第71話 トッピングの可能性は無限大
「美味い! 美味い!」
「つゆの絡んだご飯が美味しいですわ!」
「いくらでも入るぞい!! もっとくれ!!」
「肉と米の相性は散々味わってきたが、これはまた格別だな」
四人とも丼から顔を上げずに掻っ込み続け。
次に顔を上げた時には、すっかりと丼は空になっており。
「チーズをトッピングで」
お茶を飲みながらそう言うマジャリスさん。
「私はキムチを」
とはリリウムさん。
「大根おろしを頼む」
口元をティッシュで拭きながらラベンドラさん。
そして、
「なにもトッピングは要らんからもっと肉をドカッと頼むぞい」
口周りのひげにご飯粒をいっぱい付けたガブロさんからのリクエストを聞いて、それぞれその通りに……。
「そう言えばなんですけど、卵は要りません? 美味しいですよ?」
ふと、牛丼の定番トッピングの卵を思い出し、尋ねてみるが。
「卵は何か加工するのか?」
「と言うと?」
「火は通さんのか?」
「生ですね」
お店で牛丼頼む時は温泉卵とかあるけど、家で作る時は基本生だよね。
「その……こういう事を言うのはアレなんですが、生卵というのは大丈夫なんでしょうか?」
む? ……あー。
卵の生食が出来るのって、日本がほぼ唯一なんだっけ?
卵の衛生管理がしっかりしてるからだとかなんとか聞いたことがあるな。
「飢えた冒険者が卵を見つけ、口にしたら腹からモンスターが食い破って出てきた、なんて話は聞いたりするぞ?」
もっとヤバかったわ。
何その地球外生命体的映画とかで見そうなやつ。
ていうかそんな事が異世界では起こるの?
こっわ。
「こっちの世界にそう言ったのは居ませんよ。それに、この国ではしっかりと管理されてるので生食しても問題ないんです」
まぁ、突き詰めると寄生虫とかは内臓食い破るやつとかもいるらしいけどね?
そこはそれ。
「むぅ……。美味しいと聞けば試したいが、やはり先入観が……」
「そうですわね……。それに、今のままでも十分に美味しいですし……」
「もう少し色々と卵料理を食べてから挑戦させてくれ……。それで思い出したがオムライスは卵料理だったな」
「あれも美味かった。また作って欲しいものだ」
とまぁ、こんな感じで四人は卵乗せは回避。
というわけで言われたトッピングを乗せまして。
それぞれご提供。
「美味い!! やはり合うと思ったがチーズとの組み合わせは抜群だな!!」
「このピリリとした辛みがつゆやご飯の甘みとよく合いますわ~」
「ツンとした辛みのくる大根おろしもいい。ずいぶんとサッパリ食べられる」
「肉じゃ肉じゃ肉じゃあぁっ!!」
二杯目なのに凄い勢いっすね。
……俺はそうだな――ネギ玉牛丼でも再現してみるか。
使いかけのネギをたっぷりとみじん切りにし、盛ったご飯の中央をくぼませ卵黄を投下。
その周りに刻んだねぎをたっぷり盛り付け。
コチュジャン、甜面醤、豆板醤をちょっとずつ混ぜ合わせて特製辛みダレを作成。
そいつをネギの上にちょいちょいと垂らしてっと……。
「じー」
「じー」
「じー」
「じー」
四人からの視線が凄い。
……あ、食べ終わったんですね。ヨカッタヨカッター。
「それも美味そうだな」
「この間の辛いソースだろう? それ」
「とてもご飯やお肉に合いそうですわね?」
「おかわりはまだあるんじゃろうな?」
えぇと……。はい。
作りますよ四人分! 刻めばいいんでしょ刻めば!!
というわけで俺の丼を脇にどけ、四人分のネギをみじん切りにすることに。
一人用としか作ってなかった辛みダレも追加で作り、卵黄以外を乗っけたネギ辛牛丼を四人に提供。
流石にそろそろ食べさせて……。
お腹すいた……。
「むほっ! ネギの風味とこの辛いタレがご飯や肉によく合うぞい!!」
もはや恒例のガブロさんの美味い悲鳴頂きましたー。
もうちょいこう……どうにかならんかな。
その……ビジュアル的に。
「美味い。やはり俺の目に狂いは無かった」
本日は美味いbotになり果ててるマジャリスさんもご満悦。
美味しそうで何よりです。
「ねぇラベンドラ? 香辛料もこうしてただ辛いだけじゃない、うま味も併せ持った調合を探っていくべきでは?」
リリウムさんはアレだな。
辛い料理を食べてから、すっかりハマってらっしゃる様子だ。
ベトナムとかの辛い料理とか好きそうだな。
「そうしろと言われればそうするが、私は調理士だからな。調合士とはまた違う。そこら辺は調合士の領分になってくるぞ?」
ラベンドラさんもそんなこと言いながらだけど、明らかに頬が緩んでるんだよなぁ。
結構お気に入りだよね? 旨辛味。
さてと……。
やっと牛丼にありつける。
まずは黄身を割りまして~。中央を軽くかき混ぜて肉やご飯に黄身をまとわりつかせたら~。
中央から外に向けて米も肉もすくい上げ、そのまま口へ。
…………。
むほほほほほ。美味い! 美味い也!!
時間かけて煮詰めた甲斐があったよ! 肉にしっかりつゆが染みてて、噛めば肉汁と一緒に口の中に溢れてくるんだもん。
そいつがご飯やネギと合わさって、口の中に美味いのハーモニーが溢れるって寸法よ。
で、合間合間にピリリと来る辛みね。
やっぱ牛丼ではこのネギ玉牛丼が一番好きだわ。
――流石に三回もお代わりしたら満足だよな?
と、四人を確認すれば口元を拭いたり、お茶を飲み干したりとご馳走様ムード。
良かった良かった。じゃあ、俺も、ゆっくりと牛丼を楽しむとしますか。
……あの人達みたいに三杯も食えないからね。
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