第70話 ジャパニーズファストフード

 さぁてジャーキーもスモークし終わりましたし?

 残ったコンビーフも大詰めに参りましょう!

 と言っても後は茹でるだけなんだよね。

 ……二時間ほど。

 というわけでただそれだけするのも勿体ないと思ったので~。

 皆さま(四人)の為に~。

 今夜のご飯も並行して作っていきますわよ!

 今回のご飯は作り方だけならクッソシンプルなので、別にラベンドラさんには口頭での説明だけでもいけるでしょって事で。

 まぁ、昼飯すら食ってない時間から夜ご飯の準備を始める事から、シンプルだけど時間が掛かるってのは察して欲しい。

 というわけでまずはコンビーフ。

 お湯を沸かし、沸騰したら漬け込んだお肉を鍋にIN。

 で、同じく肉と一緒に漬けこんでおいた野菜たちも、汁気を切ってから鍋にぶち込み。

 お肉と一緒に苦楽を共にして貰う。

 ちょっと熱いだけの温泉にゆっくり浸かってもろて~。

 で、後は煮込むだけと。

 じゃあ煮込んでる間にもう一方に着手着手~。

 ギュウニクカッコカリを薄く大量に削ぎ、玉ねぎをたっぷりとスライス。

 以上、材料の準備終わり!

 でっかい鍋に水を張り、まずは肉と玉ねぎを茹でてアクを取り――。

 ってそうだよ。コンビーフの方もアクを取らなきゃ。

 ……右手にお玉を! 左手にもお玉を! 秘儀! 死者の目覚――何でもないです。


「既に滅茶苦茶いい匂いしてる……」


 コンビーフを煮込んでる方の鍋のふたを開けたら、俺の嗅覚にダイレクトアタック。

 一気にお腹がすく芳醇なかほり……。

 例えるならアレだ。コンソメスープみたいな匂い。

 煮汁は煮汁で活用してぇな、こんな美味しそうな匂いしてるなら。

 ……確か、ビーフシチューのルゥもあったよな?

 次はそれにするか。

 で、アクを取り終わったら味付けのターン。

 砂糖、塩、みりん、醤油、めんつゆ、酒で味を付けて。

 このまま煮詰めれば牛丼の完成。

 ちなみに玉ねぎは、クッタクタのトロトロなのも大好きだけど、シャキシャキ食感も捨てがたいという事で、肉と煮詰めているのとは別に後入れ食感重視のも残してある。

 これは四人が来てから入れますわぞ~。

 あとは焦げ付かないように混ぜながら、汁がガン減りするまで煮詰めて完成。

 というわけで適当な動画を垂れ流しながら、二つの鍋の面倒をば。

 美味しくな~れ、美味しくな~れっと。



 で、茹で上がったコンビーフがこちらになります。

 ババン。まぁ、まだブロックのままなんだけど、流石にこれだけ煮れば繊維がもう既にほぐれてきてる。

 というわけでこのブロックを、フォークを使ってほぐせば。

 自家製コンビーフの完成って事よ。

 ……作ってみた感想だけど、買った方が早いよ。うん。マジで。

 漬け込みでエルフの魔法とか言う他の人じゃ出来ない時短を使ってこれだもん。

 この手間を考えると、店で買った方が絶対に安い。

 とはいえ自分で作ったってだけで美味しさに補正が掛かるからな。

 とりあえずお腹すいた! 今日のお昼はコンビーフに決定!!

 というわけで一旦牛丼の火を止めて。

 保存してある冷凍ご飯を解凍。

 その間に目玉焼きを作ります。

 焼き加減はサニーサイドアップ。いわゆる片面焼き。

 焼き上がる寸前に水を入れて蓋をし、蒸し焼き状態にして表面の白身も固めて完成。

 そいつをご飯の上に乗せ、もう目玉焼きもご飯も見えなくなるくらいコンビーフを乗っけたら。

 マヨネーズ! 粉チーズ!! 醤油をサッと一回しして完成!!

 コンビーフのマヨネーズ丼!! うまぁぁぁい説明不要っ!!!

 不味いはずねぇんだわ。肉とタマゴとマヨと醤油やぞ?

 この材料で不味く出来る方が難しいわ。


「思ったけどこれどうしよう……。コンビーフは適当にパンに挟んで持たせるとして、向こうの世界って米あるんだっけ?」


 牛肉の具だけ渡してもなぁ……。

 でも牛丼屋とか行くと、チーズとかマヨとかトッピングあるか。

 じゃあ同じくパンに挟むスタイルで渡すか?

 まぁ、食べさせてみてからだな。

 四人が好むスタイルに合わせましょっと。

 さてさて、腹も満たされたところで牛丼の続きをやっていきますわよ。

 煮詰まれ~、煮詰まれ~ってね。



「邪魔するぞ」

「あ、いらっしゃいませ。もうちょいかかるんで寛いでてください」


 なお、四人が来るまでに煮詰まらなかった模様。

 もうちょっと、もうちょっとだけ……。


「いい匂いがしとるな」

「今夜も期待できますわね」

「また調理済みか……」


 ラベンドラさん、露骨にガッカリしないで。

 特に変な事はしてないから。

 ただちょっと、うん、ちょっと6時間くらい煮詰めてるだけだから。


「時間かけて煮詰めてるだけで、ここまでしなくても食べられるんですけどね……」


 俺がやりたかったからね、しょうがないね。

 とりあえず味付けを見てもらう為に残りわずかな汁をお玉ですくい。

 小皿に移してラベンドラさんへ。

 と同時に他の三人から刺すような視線。


「うっ……。具とかじゃなく、汁の味見ですから」

「大事な事だぞ。再現しなくてもいいのか?」


 と説明すれば、先に味わっているという事よりも再現する方に天秤が傾いた様子。

 渋々と視線を外す三人。


「ほぅ。口に含んだ瞬間はそうでもないが、時間が経つごとに風味や奥深さが表れてくるな」


 汁を飲んだ感想を言うラベンドラさんは、


「これまでのようなガツンと来るうま味ではなく、じんわりと広がる様な浸透するようなうま味だ」


 そう言って、静かに小皿を置き。


「美味い。何と言うか、突き詰められたような美味さだ。核となる一つの味を強めるのではなく、繊細な味を束ねて結論へと至る様な味だ」


 なんて大層な感想を告げてくる。

 ……あの、別にそこまでのようなものじゃ。


「これをご飯の上に乗せて食べるんですけど、まずはシンプルにそれだけで食べてもらって、お代わりでトッピングを解禁します」

「ほう。この味に何か乗せるのか」

「一応候補は、チーズに大根おろし、キムチとタマゴですかね」

「バリエーションも結構あるな」

「まずは食べてみてから、どれをトッピングするか決めませんと」

「そうじゃぞい。美味そうな匂いで腹が減っとるんじゃ」


 はいはいっと。

 既におかわりするのは確定らしいし、ご飯をたっぷり炊いてて良かったよ。

 ……にしても米がだいぶ無くなってきたな。

 ジャーキー渡すついでにまた徳さんから買って来なくちゃ。


「じゃあどうぞ。この国が誇るファストフード、牛丼です」


 と、熱々ご飯に煮詰めた具。

 そこに細切りした生姜を乗せた牛丼を、四人へと提供した。

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