第284話 休日限定ワインランチ
「……なにこれ?」
トキシラズクリームパスタを食べた姉貴の反応がこちらになります。
なんかどっかで見た覚えがあるなぁ、この感じ。
「美味い?」
まぁ、分かり切ってるんですけどね?
一応聞いとかなくちゃかなって。
「ちょっと黙って」
お? 喧嘩か?
「……うん、美味しい」
「何故に一旦黙らせたので……」
「ごめん、味に浸りたかったから」
……怒っていいよな?
んじゃあ俺も食べるか……。
「……」
「翔?」
「しゃらっぷ」
「殴るよ?」
暴力反対。
でもまぁ、姉貴が俺を黙らせた理由分かるわ。
これ凄いな……。
まぁまずトキシラズ、これがべらぼうに美味い。
あと生のトキシラズさ、結構歯ごたえがある。
しっかりとコリコリしてる感じの歯ごたえで、それでいて脂はサッパリ。
あと香りが凄い。生臭さとかじゃなく、柑橘系の香りがする。
こう……凄く爽やかな香り。
その爽やかな香りがクリーム系のソースと最高に合いましてね?
後から来るベーコンの塩味だったり、キノコの旨味。
バターのコクにブラックペッパーのアクセント。
それ全部がトキシラズの味を引き立ててる感じ。
どんな食材合わせても、絶対頂点に君臨してる系食材だな、トキシラズ。
「パスタは普通の乾麵よね?」
「だね。生パスタ……特にフィットチーネは相性良さそう」
「ペンネでも全然合うでしょ」
そこからはもうほぼ無言。
だって、クリームパスタ食べるのに必死で姉貴になんて構ってられなかったから。
……でも、
「あ、そうだ。チーズ入れてなかったけど入れたらより美味いかも」
って言ったら睨まれた。
怖いって。
黙って粉チーズを渡し、凄く不機嫌な顔でパスタにふりかけて。
一口食べたら笑顔に変化。
忙しいやっちゃな。
まぁ、当然俺も粉チーズふりかけますけど?
「やっぱりチーズは偉大だね」
一気に味が引き締まるし、こう、味の重厚さって言うの?
厚みが増すよね、味に。
「翔、ワイングラス取って」
「まだ昼だが?」
「飲まないの?」
「飲む」
というわけで悪い姉貴の口車に乗り、昼間からワインを合わせる事に。
「それもドイツワイン?」
「いや? コンビニで買って来た」
「……美味いの?」
「失礼な。最近のコンビニで買えるワインもバカに出来ないんだぞ」
てなわけで姉貴がコンビニで買ったとか言うワインを試飲。
ほう、白ワインですか。
「ちなみに炭酸入ってるからね」
「ほいほい」
確かに泡立ってるね。
……白というか、リンゴ果汁みたいな色味。
べっ甲程濃くは無いね。
香りは……。
「あんまりブドウっぽくない?」
「分かる、どっちかというと柑橘系に近い感じ」
んで、色と香りを楽しんだので、いよいよお味……。
「めちゃめちゃ飲みやすい!?」
「かなりスッキリした甘さ。それに、酸味とか全然強く無いね」
「はちみつに近いような甘さだけど、それが炭酸でサッと流れていく感じ」
「アルコール度数7%だし、そこまで強くないのがいいかも」
なんだろう、こんな飲みやすいワインあったんだ、くらいの衝撃だった。
銘柄覚えとこ。
……マルティーニのアスティスプマンテね。
めっちゃ美味い。
「クリームパスタに合わないわけないじゃん」
「俺も俺も」
試飲が終わったら早速パスタと合わせる姉貴を追って、俺も。
口の中で咀嚼したパスタを追うようにワインを流せば……。
「うっま」
「やっぱ合うわね」
姉弟二人して顔を見合わせたよ。
クリームパスタの全要素が、この発泡ワインを引き立ててた。
食事に甘いお酒は……ってのはちょっとあったけど、そんなもん関係なかったね。
あと、トキシラズの生の身と相性最高。
トキシラズの脂の甘さが、より甘い白ワインの甘さで上書きされて。
香りも、白ワインの香りを引き立てるいわゆる呼び水状態。
むしろトキシラズがこのワインを引き立てるための食材まである。
ていうかこのワインがコンビニで買えるのか。
見直したわ。
「チーズ、クリーム、ベーコンにシメジ。全部白ワインに合う」
「香りの強いブラックペッパーだけが少しだけ……って感じだね」
「それでも美味しいのには変わらないからね。いやぁ、このワイン美味すぃ」
で、また無言でパスタとワインを交互に口に入れる無限ループへ。
美味かったなぁ……。
ちょっと、もう少しトキシラズの身貰っとこうかな。
こう、冷凍保存してちょこちょこ食卓に並べたい。
「クリームパスタ、大成功だったね」
「ハチャメチャに美味しかった。これはイタリアとかフランスで出て来てもおかしくない料理」
「ちなみにこのワインは?」
「イタリア産」
「じゃあイタリアで」
何がじゃあなのか分かんないけどね。
多分酔ってますわ、私。
アルコール度数7%でも俺には致命傷よ。
「姉貴ー」
「んー?」
「起きたら洗い物するから仮眠してくるー」
「りょー」
「荷物来たら受け取りよろー」
「あーい」
よし、後は任せた。
気持ち良く酔いが回って来たし、一旦仮眠。
ぐへへ、休みの日にしか出来ないムーヴをかましてやるぜ。
起きたら、洗い物して、ご飯炊いて……。
鮭いくら丼にすると言っても、一部ヅケや炙りにもしたいし……。
なんて、晩御飯の事を考えながら。
俺は、眠りの世界へと落ちて行った。
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