第328話 神様「わしだって飲みたい……じゃが……」
「何となくじゃが、この料理は普段の料理とはちと違うな」
「お、分かります? この料理……パエリアって言うんですけど、元々は俺の国の料理じゃないんですよ」
スペイン料理だよね。
米も使うし魚介も使う、スペインって、どことなく日本と似たような料理があったりする。
噂ではオムライスを日本で見た時に衝撃を受けるスペイン人もいるらしいよ?
どうしてスペイン人はこの料理を思いつかなかったんだ、って。
卵もトマトも米もあるのにって。
あと色味もスペインカラーだしね。
「にしては随分と手際がよさそうだったが?」
「調べたらレシピが出てきますからね。その通りに作るだけです」
情報社会最高。
手軽に欲しい情報が出てくる世の中は使い方さえ間違えなければやっぱり便利よ。
……ただ、中身が全く無いサイトとか、最終的に宣伝とか広告しかないサイトは正直滅びていい。
いかがでしたか? じゃないんだよ。
「では……早速」
そんな話をしていたら、我慢出来なくなったらしいリリウムさんがそう切り出し。
「「いただきます」」
続く言葉を、皆で合唱。
さてさて、取り分けていきますか。
「カケル、焦げ付いているぞ?」
「わざとです。そのおこげが美味しいんですよ」
炊き込みご飯とかさ、後はビビンバなんかもおこげを作りたくなるよね。
石焼きビビンバとか、最後の方は器に押し付けて無理やりおこげ作るもん。
「む! ふわりと香る香草に魚介の旨味が濃くてたまらんぞい!!」
「繊細かつ複雑な味が、とても濃厚なスープとなってお米に吸収されている感じですわ」
「レモンの酸味がまた合う」
「『――』の旨味も最高だ!!」
と、それぞれ感想を口にしまして。
俺もパクリ。
――おっほー!
うめぇ!! このパエリアうめぇ!!
まずは何と言っても米よ! 野菜や魚介類からの全旨味を吸収して膨らんでやがる。
米一粒一粒が最高に美味い。
そこに香ばしさとサフランの香りね。最の高ですわよ。
「カケルの言う通り、焦げた部分が美味いな」
「味が濃く、しかも香ばしい香りがプラスされて極上ですわね」
「ワインが欲しい……白ワインだ……」
「同感じゃ」
こっちを見るなこっちを。
買って来てないよ、今日は。
「無いですね」
「あちらに戻ったら再現して出す。だから我慢しろ」
「信じるぞ!!?」
「すぐにじゃぞ!?」
こっわ。
でもラベンドラさんがこんなハッキリ言うって事は、恐らくもう再現の目途は立ってるんだろうな。
ラベンドラさんは出来るエルフだし。
「この料理も、米と食材の相性を知らしめられる一品なのでは?」
「うむ。肉と米、魚介と米、どちらの相性も王に確認させれば、米の貢献がより大きくなるだろうな」
「残念なのは酒造ギルドか。新しいワインの作り方は教えたものの、肝心のワインが出来上がるのは随分と先じゃ」
「唯一時間跳躍の魔法が対象に出来ないんだ、しょうがないだろう」
……多分、今度の昇格会での話なんだろうな。
そもそも、神の取り分云々で液体だけ対象外なんだよな、時間跳躍魔法。
アイスワインと貴腐ワイン、出来るのは当分先か。
「あ、うめ」
何の気なしに口に含んだシャコナリケリがめちゃめちゃ美味しかった。
そりゃあ、不味いはず無いんだけど。
こう、舌の奥にガツンと来る旨味と、噛んだ瞬間の肉汁の暴力よ。
米が吸い込んだ旨味とは少し違う別の魚介の旨味。
ていうかこのパエリアあれだな。シャコナリケリと一緒に口に含むとほぼおじやだな。
シャコナリケリから溢れる肉汁の量が半端じゃない。
「後は……『――』の幼体で何か料理を作りたいが……」
「普通にヅケ丼でいいのでは?」
『――』の幼体ってコシャコナリケリでしょ?
コシャコナリケリは甘えびみたいなもんでしょ?
ならヅケ丼でいいんじゃね?
「あまり米に頼るのもな。……出来れば、生のまま食べる料理がいいんだが……」
まぁ、確かに米ありきじゃないとダメって思われたらダメか。
んでも生食ねぇ……。
あー、カンジャンセウとか?
ヅケと言ってしまえばそうだけど、普通のヅケダレよりも使う材料が多いし。
「一つこれは? と思う料理がありますよ」
「是非教えてくれ!」
身を乗り出して言うのはいいんだけどねラベンドラさん。
早めにパエリア食べないと、もうフライパン一つは無くなっちゃってるよ?
大丈夫?
「これにチーズとか乗せても美味しそうですね」
ここで一つ、みんなの動きを止める魔法の言葉。
面白いように全員食べる手を止めたよね。
「カケル、チーズを」
「(コクコク)」
「多めで頼む」
「悪魔的発想じゃわい」
問題。一瞬だけ手を止めて食べる動きを再開したエルフは誰ウムでしょう?
正解はリリウムさんでした~。
知ってた。
「ちょっと待っててください。チーズ乗せて温めなおすんで」
「レモンもたっぷり絞ってくれ」
「同意!」
「あの美味さにチーズが上乗せされるんじゃろ? 本当にとんでもない味になるぞ?」
落ち着けガブロさん。
待て、しかして希望せよ。
「あ、丁度いいや。さっき言ってた幼体? の生食レシピの動画流しておきますね」
ここで流すは動画投稿者でも超有名な部類に入る、某魚捌き系投稿者。
その人がかなりの数のカンジャンケジャンだのカンジャンセウだの投稿してるからね。
一番投稿が新しいカンジャンセウ作る動画をセットして。
見せてる間にパエリア温めチーズをオン。
レモンを絞って完成……した瞬間四人の胃袋に消えていきましたとさ。
チーズのコクと塩味がとてもとても合っていて、ビールも合うような味になってました。
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