第4話 異世界食材を試食&調理
「もちろん、待っていますわよね」
「突然獲物が目の前で消えたんだ、諦める訳ねぇよな?」
「生憎さっきまでの逃げてた俺達とは違うぞ? 何せ、しっかりと魔力が回復してるからな」
「美味いもんも食ったし、貴様なんぞ一捻りにしてくれるわい」
魔法陣をくぐった先、元居た世界で四人を待っていたのは……サイクロプスだった。
*
ん~……。
はぁ、今何時……?
――げっ!? もう昼かよ!!
いや、確かに寝るの遅かったけどさぁ。
ちょっと寝すぎたな、マズイマズイ。
ベッドから飛び起きて歯を磨き。
食パン二枚をトースタに入れてセット。
持ってくれよ俺の身体! 火力倍プッシュ!! 着火!!
パンが焼ける間にカップスープとインスタントのコーヒーを用意してっと。
今日はコーンポタージュにしよう。
「えぇと、貰ったジャムは――」
焼けたパンに塗るためのジャムを探す。
このジャム、何とご近所さんから貰ったお手製のやつなんだよね。
あんずのジャムなんだけど、味が濃厚でさっぱりしてるのが特徴。
口に合うか分からないと最初は小さな瓶で貰ったんだけど、あまりに美味しくって大きい瓶で貰っちゃった。
何かお礼をしようとしたら、
「いいのいいの。臥龍岡さんところにはお世話になったからね」
って言われちゃた。
なんでも、俺のばあちゃんが戦後、近所のみんなの世話をしたとかなんとか。
返しきれない恩があるとかで、ばあちゃんが亡くなった後も、こうして何かと俺に色々してくれる。
断っても押し付けられるから、今ではこうしてお言葉に甘えさせてもらってるよ。
焼けたパンにジャムをたっぷりと塗り、コーヒーとスープを楽しんで。
というか、最近のカップスープ美味いよね。割とバカに出来ない味になってると思う。
洗濯機を回し、洗濯が終わるまでの間に買い物と行きましょう。
豚の角煮を作る予定だったからその材料を……。
――待てよ? 昨日貰った肉、使えるんじゃね?
見た目豚肉っぽかったよな? ちょっと確認しよう。
と、冷蔵庫の野菜室を開けると……。
「でっか……」
昨日見たはずなのに、その肉の大きさに圧倒される。
いや、だってさぁ? それなりに大きいはずの冷蔵庫の野菜室に、折りたたまれるように入ってるんだよ? ビビるでしょ。そんなの。
「重いし……」
よく昨日はこれを一人でラップ巻きしたもんだ。
持ち上げるだけでも一苦労なのに。
手渡された時は裸だったとはいえ、残業で疲れた体でよくもまぁやり遂げたよ。
昨日の自分、グッジョブ。
「やっぱ見た目は豚肉っぽいな。……塩茹でして食べてみるか」
見た目だけで豚肉なのか判断つかないし、とりあえず試食してみることに。
得体のしれない肉ではあるんだけど、あの四人が食べられない肉を渡すとは思えないし。
何より、異世界の肉というものに興味が無いと言えば嘘になる。
薄く小さく切って、塩茹でしてっと……。
「……。う~ん……豚肉っちゃあ豚肉か?」
食べてみた感想だけど、普通に肉。
別段格別に美味しいわけでも、臭みが強いとかもない。
マジで普通に肉。
「けど少し固いな。嚙み切れない程じゃないけど」
ただ、ちょっと歯ごたえがいいというか、ゴリゴリしてる感じはする。
まぁ、火を通した後に冷めて固くなった豚肉を想像してもらえると近いかもしれない。
「でもこれ位なら使えるだろ」
という事でこの肉を豚肉の代わりに使う事に決定。
……いや、だって、使わないと腐っちゃって勿体ないし。
肉の値段もバカにならないし、そこ節約できるのは大きいし。
なんて、誰に言うわけでもない言い訳を心の中でしながら、肉以外の必要な材料を揃えにスーパーへ向かう。
あと、豚肉を使う料理の材料も買い込んだ。
しばらくは『ブタノヨウナナニカ肉』を使う事になるだろうしね。
*
何故かある寸胴鍋に水をたっぷり入れます。
指三本分の幅で切り落とした『ブタノヨウナナニカ肉』を二本ほど鍋に入れ、ネギの青い所を五本分ぶち込みます。
ショウガをスライスし、これも鍋にダイレクトイン。
後は火にかけ、2~3時間煮込めば――下茹での終わりです。
アクが出るのでちゃんと取りましょう。
ちなみに『ブタノヨウナナニカ肉』は切り落とすだけじゃあまりにも大きいから、さらにそこから半分に切った。
それでも多分、一本が三十センチはあるから、十分デカい。
これをひたすら煮込む。
というわけでその間はやることやりましょ。
鍋からあまり離れないように、洗濯物を干したり、昨日最初は土足で上がっていた四人の付けた汚れを掃除したり。
カーペットが泥だらけだったからね。泣きながら掃除したよ。
だって汚した本人はもう居ないし。
これ、一人暮らしの辛い所ね?
たまに鍋を気にしつつ、やらなきゃいけない家事をこなし。
忘れないように米の準備も。
たまに炊き忘れちゃうし、早いうちにやっとこう。
*
もうじき下茹で終わりかなという頃合いで、鍋を用意し。
そこに、甘口醤油、醤油と同じ量の料理酒、砂糖をぶち込んで、肉のゆで上がりを待ち。
ゆで上がった肉を隣の鍋にシュゥゥゥゥゥゥゥーーーッ!! 超! エキサイティン!!
後は肉が浸るかさになるまで水を加え、ここからまた煮込む。
と言っても下茹でみたいに長い時間掛かるわけじゃないし、ここまでくればもう楽勝。
好きな音楽をスマホで流し、イヤホンで聞きながら鼻歌交じりに下茹でしていた鍋の後片付け。
あ、そうだ。ゆで卵作って一緒に煮込んじゃお。
味付け煮卵と角煮とか居酒屋人気メニューでしょ。
そうと決まれば善は急げ。
ゆで卵の用意をしつつ、出来上がった角煮を盛り付ける皿を用意していたら。
……何故か、昨日見たことがある様な紫色の魔法陣が居間に展開。
思わず呆気に取られていると、そこから。
――昨日の四人が、当たり前に出現したのだった。
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