第283話 トキシラズディッシュ

 スライスしたトキシラズは何と言うか……。

 肉汁というか、脂というか、噛んだ瞬間に溢れる汁がほぼ肉。

 ちなみに肉と魚の脂の違いは融点で、魚の脂の方が融点が低い。

 つまりどういうことかって言うと、口内の温度だけで溶けちゃうんだなこれが。

 トーストした時にパンに染み込んだ脂と合わせて、もうジュワッと。

 そこにマヨの酸味とコク、旨味。

 チーズのコク、塩味と絶妙な混ざり方をしてすっごい美味かった。

 あと、焼き上がりにパセリを振りかけたのも良かったね。

 香草isゴッド。


「試しに言ってみたけど美味いもんだね」

「ていうか、このレシピはほぼ回転寿司にある炙りサーモンマヨとかだしね」

「あー、なんか既視感あると思ったらそれか」

「味は正直比じゃないけどね。旨味濃いし、あと脂がべたつかずにサラサラで、甘い」

「分かる。美味しいサーモンの身って甘く感じるけど、これも甘さを感じるもん」


 と、姉弟仲良くトキシラズトーストを堪能。

 コーヒーを姉貴に淹れさせて、朝からゆったりとしたひと時を。


「あ、そうそう。私、明日また出国するから」

「また急な……」

「海外で出来た友人に呼びだされちゃってさ」

「姉貴ってコミュ力バカ高いよな」

「努力値まで振ってカンストさせてますから」

「最初から個体値も種族値も高ぇんだよなぁ」


 姉貴のそういう所だけは見習いてぇな。

 俺はコミュ力そこまで高く無いから……。

 コミュ力の範囲に異世界人は含まれますか?

 含まれるならそこそこ高い判定されちゃうかもな。


「てことでお土産買っていこうと思うんだけど、何がいいと思う?」

「日本らしいもの?」

「だね」


 日本らしいもののお土産ねぇ……。

 そういや、日本の文房具はどれもこれもクオリティ高くて人気とか聞いたことある様な。


「文房具とかは?」

「あー、いいね。他には?」


 まだ所望するか……。


「……確か、ソフトキャンディがめちゃめちゃ美味いって評価されてなかったっけ?」

「あー、なんかあったね。あとグミも評価高いんだっけ?」

「確かそのはず」

「お菓子系もいいかも。あとは?」

「純粋に酒とか?」


 てな感じで俺の知識をフル動員し、姉貴が買うお土産候補を挙げていき。

 最終的に、ググりました、はい。

 で、これまたイクラの醤油漬けと同じく即日配達で頼んでた。

 多分注文受けた配達員は思うんだろうな――業者か? って。


「ちなみに夜は海鮮親子丼だけど、昼は何か食べたいのある? 残り少ない家だし、ある程度のリクエストなら聞くけど……」

「んー……無い。お任せー」

「実は一番面倒くさい注文しやがったな……」


 と、いうわけで。

 昼食は俺の独断で決めちまおう。

 えーっと冷蔵庫を確認して……。


「……クリームパスタが出来るな」


 いい感じに具材あった。

 ただ、ちょっと買い足しときたい気もする。


「買い物行ってくるけど欲しいものは?」

「一等が当たる宝くじ」

「俺に全通り買えと申すか」


 姉貴に欲しいもの聞いたけど特に無いそうなので、こちらも俺の思うものだけ買って来た。

 途中、


「あ、そういえば今日のデザートどうしようか……」


 思い出して材料を見て回ったんだけど……ふと、目にとまったものが。

 それは羊羹。昨日のパンであんこも抹茶も味わったからさ。

 だったら羊羹は受けるんじゃね? って事で。

 折角ならいい羊羹を味わわせてあげたいので、スーパーの買い物の後にデパートへ。

 普段なら絶対に買わないであろう羊羹を、味の違う奴を三本ほど購入。

 オーソドックスな小豆、抹茶に加えて、俺が食べたかった蜂蜜の羊羹を購入。

 どうせデパートに来たならって事で、お茶もいいものを買っちゃった。

 買ってみたのは狭山茶。

 香り静岡色は宇治、味は狭山でとどめ刺すって唄があるくらいだし、思えば狭山茶って飲んだ事無いなって事で。

 ……ちなみに一番高いのは流石に手が出なかったので、そこそこの物を買って来ました。

 いやぁ……お茶にあれだけ出す勇気は俺には無い。

 ってことで帰宅。


「おかー」

「ただまー」


 姉貴が何してるかと思ったら、また並べて宝石を整理してんの。

 この前もしてなかったっけ?


「宝石の見え方って結構日によるんだよね……。ブレない方がもちろんいいんだけど、それでもこうして小まめに確認しとかないと不安でさ」


 ダソウデス。

 俺には分からん。全部一緒……とまでは言わんけど、例えば今姉貴が比べてる二個の宝石の違いは俺には分からん。


「もう飯作っていい?」

「いいよー」


 姉貴の許可を貰い調理開始。

 玉ねぎ(マンドラゴラ)切ってー、ベーコン切ってー、シメジも切ってー。

 鍋に入れて炒めてートキシラズも炒めてー。

 パスタ麺を茹で始めてー、生クリーム入れて―、塩コショウとブラックペッパーで味付けてー。

 茹で上がった麺を、ソース作ってたフライパンに入れてー麺と絡めてー。

 お皿に高さを出しつつ盛り付けて、フライパンに残ったソースと具材を乗せまして。

 別途でスライスしたトキシラズをトッピングし、こちら、デパートで買って来たいくらにござい。

 このいくらを、高さを出した麺の一番上にスプーンで乗せれば完成。

 トキシラズのクリームパスタ、イクラを添えて。


「出来たわぞ~」

「今行くよ、来るよ」


 姉貴も宝石とのにらめっこを中断し、テーブルへ。

 それでは、


「「いただきます」」

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