第152話 かじると20回復

「補正値は特にありませんわね」

「でも素で攻撃力結構高いぞい」

「加えて軽く、この硬さ。――ゴブリンは余裕だろうな」

「それにしても、カケルが贈り物と言うから何かと思えば、まさか武器だったとはな」


 さて問題です。

 この四人の会話、果たして何の事を言っているのでしょうか。

 正解は……、


「実はこれ、削る前の鰹節でして……」


 そう、鰹節です。

 鰹節を武器とか言っちゃってるんですこの人ら。

 いや確かに? 軽いし硬いし割とちょうどいい大きさだし?

 ゲームタイトルによっては武器として存在するし、何なら齧って空腹度を回復できたりするわけで。

 広義的に武器と認められなくもない……のか?

 もしかして俺が知らないだけで、サスペンスとかで凶器として使われてたりするのかな?

 こう削って先端を鋭利にした鰹節で、胸を一突き! とか。

 証拠隠滅は洗って全部削るとか? でも削るの結構大変だったぞ?


「これが……鰹節?」

「鰹節って、あのたこ焼きに乗せてた薄いヒラヒラの事ですわよね?」

「ですです。元々は鰹って魚で、煮たり燻製にしたりして加工したものが鰹節なんですよ」

「元が……魚?」

「はい」


 以上、鰹節の説明終わり。

 これ以上は俺の知識に無いから動画サイトで鰹節が出来るまで、みたいな解説動画を見せる事とする。

 ここからは普通にラベンドラさんと料理していくし。


「というわけで、色々と作っていきましょう。まずはご飯ですかね」


 ラベンドラさんに説明しつつ、炊飯器に洗った米、先程ニンテイタコカイナを茹でた黄金だし、醤油、日本酒、みりんを入れて、そこに刻んだ具材たちを投下。

 人参、ゴボウ、生姜、ニンテイタコカイナを投下した後に軽くかき混ぜ、その上から鰹節と刻んだ昆布をぶち込んだらスイッチオン!

 これでタコ飯はヨシと。


「そう言えば、こちらでは米はそうして自動で炊いているな」

「ですね。土鍋とかで炊こうと思えば出来なくもないですけど、便利ですし」


 土鍋と言えば、みんな知ってるあの歌、始めチョロチョロ中パッパって奴。

 あれの続き知ってる? ジュウジュウ吹いたら火を止めて、赤子泣いても蓋取るな、らしいよ?

 ばあちゃんがたまに思い出したように歌ってたわ。

 以上、一富士二鷹三茄子の続き、四扇、五煙草、六座頭、並に現代では不要な知識でした。


「炊き方にコツとかあるのか?」

「コツ……どうでしょう? あとで調べてみます?」


 どうやら、異世界では順調に稲の栽培が広がっているらしい。

 で、市場に出ている米を買って食べてみたらしいんだけど、こっちの米と雲泥の差だったってさ。

 もちろん品種の違いもあるんだろうけど、炊き加減もまだ納得いってないらしく、こうして俺にアドバイスを求めた、と。

 あとで土鍋で炊くコツ的な動画でも見せときますか。


「というか、稲を見つけてもう食用になってるんですか?」

「? ああ、ノームという農作業特化の様な種族が居てな。新しい植物やらが発見されると、成長促進剤やらなんやらを駆使して短期間で栽培方法などを確立するんだ」

「はえ~、凄く便利っすね」

「植物栽培専用ダンジョンすら持っていますもの。作る時に携わりましたけど、結構骨が折れましたわ」


 うん、なんかツッコみたくなるような語句があったけどスルーしよう。

 ダンジョンって作れるんですね。


「で、煮物なんですけど、下処理は終わってるんで、材料と一緒に煮るだけですね」


 続いて時間が掛かるのは煮物。

 というわけで鍋に黄金だし、みりん、酒、醤油を入れたら本日はザラメ。

 大体の魚介系の煮物には私、ザラメを使う主義ですの。

 なんだろうね、なんか合うんだよな。

 で、軽く味見をし、濃すぎない事を確認したら大根とニンテイタコカイナをぶち込んで。

 あとは蓋をして、じっくりと煮込んでいく~。


「ちなみに下処理はぬめり取り以外に何かしたのか?」

「大根で叩くと柔らかくなるらしいので、大根で叩きました」

「……大根で?」

「はい」


 まぁ、理由知らんとそら不思議だわなぁ。

 大根に入ってる成分が、筋肉をほぐすんだっけか?

 大体そんな感じ。


「で、最後にカクタコですね」

「卵比率の多いたこ焼きとのことだが……あのプレートは使わないのか」

「だからカクタコなんです。俺が最初にやってみせるんで、見ててください」


 と、お面のソースさんが公式に乗せてるカクタコのレシピ通りに作りますわよ。

 たこ焼き粉を水と卵に溶いて、玉子焼き器に流し入れ。

 ネギ、天かす、紅しょうが、ニンテイタコカイナ投入。

 そのまま周囲が固まるまで焼きまして、卵焼きの要領で生地を半分に折り返し。

 そのまま加熱。ひっくり返してまた加熱。

 で、完成っと。


「こんな感じです」

「さらっと面倒な手順を見せるのは私に対する挑戦だな?」


 ? いや、オムレツとかに比べて卵焼きはまだマシでしょうよ。

 しかも今回はたこ焼き粉が繋ぎで入ってて破れにくいんだから。


「慣れるとそんなに難しくも面倒でもありませんから」


 と言ってラベンドラさんにカクタコを挑戦させること四回。

 普通に一回目から奇麗に作ってやんの。

 なんだ、面白くない。


「まぁ! 美味しそうですわね!!」


 というわけでインスタントのお吸い物も作りましたし?

 煮物もいい感じに出来上がりましたし?

 ご飯も炊けたという事で、晩御飯の完成!!

 ニンテイタコカイナ尽くし和食御膳とでも言いましょうか。

 それじゃあ、それぞれを盛り付けていただきますをしましょうね~。

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