第108話 現代ジョーク()
「これぐらいか?」
「あ、はい。それくらいで大丈夫です」
現在、ラベンドラさんを指導して肉巻きおにぎりを調理中。
あのめちゃウマブタニクタカメウマメを、スーパーで売られてる薄切りのスライスくらいに切り揃え。
そいつにうなぎのタレを絡めて焼く。
あとはコイツをおにぎりに巻くだけ――なんて、言うと思ったか?
ヒャッハー!! そんな訳ねぇだるるぉぉっ!?
肉が焼けたフライパン!! タレと、ブタニクタカメウマメの脂がたっぷりと残ってるこのフライパン!!
ここでおにぎりを焼くんだよぉっ!!
というわけでおにぎりを作るのは俺の役目。
というのも、一度教えてみたんだけどね。
「む、結構三角にするのは難しいな」
って感じで、三角おにぎりに形を作るのが難しかったっぽい。
いや、違うな。
難しかったというより、慣れていないだけだ。
というわけでおにぎりは俺作。
まぁ日本人ですし? おにぎりについてはそこらのエルフよりも慣れておりますわよ?
……なにせ米がない世界からの来訪者ですしお寿司?
慣れるもクソもないわな。
「……もはや禁忌だ」
なお、おにぎりを焼いている時のラベンドラさんの反応がこれである。
何をしてるって、別にうなぎのタレと脂が残ったフライパンで焼きおにぎりをしているだけだが?
ちなみに焼いた肉はちゃんと焼きおにぎりに巻く。
美味いが織りなす暴力的な美味さを細胞の隅々にまで浸透させるがよいわ! フハハハハ!!
「おにぎり自体は香ばしさがあれば大丈夫なんで、少し焦げ目が付いたら引き上げます」
「それだけでも美味そうじゃのぅ」
「美味そう、ではなく美味いのだ。考えるな、感じろ」
「そうですわよガブロ。マジャリスの言う通りですわ」
なお三人は匂いに釣られて誰に言われるまでもなく調理工程を見学中。
さっきお腹一杯ご飯食べたはずなんだけどね、しょうがないね。
「ちなみに、今回はこのタレを使ってますけど、醤油味噌とか塗って焼いても美味しいですよ」
というか、本当は焼きおにぎりってそっちのが正解だとも思わんでもない。
まぁ、極論焼いてさえあれば焼きおにぎりって事で。
……あと、自分で焼きおにぎり作るより、冷凍の焼きおにぎりの方が美味しいとかも言わない。
なんなんだろうねあの美味しさ。たまに無性に食べたくなるよね。
冷凍庫に一袋常備されてると説明できない安心感がある。
「ふむ……なるほど」
まぁ、ここまで説明したけど、ラベンドラさん達の世界にはまだ米が無いんだよな。
いや、あるにはあるけど、安定して食べられるようになるにはもっと時間が掛かるって話か。
よくある漫画とかだと、日本の苗を持っていくとかやるところだろうが、残念。
そういうの良くないってボク知ってる。
異世界には異世界の事情があって、何でもかんでもこっちのものを押し付ければいいわけじゃねぇんだ。
……なお、食事というか、料理に関しては考えないものとする。
お、俺はご馳走してるだけだし。
ラベンドラさんが勝手に向こうの世界で再現してるだけだし。
つまり私は悪くない。おーけー?
「で、焼きあがったらお肉で巻いて、完成です」
「さっきの丼がお手頃なサイズに……!?」
「つまり、どこでもあの美味しさが味わえるって事ですの!?」
「神は居る。初めて心からそう思うぞい」
「話が飛躍し過ぎでは?」
肉巻きおにぎりだぞ?
なんでそこで神がどうのって話になるんだ全く。
……あ、そうだ。
「おまけでたくあんも別に包んでおきますね」
「む、非常に助かる。……そう言えば、今日の漬物も材料は大根だったよな?」
「はりはり漬けですか? そうですね、切り干し大根と言って、天日干しした大根になります」
なんだっけ? 天日干しにすると栄養価が上がるんだっけ?
なんか知らんけど、確か何かしらあった気がする……。
「干してる間に逃げないよう、足は斬り落とすのか?」
「――はい?」
「ラベンドラ、どう考えてもあの形状で干すに決まっとるじゃろ」
「そうですわよ。仕留めて手足と頭葉を落として、細長く切ってから干すんですわ」
「む、確かに。言われてみればそれもそうか」
……大根に足? とも思ったけど、そう言えば向こうの世界だと野菜はマンドラゴラなんだっけ?
あれ? マジャリスさんがふざけていっただけ?
……その時ふと閃いた。このアイデアは四人を驚かせるのに使えるかもしれない。
――画像検索……っと。
「ちなみに現代にもこんなの居ますよ?」
と、四人にスマホの画面を見せる。
見せた画像は、いわゆるセクシー大根みたいな感じで出回る、まるで手足が生えたような大根の画像。
告白します。この時はほんの出来心だったんです。
ただ、これを四人が見た瞬間。
「――――っ!!?」
声にならない声を上げたかと思うと、即座に武器を抜いて臨戦態勢。
慌てる俺に対し、
「カケル!! 今すぐそれを離して耳を塞げ!! 死ぬぞ!!」
と、冗談でも何でもなく鬼気迫る様子で叫んだラベンドラさん達を説得するのに、小一時間掛かりました。
えー、これを見せようと出来心を持った俺、後で職員室。
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