第250話 オールマンドラゴラドライカレー
「カレーというのはチャウダーのようなものではなかったのかしら?」
「基本はそうですけど……これもカレーっていうくくりの中には入ってますね」
出されたドライカレーに目をぱちくりさせながら、リリウムさんが質問。
ぶっちゃけた話、カレー粉やカレールゥを使った料理は全部カレーの大枠に入ると思うんだよ。
スープカレーだの、キーマカレーだの、ドライカレーだのさ。
「美味い……美味いな!!」
とかなんとか言ってたら、早速食べたマジャリスさんのテンションが高い。
こういうテンションの上がり方してるのは、美味しい料理食べた時かスイーツを食べた時だって俺は覚えた。
「む、肉が入ってないからと心配しちょったが、野菜だけのカレーも美味いもんじゃな」
「使われたマンドラゴラそれぞれのうま味がギュッと濃縮されたような料理だ。特にトマトのマンドラゴラの味が強いな」
「言われてみれば確かにですわ! 今までのカレーよりも香りも刺激も強いはずですのに、野菜の甘さがそれの角を取っているみたいですの!!」
「だからと言ってスパイスの香りが弱まっているという事はなく、むしろ野菜の風味がそれらを助けているようにも感じる」
凄いな、大絶賛じゃん。
んじゃあ俺も一口。
あっ、辛!
辛いけど……美味い!!
確かに言う通り、野菜の旨味がギュッと詰まってる感じ。
水分代わりに使ったトマトの味が特に強く、雰囲気的にはハヤシライスみたいなニュアンスがある。
あと、固形コンソメの影響か、かなり西欧寄りの味付けになってる気がするな。
米にはもちろん合うんだけど、これ、そのまま焼いたバゲットとかに乗せて食べても美味いぞ。
「卵の黄身を突き破り、米とカレーとにまぶして食うのが美味い」
「一気にまろやかさが上がりますわね。卵のコクも、とてもカレーとマッチしますわ!」
「むしろ肉が無くていいかもしれんのう。非常に軽く、さっぱりと食えるようじゃ」
「爽やかな辛さとでも言うのだろう。肉の脂が無いおかげで口の中に留まらない。それがいいのだろう」
野菜だけドライカレーも好評みたいだし、良かった良かった。
それはそれとして、このマンドラゴラたち凄いな。
野菜としてのクオリティが普通に高い。
全部が、今まさに旬の採れたて野菜ですよ、みたいな感じ。
マンドラゴラ、恐るべし。
「カケル、提案なのだが」
「なんでしょう?」
「この料理、マヨネーズが合うと思うのだがどうだろう?」
ここでラベンドラさん、悪魔的発想っ……!!
ドライカレーに……? マヨネーズを……?
絶対に美味いやつじゃん! やっちゃえやっちゃえ。
「はいどうぞ」
「すまないな」
というわけで冷蔵庫からマヨネーズを取り出し、手渡しまして。
俺は今から卵の黄身を突き破る作業ですわ。
スプーンで突いて黄身を流し。
流れた跡をスプーンで掬って口の中へ。
う~む。美味ぃ。
これまでのカレーに、さらに追加される卵の黄身のコク。
あと、黄身のおかげで辛さもやんわりマイルドになってる。
黄身のトロッとした舌触りもたまらない。
やはりドライカレーには卵焼きだね。富嶽三十六景にもそう書かれている。
「すまんなカケル、遅くなったわい」
で、巡り巡ってマヨネーズが戻ってきましたよっと。
……結構減ったな。買い足さなきゃ。
「思った通り、マヨネーズが合うな」
「酸味とコク、後はやっぱりこの味ですわね!!」
「カレーと喧嘩するどころか取り入ってこちらに牙を剥いてくる!!」
「こんな美味い牙ならいくらでも剥いて構わんぞい!!」
さぁ、盛り上がって参りました。
元々カレーにマヨを入れたりするし、会社の先輩にはカレーにマヨをかける人だって居ますしお寿司?
カレーとマヨが合うのはもはや自明なんだよなぁ!
というわけで俺もマヨをくるっとね。
全体の三分の一ほどに回しかけ、ドライカレーの具の部分と軽く混ぜましてっと。
ご飯と一緒に掬って頬張る!!
「最高」
野菜にマヨは合うんだし、不味くなりようはずがない!
どころかこれあれだな、この無水ドライカレーに一番最適な調味料説ある。
特にチーズが絡まった時の相性が最高すぎるよ。
「カケル、ちなみにお代わりは……」
「もちろんありますよ」
今日はカレーだし、気合入れてご飯炊いたからね。
多少お代わりされたところでビクともしない。
来いよ異世界人。米の炊飯は十分だ。
「……あ、少々お待ちを」
「?」
さっきはラベンドラさんが悪魔的発想をしたからな。
負けてられない。今度は俺の番だ。
盛った熱々ご飯の上に、バターを乗せて。
溶けきる前に、ご飯全体にパセリを振り振り。
即席バターライス! これ、合うんじゃあねぇの!?
「で、ここにチーズと具を乗せて~」
あとは最初と同じように、チーズ二枚と具を乗せて完成。
お代わりドライカレー(即席バターライス)なり。
「カケル! 私にもそれを!!」
「当然私にもですわ!!」
「わしにも頼むぞい!!」
はいはい、言われなくても全員するつもりでしたよっと。
バターも買い足さなくちゃな。
……そう言えば、バカデカアーモンドッポイミルク、生クリームみたいな性質してたし。
あれからバターとか作れちゃったりしないかな?
あとで聞いてみよ。手持ちに無いかどうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます