第81話 ん? 間違えたかな~?

 というわけでカニグラタンコロッケバーガーの完成です。

 ……いや、作り方変わらんし。

 俵型じゃなく、厚切りハムカツみたいな大きさ、形のグラタンコロッケ作って、千切りキャベツと一緒にバンズに乗っけてソースかけただけ。

 それ挟めば完成。ね? 簡単でしょ?

 ただし材料の確保には目を瞑る事とする。

 クリームよりもカニの身の方が多いとか普通は作れないからね。


「これはまた……凄い量だな」


 出来上がったカニグラコロバーガーの量を見て驚くラベンドラさんだけど、頼んだのそちらですからね?

 途中でバンズが足りなくなって、食パンだったり、バゲットに挟んだりしてるのもあるし。

 にしても、数日で使う予定だったバンズが一日ですっかりなくなっちゃったや。

 明日も買って来なきゃだな。

 ……今日より多い量を。


「それじゃ、お代はバッチリいただきました」

「お納めしました」


 俺が作ってる間は姉貴がリリウムさん達とお値段交渉。

 俺が今まで作った分と、これからしばらく作る分と。

 どれくらいが相場かって言うのを、宝石を挟んで色々と協議してたよ。

 俺は宝石に明るくないし、姉貴の反応を見ての感想になるんだけど、かなり満足できる取引だったらしい。

 顔が物語ってるよ。顔が。


「あ、愚弟」


 我慢ガマン。

 明日は仕返しの朝ご飯をご用意しますからね。


「リリウムさん達の支払いで潤ったから、生活費渡しとくわ」

「? いいよ別に。その分美味しいものを送ってくれたらいいんだから」

「私への食費込みだっての。いいから取っとけ」


 なんて言って、封筒を押し付けてきて。

 ため息をつきながら受け取り、思う。

 リリウムさんの支払いで潤ったって、まだ売れてないだろ? と。

 皮算用が過ぎんか?


「それじゃあ、頂いていくぞ」

「あ、はい。どうぞ」

「それじゃ、馳走になったわい」

「ふふ、また明日もよろしくお願いしますね」

「勉強になった。また頼む」


 というわけで四人がお帰りです。

 いつも通りに紫の魔法陣を潜って去っていきましたとさ。


「……あの魔法陣の向こうってどんな世界が広がっているんだろうね?」

「どうした? 急に」

「いや、気になっただけ。どんな世界なんだろうなーって」


 なんて、姉貴が異世界に興味を持ったみたいだけど……。

 いや、俺らじゃ絶対に生きていけない環境だと思うぞ?


「一つ目で腕が四本あるサイクロプスが斧とか槌とか槍とか剣を振り回す世界だぞ?」

「……それ本当にサイクロプス?」

「ついでに体毛も濃いらしい」

「毛深いの!? なんか……イメージと360°違うんだけど」

「だよな。……いやいや、戻ってる、戻ってる。一周回ってイメージ通りだからそれ」


 なんてやり取りをしながら、


「そういや明日の朝ご飯の希望は?」

「特にない。おまかせ~」

「ういうい」


 言質をしっかりといただきまして。

 あれだよ? 別に他意とかないよ? いやー、朝から果物を摂取するっていうのもいいもんだよね、うん。

 というわけで朝ごはんっぽいメニュー……具体的にはベーコンエッグと余ったキャベツとかのサラダ、カップスープにトーストをご用意。

 カップスープはコーンポタージュ。

 あとはまぁ、バナナ味の果物も添えて準備っと。

 ……あ、いっけねー。バナナ味の果物の傍にレモン汁出しっぱなしだったわー。

 ついでに醤油やポン酢も片付けてないわー。

 まぁ、目玉焼きに使うかもだし放っておいても大丈夫でしょ、うん。

 他に使うようなものもないしね。

 ……よもや果物なんかにかけないだろうし、へーきへーき。



『絶対に許さん』


 仕事中、姉から届いた連絡がこれです。

 一体何がどうしたというんだろう? 僕にはさっぱり心当たりがこれっポッチも無いなー。

 というわけで既読無視し、仕事を終えて買い物して帰宅。

 さて、姉貴の機嫌はっと……。


「ただいまー」

「…………おかえり」


 ん? 思ってた反応と違うな?

 てっきりこう、胸ぐら掴まれるとでも思ったんだけども。


「テンション低いね、どしたん?」

「牡蠣」

「ん?」

「牡蠣が食べたい」


 あ、これ多分俺への怒りより牡蠣への欲求の方が勝ってるだけか。

 分かる。とても分かる。

 不味くはないんだよね、あの牡蠣みたいな果物。

 むしろ美味しいと思う。

 ただ、ビジュアルのせいでガッカリ感が凄いんだ。

 日本一のジェットコースターでもここまで落ちないんじゃないかってくらい。


「連絡なかったし、買って来てないよ?」

「明日届くように注文したから……。明日までの我慢……」


 なお、姉貴はその落差に耐えきれなかった模様。

 判断が早い。


「ちなみにどれくらい買ったの?」

「多分3㎏」

「……多くない?」

「食べきれなかったらグラタンとかにして……」

「――俺のは?」

「別で3㎏頼んでる」

「絶対多いって!!」


 いやいや、頼み過ぎでしょ。

 家で食う分だよ?

 二人で3㎏でも多いんじゃねぇか?


「冗談……二人で3㎏」

「だよな……。でも牡蠣グラタンか……絶対に美味いだろうな」

「他だとどんなメニューにする?」

「ん~……クラムチャウダーとかに入れたら絶対に美味いだろうね。カニもあるし、それと合わせて豪華クラムチャウダーとかどう?」

「じゅるり」


 まぁ、不味い飯の話はしてないからな。

 そうなるか。


「ちなみに今日のご飯は?」

「カニクリームパスタ」


 そして、今晩のメニューを告げた瞬間、鳴り響く姉貴の腹。

 へへ、身体は正直だな。


「すぐに食べたい」


 口も正直でしたとさ。


「例に漏れずあの四人来てからだけどね」

「むぅ……我慢する」

「よろしく」

「……そういえばさ、あんたもあの牡蠣みたいなやつ食べたの?」


 料理の準備をしていると、姉貴が興味深そうに尋ねてきて。


「食べたよ。一つは塩茹でにしたら噴き出しそうになった」

「あー……。脳のイメージと乖離してたからか」

「姉貴もでしょ?」

「まぁね。……私、醤油も垂らしてたから……」

「ああ……。ご愁傷様」


 どうやら姉貴は、牡蠣には醤油派だったらしい。

 ちなみに俺はレモン汁オンリー派。

 まぁ、だから俺は被害は最小限だったわけだけども。


「で? あれどれくらい貰ったの?」

「俺は四個貰ってたよ?」

「……残りもちゃんと食べたの?」

「そりゃ食べたよ。申し訳なかったし。……クリームと一緒にパンに挟むと意外といけたな」

「あ、美味しそう。――見た目最悪過ぎん?」

「言うな。マジで言うな。見た目だけはマジでどうしようもなかったんだから」


 なんて、あの牡蠣みたいな見た目の果物の話で盛り上がってたら、四人が登場。

 そこから、ご飯の調理に移りましたわよ。

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