第173話 天ぷらパーティ略して天パ

「つまり私たちがすることは……」

「好きな食材を油で揚げる事、ですわね!?」

「そうなりますね」


 天ぷらの説明を終えたら、見るからにテンション上がっててさ。

 みんな思い思いの食材に手を伸ばしてたよ。


「やはり肉じゃ! 肉は全てを解決する!!」


 と言いながらガブロさんが手を伸ばしたのは、ブタノヨウナナニカ。

 俺も調べて知ったんだけど豚天なるものがあるらしいね?

 美味しそうだなって事で即採用。


「絶対に美味しいこと間違いなしですわ!!」


 リリウムさんはエビダトオモワレルモノだな。

 前の手巻き寿司でもそうだったけど、リリウムさん海鮮系好きだよね。

 エビの天ぷらとか天ぷら界の王様だからな。

 美味いぞ~。


「私はこれが気になる」


 ラベンドラさんが手を伸ばしたのは舞茸。

 いい目してんねサボテンね。

 一説によれば、美味しくて見つけたら舞うほど喜ぶからその名が付いたとさえ言われるキノコだ。

 ちなみにキノコの中で一番好き。

 二番目はシメジ。舞茸とシメジ、シイタケをぶち込んだ炊き込みご飯が最高なんじゃ。


「純粋にこれらが気になる」


 そしてマジャリスさんはカイルイフシギキノコの柄と笠の二刀流。

 牡蠣天も間違いないだろうし、ホタテ天は最高に美味いって枕草子にも書いてある。

 というかどの食材選んでも正解しかないからな。

 良きかな良きかな。


「こうして揚がるまで待つ時間も、期待を大きくさせるという点で正解だな」

「自分で調理している、というのが大きいですわ。もちろん下ごしらえなどの大変な部分はカケルに一任でしたけど……」

「毎日こうして手間をかけて料理を作ってくれとると思うと、二人には感謝しかないわい」

「私にはいいがカケルには十分に感謝する事だ」


 なんて揚げながら言ってくるもんだから照れちゃったや。

 普段よりも少し作る量が多くなっただけだし、何なら最近はラベンドラさんが作ってくれるからね。

 俺はほんとに食材の切り出しやら、下ごしらえしかしてないわけで。

 料理をして他人に感謝される事なんかあんまりなかったから、こう……背中がむず痒くなる。

 あ、ちなみに俺はトリッポイオニクをファーストチョイス。

 とり天がね……食べたくなっちゃって。


「あ、忘れてた。ガブロさん」

「む、なんじゃい?」


 揚がるのを、今か今かと待ちわびるガブロさんに。

 俺は、下ごしらえ中に気付いたことを相談。


「もうすぐあの卵も使い切っちゃうんですけど――」

「追加か!? 任せておけ!」

「違います!! 殻の処理についてなんですけど」


 危うくマジャリスさんから追加の卵を寄越されるところだった。

 ……あっても困らないのはそうなんだけど、出来ればもう少しこの世界の卵に近い大きさのやつをですね?


「む、そうじゃな。引き取ろう」

「助かります。……ちなみにあの殻って何に使うんですか?」


 防具……には使えないだろうしなぁ。

 俺が道具使えば割れる程度の固さだし。

 ――それでも、道具を使わないと割れない固さではあるんだけども。


「主な活用法は肥料じゃな」

「あ、普通」


 意外!! それは普通!!

 ……待てよ? 異世界での肥料って……。


「ちなみに何を育てる肥料なんですか?」

「? マンドラゴラに決まっとるじゃろ」


 あ、やっぱり。

 ……てことはこの世界で肥料にして野菜育てたらワンチャンマンドラゴラが育ってた可能性が?

 怖ぇって。どんな罠だよ。


「音が変わった。ガブロの以外は大丈夫だ」

「な、何故じゃ!?」

「『――』の肉だぞ? 火が通っていないのに食うというのであれば止めはしないが?」

「むむむ……」


 何がむむむだ。

 というわけでガブロさんとおしゃべりしてたら天ぷらが揚がったらしい。

 じゃあ、ガブロさんを尻目にいただきますか。


「塩、カレー塩、抹茶塩、つゆ、大根おろし、柚子胡椒と揃ってますので、お好きなのをどうぞ」


 というわけで天ぷらに付けるそれぞれをみんなの前へ。


「カレー塩……だと!?」


 読んで字のごとく、塩とカレー粉を混ぜた、ただそれだけ。

 ただ、これが天ぷらに合うんですわ。

 個人的にはゲソ天と最高の相性。


「お茶と塩を混ぜるのか……」


 ラベンドラさんの反応は抹茶塩に対してだな。

 抹茶の風味と塩の塩味が最高で、こっちは魚の天ぷらに合う。

 エビ天にも合うな。というかなんにでも合う。


「つゆは……とても香りが良くて美味しいですわ」


 天ぷらには天つゆでしょって事でこちらも用意しました。

 薄めるだけのやつだけどね。

 大根おろしを入れて食べるとそれだけで最高よ。


「私はまずはつゆでいただきますわ」

「俺はカレー塩だ。気になる」

「抹茶塩も興味深い」

「まだかのー」


 というわけで一人置いてけぼりのガブロさんを放置し、みんなそれぞれ調味料に天ぷらをちょんちょん。

 ちなみに俺は柚子胡椒をチョイス。

 とり天と言ったらこれですわ。

 いざ……実食。


「……美味い!!」

「カレーの風味が最高だ!!」

「天つゆの味と『――』の味の調和が完璧ですの!!」


 …………うめぇ。

 トリッポイオニクってこんな美味かったっけ?

 あー……語彙力溶ける~。

 ただただに美味い。


「も、もうよいじゃろ!」

「そうだな。大丈夫だろう」


 ここでようやくガブロさんが合流。

 揚げたての豚天を天つゆにじゅっと浸し。

 豪快にバクリ!

 その反応は……?


「おっほー---!!」


 特大のおほ声でした。

 口の中火傷してればいいのに。

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