第602話 また変なの持ち込む……
「お好み焼きは過去にやったな」
「ですです。まぁ、アレよりはだいぶ柔らかいというか、緩いというか……」
晩御飯をラベンドラさんに説明したら、超即理解。
助かるーって事でホットプレートを用意しようとしたら……。
「待て、カケル」
マジャリスさんからの制止。
一体どうしたんです? デザートは食事の後ですよ?
「俺たちが普段使いしているスキレットで作らないか?」
「……ほぅ?」
スキレットってアレだよね。小さいフライパン。
シーズニングとかやって育てる感じのイメージなんだけど……。
エルフが使ってるって点が評価ポイント高いよね。
一般的に流通しているスキレットより遥かに年季が入ってるでしょ。
n年育てたスキレットとかで売りに出したら、ワンチャン欲しがるシェフの方とか居そう。
「マジャリスにしては良いアイデアではないか?」
「だろう? ……ん? しては、と言うのは余計だろ」
「となるとこの場所では狭くないか? 庭でどうだ?」
「それもそうだな」
……おっと?
俺が知ってるスキレットではない可能性が出て来たな?
普段から食事をとっている場所が狭い?
つまりかなりデカいって事?
「ん? 今日は庭で食うのか?」
「ついてく、ついてく」
と言う訳で全員で庭に出まして……。
スキレット……召喚!!
「……これです?」
「そうだ。もちろん手入れは完璧。いつでも使える」
「はぁ……」
えーっと……。
一応だけど、俺が思ってるスキレットのサイズそのままだった。
なんて言うんだろうな、居酒屋とかで鉄板焼きを頼んだ時のサイズ、みたいな。
つまるところ小さなフライパンなわけで。
で、俺の反応が微妙な理由は……。
「材質って木ですよね?」
木製なんだよね。
このスキレット。
燃えんか? 炭にならんか?
「木は木だがかなり熱耐性が高くてな。ちょっとやそっとの温度では燃えんのだ」
「具体的には?」
「鉄が溶けるよりも高い温度でも燃えない」
「……本当に木です?」
当たり前に不思議素材出て来た……。
てことはこの木材で家屋を作れば火事にならないじゃん。
いや、なるかもだけど最悪家だけは燃え残る。
轟々と燃える炎の中、微動だにせずに原形をとどめる家なんて、この日本では死ぬほど需要があるぞ……。
「表面に塗った樹脂のおかげで焦げ付きもしない。お好み焼きを作るにはぴったりだろう?」
シーズニングも完璧か。
流石はエルフの道具。
「ですね」
「人数分あるから自分で出来るものは自分で。出来ない奴、面倒なやつは私に寄越せ。作ってやる」
「よろしく」
「頼ンだぜ」
魔法によって空中に浮遊した木製スキレットが手元へきて。
来たばっかりのソレを即座にラベンドラさんに返すアメノサ『無頼』組。
じゃあ、早速作っていきますか。
*
「具材はこんなものか?」
「メインは山芋ですからね。足します?」
「こちらが出そう。……海鮮系がいい」
「イカとか海老とかあると最高です」
「うむ」
と言う訳で調理開始。
まずはみんなお好み焼きと言う事で、すりおろした山芋にお好み焼き粉を入れ、キャベツを入れてかき混ぜまして。
スキレットに豚肉を敷き、片面焼けたら裏返して生地を注ぎ。
生地の半面が焼けたら、異世界のエビを生地に乗せてひっくり返す。
焼ける間にソースやマヨネーズ、鰹節に青のりを振りかけて完成。
ちなみに俺もラベンドラさんに任せて作って貰ってる。
……だってさぁ! 木製スキレット、空中に浮かせて調理するんだもん。
取っ手も長く無いのに、火のすぐ近くまで行く必要があるし。
じゃあもう任せちゃおうってなったよね。
ちなみに唯一ガブロさんだけ、素手で炎の中に突っ込んで調理してる。
「別に熱く無いぞい?」
とか言ってたけど、それ出来るのドワーフだからだろ、多分。
「焼けたぞ」
「匂いがズルい」
「見た目もやべぇだろ」
「本日は焼酎ハイボールのみ受け付けております」
「いる!!」
「もちろん!!」
まぁ、ぶっちゃけ全員分作ってるんですけどね。
そう言えばさ、レモン汁とジンジャーエールをお酒と混ぜて作るカクテルを○○バックって言うじゃん?
で、焼酎とか日本酒でそれを作るとするじゃん?
こう、日本酒とかを武士道としてとらえた時、武士道バック……つまりはアンブッシュってこと?
「炭酸水だけでいい」
「さいで」
アホな事考えてたら、アメノサさんからアルコール抜きの注文が入った。
ほいほい。
「箸で切った感触から違うな」
「ふわっふわですわね!」
と言う事で……山芋マンドラゴラたっぷりのお好み焼き……いただきます!!
*
「ソクサルム氏~」
「? どうされましたアエロスさん」
王城。
普段多忙なソクサルムは、もうすぐ開催される第4回大会、カクテル大会の準備にてんてこ舞い。
各種材料の調達や事前の根回し。周辺国重鎮への採点者としての招致に、各種警備の配置。
それこそ猫の手……よりは異世界人の手も借りたいような状況に追加される、ギルド新聞部門長兼『夢幻泡影』コーナー担当の『カウダトゥス・アエロス』。
もちろんソクサルムとしては広報担当としてその実力は買っているし、影響力も知っている。
だが今は、それよりも……また仕事が増える、と思わずにはいられない。
「蒸留ギルドからの報告っすけど、また新しく蒸留酒が出来たみたいっす」
「……そうですか」
「ただ、量の確保が難しく、一般流通するのはかなり先の見通しとの事で、一応の報告っすがそれらは今回大会には使用不可、と考えているみたいっす」
「その対応で構いません。……一応試飲だけは済ませたいので、少量だけ送っていただくよう伝えておいてください」
アエロスには広報担当以外にも、こうして各部署との連絡係も担って貰っている。
これは、アエロスだけが持つ『夢幻泡影』に関するレシピなどのデータ。
これを聞き出そうとする行為に牽制をかけるためであり。
ソクサルムの与えた仕事を邪魔したらどうなるか、これを理解している者たちへ、絶大な効果を発揮した。
ゆえに、こうして王城にて働いている訳であるが。
「サンプル分は持って来たっす。あとは、数人で楽しむ分が大会当日には確保出来てる筈っすから、それらを当日会場に持って来るようにも手配しといたっす」
「感謝します。手間が省けました」
最初はただ、運よく『夢幻泡影』と出会って成り上がっただけかと思っていたが。
「意外と気が利くんですよねぇ。こちらの思いを汲んで、先読みした行動をとってくれる」
報告を終え、去っていく後ろ姿にそう呟くソクサルム。
心底、自分と敵対していなかった事を神に感謝する。
そして、
「どちらかと言うと、戦えた方が私としては揚がるんですけれどねぇ」
政敵にならない事を、僅かばかり残念がるのだった。
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