第251話 粗茶ですが……

 結論。

 ドライカレーにはバターライスも合う。

 もうね、一口食べてからのテンションの上がり方が凄かった。

 で、気付いた事なんだけど、目玉焼きといい、マヨネーズといい、バターといい。

 コクが追加されるものが劇的に合ってるな、と。

 多分だけど、肉が入ってないから、肉から滲み出る筈だったコクが不足してるんじゃないかなって。

 味はもちろん美味しいし、野菜の旨味はしっかり出てる。

 市販のカレールゥの美味しさも言わずもがな。

 そこに、何か足して美味しくなるもの。それがコクだったんだろうなって。


「なる程ねぇ」


 ちなみに俺は、バターライス食べてテンションが上がった四人を見て、残ったご飯に合う量のバターをちょびっと足した。

 結果はもちろん美味しい。

 やっぱ、人間は肉やら卵やら乳製品を食ってなんぼだよ。

 ヴィーガンの人たちにはぶちぎれられそうだけど。


「カレーにも色々な形態があるとは驚きだった」

「しっかり差別化出来ているのも凄い事ですわよね」

「見た目だけじゃなく、味わいにも違いが出るのだ。正真正銘別の料理なのだろう」

「カレーにもまだまだ種類がありそうじゃな」


 なんて言ってますけども?

 もちろんありますよ? 代表的なのだとスープカレーだな。

 北海道旅行で初めて食べた時は感動した。

 大げさでも何でもなく、新しいカレーだぁ! ってなった。

 ……北海道、また行きたいな。何食っても美味かったもん。

 刺身はもちろん、乳製品とか、ジンギスカンも最高だった。

 ホタテのバター焼きとか、また食べたいなぁ……。

 あとじゃがバターね。何の気なしに食べたけど、まずじゃがいもが美味かったもん。

 ――いずれ行こ。


「ふぅ。ご馳走さまじゃわい」

「マンドラゴラだけでここまで満足感のある食事も久しぶりですわ」

「ほう。過去にもあったのか」

「知りたい所だ。……あのリリウムがマンドラゴラだけの食事で満足するなど――どんな料理だった?」


 あの、とか言われてますよリリウムさん。

 普段食事にどんな要求してるんですか全く……。

 いやまぁ、肉ばっか要求してるのが容易に想像できますけども。


「マンドラゴラのパイ包み蒸し……とでも言いましょうか? しっかりと蒸されたホクホクのマンドラゴラに、しっとりもっちりした生地のパイがとても美味しかったんですの」


 あ、普通に美味そう。

 なんだろう、普通に美味しそうなのやめてもらっていいですか?


「ソースは?」

「味わった事の無いものでしたわ。そうですわねぇ……マヨネーズに似ていたような?」


 そりゃ野菜にはマヨネーズよな。

 ……胡麻ドレッシングとかも美味しそうだけど。


「ふむ」

「そんな事より! カケル! 今日のデザートは!?」


 で、そんなやり取りをそんな事呼ばわりして、マジャリスさんが割って入って来た。

 

「今日のデザートはきんつばですよ」


 と、詳しい説明をせず、料理の名前だけを伝えて冷蔵庫へ。

 そして取り出したきんつばをテーブルに置けば。

 ……四人とも凝視。

 ふふふ、原材料がマンドラゴラとは露にも思うまい。


「カケル、これは?」

「きんつばと言って、あんこやきんとんに生地を纏わせて焼いたものですね」


 あんこやきんとんが通じるかは分かんないけど、きっと翻訳魔法さんが何とかしてくれるでしょ。


「……なるほど。それで……カケルは何を?」

「緑茶を淹れてます。きんつばにはお茶が合いますからね」


 ま、先に味見をした感想なんですけども。

 やっぱり和菓子の甘さは緑茶と一緒に味わってこそよ。

 緑茶のさっぱりとした苦みと渋みが和菓子の甘さを打ち消し、次に食べる和菓子の甘さを引き立てるんだから。


「茶、か」

「そう言えば、当たり前になってしまっていますけど、私たちの世界ではお茶は高級品ですものね」

「一度口にしたことはあるが……正直こちらの世界の茶の方が何倍も美味い」

「比べるのが間違いだ。そもそも誰でも買えるほどに茶が流通している世界だぞ? 茶自体のクオリティも高いに決まっている」


 なんて話が盛り上がっておりますねぇ。

 高いお茶なんて一杯あるしね。

 ちなみに今回のお茶は何の変哲もないスーパーで売ってる緑茶ですわよ。

 和菓子には、変に高いお茶を一緒に出すより、こうして平凡なお茶と一緒に楽しんだ方がいいと俺は思う。

 高いお茶は、漬物とかと一緒に頂きたい派。

 回らないお寿司屋さんのお茶も、確か粗茶だよね。

 魚の風味にお茶の風味が勝っちゃうからとかって理由で。


「というわけでお茶、お待たせしました」

「待ってました!」

「それではいただきますわね!!」

「色が違うが材料は二種類あるという事か?」

「です。黄色が強いのがカボチャのきんつばで、淡い方がサツマイモのきんつばになります」

「濃い方じゃ!!」


 と、それぞれ思い思いのきんつばに手を伸ばす四人。

 ガブロさんとマジャリスさんがカボチャのきんつばで、リリウムさんとラベンドラさんがサツマイモのきんつばね。

 俺は……そうだな。サツマイモの方からいただきましょう。


「皮は固いのかと思ったらそうでもないな」

「プニプニと柔らかいですわ」

「いただきます!!」

「いただくぞーい!」


 しっかり観察するラベンドラさんとリリウムさんを置いて、早々にきんつばに嚙り付くマジャリスさんとガブロさん。

 俺もいただきますか。

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