第670話 お客さん凝ってますねぇ~

 ……ふぅ。

 ただいま。

 ちゃんと日本酒と焼酎の追加を買って来ましたわよっと。

 ワインは……鶏しゃぶに合うのかなぁと疑問だったので保留。

 いや、合わない事は無いと思うんだ。

 でも、日本酒や焼酎の相性を越えるかとなると……。


「何買って来たの?」

「有名どころをちょいとね」


 買って来たお酒の紹介。

 下町のナポレオンは前回買って来たから、今回はまた別のを。

 男子なら小学校の時に図書館にあったから一度は手に取った事があるであろう三国志の漫画。

 その中に出てくる、とんでもなく速い馬の名前が付いた焼酎を買って来てみました。

 日本だと、戦国時代の『松風』に並ぶ有名どころじゃない?

 それ以外で有名な馬の名前と言ったら競走馬の名前になりそう。

 でも、軍馬と競走馬って違うしなぁ……。


「それ美味しいの?」

「評価とか見てみたけど、美味しいみたいよ?」


 呂布が乗り、後に関羽雲長が乗ったとされる『赤兎馬』の名を冠したその焼酎は。

 口当たりは柔らかくスッキリ、フルーティな味わいの中に立ち昇る芋焼酎の風味で、どんな料理にも合う……とはサイトから。

 まぁ、鶏しゃぶに合わない事はないでしょ。


「そっちは飲んだことある。美味しいわよね」

「美味いよねぇ」


 そして姉貴の反応した日本酒の方は、青い瓶に入ったスパークリング日本酒。

 アルコール度数が低くて、甘くて飲みやすい。

 飲みきりサイズなのも嬉しい。

 ……正直、絶対に飲兵衛二人には物足りない日本酒だろうけど、こういうのもあるんだよ? と紹介の意味も込めて。

 あと、試食の時に味わった鶏しゃぶの味から想像すると、このスパークリング日本酒と相性いいはずなんだ。

 

「ん……来るわよ」

「りょ」


 という事で、タイミング良く異世界組が紫の魔法陣を通って出現。

 いらっしゃいやし~。


「鶏しゃぶだな、間違いない」

「酒もあるな!」


 ……あれ? アメノサさん、疲れてない?


「アメノサさん、お疲れ?」

「ん、大丈夫」


 とは言うけど……明らかにふらふらしてるんだよなぁ。

 まぁ、大丈夫って言うならそういう事にしておくけど。


「見たところ眼精疲労ですねぇ。こことか、こことかどう?」

「ふぉぉぉぉぉぉおお」


 なお、俺は放っておくと決めたアメノサさんを、姉貴は放ってはおかないようで。

 さっきまで机に突っ伏していたのに、シュバっとアメノサさんの背後に移動し、目の周りをマッサージ。

 目頭やら目じりやら、ツボっぽい所を軽く圧迫して力を抜く、という動作を繰り返し。


「ん、楽になった」


 と表情が戻るアメノサさんに、


「まだまだ。首にもツボとかあるからね」


 続ける気満々の姉貴。

 もうご飯食べるぞ~?


「ちなみにカケル」

「何でしょう?」

「気が早いかもしれんが、シメの予定は?」

「姉貴の希望でカレールーを入れてシメカレーの予定です」

「それはいいな。楽しみだ」


 と言う訳で、出汁を張ったお鍋をテーブルの上のカセットコンロに移しまして。

 これより、鶏しゃぶを開始する宣言をしろ! 神様!!


(鶏しゃぶ開始~~っ!! ……何やらせるんじゃ)

 

 いや、まさか乗ってくれるとは思わなくて……。



「もも肉、やはりもも肉は全てを解決する」

「ハツの癖がとても焼酎に合うんじゃよ」

「結局ハラミ。ハラミにごまだれが最強ですわ!!」

「レバーを柚子胡椒で食べるの、最強かも」

「胸肉のジューシィなしゃぶしゃぶを、梅肉でサッパリ食べるこの満足感」

「ささみのしっとりした旨味がこのスパークリング日本酒に合う」


 みんな個人個人で好きなようにしゃぶしゃぶをやらせてみた。

 結果がこれである。

 喧嘩してないからヨシ!


「日本酒としては物足りないかなーとか思いましたけど、そうでもないです?」

「酒の強さって意味ではそりゃあ物足りねぇが、酒の良さは別に強さだけってわけでもねぇからな」

「炭酸のおかげで爽やかで、日本酒特有の甘みやうま味も感じられる。普段酒を飲まないんであれば、こういった酒の方が美味く感じるじゃろ」


 あらやだ、この飲兵衛たち、懐が深い。

 ちゃんとお酒として評価してくれてるじゃん。


「タレや薬味と肉の組み合わせで、無限に飲めるしな」

「じゃな」


 飲兵衛二人、食べるペースはゆっくりで、色んな肉と薬味、タレの組み合わせを日本酒や焼酎に合わせながら楽しんでる感じ。

 貫禄すら感じるな。


「ごまだれもいいが梅肉もいいな」

「柚子胡椒のピリッとしたアクセントも最高ですわよ?」

「ネギとおろしのサッパリセットも捨てがたい」


 まぁ、お酒よりご飯派も似たような事してるんですけど。

 というか柚子胡椒人気だな。

 すぐに無くなっちゃうじゃん。

 ……まぁ、最寄りの道の駅で瓶詰のやつ買って来てるからまだまだあるんですけどね。

 最寄りと言っても車で小一時間かかる距離ですけれども。


「姉貴は堪能してる?」

「してる。柚子胡椒が最高過ぎて」


 柚子胡椒が片っ端から消える理由姉貴かい。

 どの部位にも柚子胡椒乗せて食べてるじゃん。

 

「久々に飲んだスパークリング日本酒も美味しいし」

「この後にはカレーが待ってるぞ」

「最高だね。やっぱ日本っていいわぁ」


 ……それは俺も同感。

 まぁ、日本から外に出た事無いんだけど。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る