第210話 初めましてレシピ

 ……そういや昨日、うまきを作ってなかったな。

 ただなぁ、うまきだけじゃあメインを張れる料理じゃないし、他にもいくつか料理が欲しい。

 というわけで教えて! グルグル先生!!


ざく?」


 調べてたらマジで聞いた事無いレシピ出てきた。

 ……三重県の郷土料理なのか。

 ほへー。

 鰻とキュウリの酢の物的な料理なのね、なるほど。

 これ、いいじゃん。

 これとうまき、後は……白焼きにしてウマイウナギマガイ堪能定食、とでもいきましょうか。

 汁物はすまし汁にしよう。

 どうも鰻となると、みそ汁よりお吸い物とかすまし汁になっちゃうんだよな。

 まぁ、しゃーなし。


「んじゃあ買い物して帰るか」


 ちなみに仕事は大変捗りました。

 やっぱり朝から美味いもん食うと効率が違うね。

 ……最近美味いもんばっかり食べられてるけど、あの四人が来なくなったら果たして俺は過去のシリアルとか食べてた頃に戻れるのだろうか……?

 ――お願いだから来なくなるときは事前に教えてくれ。

 出来れば末永く来てくれ。

 俺の食生活の為に……。



 というわけで料理の下準備。

 鰻ざくって料理は、冷たい酢の物と焼いた鰻の温度差を楽しむものでもあるらしいから、酢の物だけ先に作って冷蔵庫で冷やすなり。

 というわけでキュウリをスライサーにて輪切りかつ薄切りに。

 たっぷり二本も薄切りにしたら、そこに塩。

 力強くせず、全体に馴染ませる程度に揉みこみまして。

 出てきた水は捨てるっと。

 そしたらそこにワカメ、千切り生姜を加えまして。

 米酢、砂糖、めんつゆを入れて全体を混ぜる。

 ……塩昆布も欲しいな、追加で。


「チョイと味見」


 味を確認するためにヒョイと味見。

 ……うむ、よかろう。


「んじゃあこいつは冷蔵庫に入れてっと」


 続いてすまし汁。

 と言ってもこれについてはほぼ出来てるんだよね。

 そう、ひつまぶしに使ったお出汁。

 あれに具材を入れるだけで完成しちゃうのだ。

 ――と、思っていたのか?

 量がね……足りないのよ。

 俺一人分なら辛うじてあるくらいなので、全然足りん。

 ……と言うわけで、鰹節を削って、その間に昆布は水で戻して。

 なんて作業をもう一度行ってお出汁を作ることに。

 前回はラベンドラさん達に任せてたけど、やっぱキツイわ。

 今後も何かと理由つけてあの人たちにやってもらお。

 ちなみにすまし汁の具にはエノキとワカメ。

 そしてダシを取った後の昆布をぶち込みました。

 かきたま汁なんかにしても良かったかもね? とか思ったけど、うまきを作るなら卵で被っちゃうから微妙だったわ。

 というわけで後は四人が来てからの工程だけなので、もうちょっとしか時間無いけどチルタイム!!

 


 って、ちょっと待った!!

 何ご飯の準備だけして満足してんだ俺!!

 デザート!! 作って!! 無いやろがい!!

 あぶねぇ……マジャリスさんやリリウムさんから笑顔が消える所だった。

 にしても買い物中もすっかり頭から飛んでたからろくな買い物してないんだよな。

 何とか冷蔵庫にあるもので作らねば……。


「……そう言えば、あの人らってコーヒー飲んだことあるんだろうか?」


 ふと思った。

 なんかこう、異世界系の創作だとコーヒーが苦くて不味い、みたいなリアクションしてる場面多い気がする。

 あの人らに限ってそんな反応しないだろと思う反面、そういう反応を期待しちゃう自分も居る。


「卵はある、じゃあ、コーヒー牛乳プリンでも作るか」


 プリンは前に作った事もあるけれど、今回のメインはプリンじゃないし。

 ズヴァリ! 異世界人にコーヒーは受け入れられるのか、という事。

 これで、


「なんだ、コーヒーか」


 みたいな反応されたらどうしてくれようか。

 とりあえず、バカデカアーモンドッポイミルクをフライパンに入れて熱しまして。

 熱し終わったら、そこにインスタントコーヒーと砂糖をポイポイ。

 ほいだらボウルに卵を割り入れ、コーヒー牛乳をちょっと入れてはかき混ぜ、ちょっと入れてはかき混ぜを繰り返してプリン液の完成。

 ……練乳余ってるし、結構甘めにしちゃうか。

 完成したプリン液に練乳を絞って更にかき混ぜ、改めて完成。

 こいつを容器に注ぎ、湯せん焼きしまして。

 粗熱を取ったら冷蔵庫にドン!!

 デザート完成じゃおらぁっ!!


「さぁて、今度こそチルタイム……」


 なんて言いながら、人をダメにするクッションにダイブした瞬間。

 視界の端に、紫色の魔法陣がコンバンワ。

 あ、もうそんな時間です?


「邪魔するぞ」

「あら? リラックス中でしたか?」

「あ、いえ。大丈夫です」

「疲れているなら料理の指示さえ貰えればそのままの体勢でも構わんぞ?」

「いえいえ、大丈夫です」


 なんか心配かけたみたいになっちゃった。

 大丈夫ですぜ。


「ふむ、状態を確認させてもらったが、やや疲労している以外は健康そのものだな」

「マジャリス? 相手の了承も無しに『鑑定』するのはマナーが悪いですわよ?」

「え? 俺『鑑定』されました?」


 異世界転移ものとかで猛威を振るう『鑑定』スキル。

 一体マジャリスさんには俺のどんな情報が見られちゃったんだろう……。


「すまない、カケル。マジャリスにはキツク言っておく」

「あ、いえいえ。マジで気にしないでください」

「じゃがのう……」

「マジャリスさんが見て俺に異常が無いって事は、自覚がない病気とかも無いって事でしょう? それが分かるだけで、かなりの金額の節約になるんですから」


 人間ドックとか、健康診断とか、精密検査とかなるとバカにならん費用かかるし。

 それを見るだけで済ませて貰えたと考えれば、まぁ悪い気はしないかな。


「そうか、すまないな」

「マジで大丈夫ですって。それじゃ、料理の方始めちゃいましょう」


 というわけで、まだ謝ってくるラベンドラさんを連れてキッチンへ。

 後ろで、


「俺らの世界の食材を食べたせいか、新陳代謝や疲労回復にバフが掛かっていたぞ?」

「黙っておきましょう。知らぬが仏、ですわ」


 なんかエルフ二人が小さく喋ってたけど、まぁ多分無視して大丈夫でしょ。

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