けて良かった……。


「いただきます」


 てなわけで味見。まずはサツマイモのきんつばから。


「うっめ」


 皮のもっちり加減。そのもっちりから出てくる滑らかなサツマイモ。

 そして、茹でた事と砂糖と塩が加わった事でより際立つサツマイモの甘さ。

 滅茶苦茶に美味しい。

 例えが合ってるか分からんけど、モンブランとかに使うペーストあるじゃん?

 あんな感じが近い。

 一歩間違えばクリームとかと勘違いしそうなほどに滑らか。

 そして濃厚。これうめぇわ。四人に出す時は緑茶必須だな。


「んで、カボチャ……」


 塩茹でしただけでめためた甘かった。

 それがきんつばにしたらどうなるのか……。


「これもうお菓子じゃん」


 結果はコレ。

 ちょっと冗談抜きで美味しかった。

 店にあったらとりあえず買うレベルで美味い。そして甘い。

 しかもなんて言うか、砂糖の甘さとはちょっと違うんよな。

 果物特有というか、こう、カボチャでしか出せない甘さっていうの?

 本当に美味い。


「こりゃあ大成功ですねぇ」


 というわけで、味見も終えた事ですし?

 もうちょっとで四人が来ちゃいますし?

 きんつば、焼いて行きますわぞ~。

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