第329話 スター〇ックス的な
パエリアを奇麗に完食し、今はみんなでお茶を飲んでの団らんタイム。
まぁ、カンジャンセウを作ってる動画を流しながら、だけど。
「漬けるタレにここまで入れるのか」
「再現出来そうか?」
「幸いに必要な材料は全て翻訳されている。……集めきれない事も無いだろうし、そのくらい希少な材料の方が昇格会には持って来いだろう」
ほへー、再現出来るんや。
果物類ならまだしも、煮干しとか昆布とか、向こうの世界には無さそうなのも多いけどな。
……もしかしてだけど、煮干しの役割をする魔物の果実とかあるんだろうか?
煮たら出汁が取れる的な。
――居ないと言えないのが異世界クオリティなんだよなぁ。
「ところでカケル、今日のデザートなんだが?」
「今から用意しますね」
「作っていないのか!?」
何故に今から作るって言ってそんなに驚かれる?
今すぐに食べた過ぎるでしょこのマジャリスさんは。
「ちなみに何を作る予定だ?」
「ウィンナーコーヒーの話を前にしたじゃないですか」
「あったな」
「生クリーム入りのコーヒーなのでしたかしら?」
「それの発展というか、派生というか、亜種的なものを作ろうと思います」
ふと思い出したんだよね。
数年前にちょっと流行った、あのコーヒー。
韓国発祥で、ダルゴナコーヒーって言うんだっけ?
コーヒーをクリーム状にしてミルクに乗せた飲み物。
あれがデザートにいいんじゃないかと思ってね。
「まずはコーヒーと砂糖を同量をボウルに入れまして」
ちなみにデザートにいいって思った理由はこれね。
なんとこのダルゴナコーヒー、コーヒーと砂糖と水の比率が1:1:1なのである。
ちなみにコーヒーはインスタントのやつを使用。
「ここに同量の水を加えてハンドミキサーで泡立てます」
というわけでここからはコーヒークリームを作る作業へ。
コーヒーって分かった時点でマジャリスさんが苦い顔してたけど、ちゃんと甘いから我慢しなさい。
追加トッピングもあるからさ。
「しっかりと泡立つのだな……」
「配合を間違えなければ大丈夫みたいです。逆に砂糖とかが足りないと泡立ちが悪くなっちゃうみたいで」
料理の基本、レシピは分量や入れる順番をしっかり守る。
これマジで大事ね。
「後はグラスに牛乳を注ぎ、その上にスプーンでクリームを乗せて完成です」
「泡立たせさえすれば手軽に出来そうだな」
ですね。
作って思ったけど意外に簡単だなって。
……まさか、これで俺が作るダルゴナコーヒーが終わったと思っているのか?
何を勘違いしているんだ? まだ俺のトッピングフェイズは終了してないぜ!!
ドロー!! チョコレートソース!! ドロー!! キャラメルソース!!
ドロー!! カラフルチョコチップ! ドロー!! スライスアーモンド!
「トッピングも用意したので、お好きなトッピングをどうぞ」
「カケル、説明を」
「チョコソースとキャラメルソースはそのままで、このカラフルなのは小さなチョコです。で、こっちが薄切りにしたナッツですね。香ばしくて美味しいです」
「全部マシマシ!!」
「わしはアーモンドだけ乗せるかの」
「チョコソースとカラフルチョコをお願いしますわ」
「キャラメルソースとアーモンドだな」
マジャリスさんは想定通りの全部乗せっと。
俺はチョコソースだけをトッピングしますわよ。
「一応お代わりも可能なので」
「お代わり!!」
「飲み終わったら言ってください」
「……ケチ」
誰かこの五歳児相当のエルフ止めろ。
一口も口付ける前からおかわり宣言しやがるんだぜ?
しかもコーヒーってだけで苦い顔してた癖に。
「ちなみに飲み方は?」
「まずはコーヒーのクリーム部分だけで味わって、途中から下のミルクとかき混ぜてカフェラテ感覚で飲むみたいです」
何を隠そう俺も初めてのダルゴナコーヒーだし。
聞きかじった知識だけどね。
「甘いけど苦い……」
「とてもクリーミーで濃厚ですわね」
「アーモンドの香ばしさがありがたいわい」
「スッと頭に入ってくるような苦さと甘さだ。かなり飲みやすい」
で、俺の言葉通り最初は上に乗せたコーヒークリーム部分を楽しむ四人。
マジャリスさんとか、チョコソースとキャラメルソースかけたのに苦いとか言ってやがる。
いやまぁ、確かに口の中に苦みは広がるけどさ。
それを上回る甘さじゃないか? これ。
「ミルクと合わせて飲むのも美味いな」
「わしもちとソースを試してみるか」
「チョコソースが混ざり合うと最高に美味しいのですわ!」
「キャラメルの風味も美味い。ソースの有る無しや混ぜる飲み方などで自分好みにカスタマイズ出来るのが素晴らしいな」
ガブロさんがキャラメルソースを少々追加してる横で感想を言ってるエルフ二人。
……残ったエルフ? マジャリスさんならチョコとキャラメルのかかったクリームをスプーンで沈めてミルクにしゃぶしゃぶして満足そうに食べてるよ?
絶対その食べ方考慮されてないと思うんだけど……。
あと、普通ならクリームがミルクに溶けるからね?
状態保存の魔法とか使ってそう。自分が楽しむためだけに。
「これなら、材料さえ手に入れば誰でも手軽に飲めるようになるかもしれんな」
「材料は持っているのでしょう? 植物であるならば農業ギルドにぶん投げなさいな」
「昇格会後に、今後の発展を願ってと言えば向こうも断らんじゃろ」
……うん、なんだろう。
こう、異世界でも某コーヒーチェーンみたく長々とした呪文みたいな注文をしてる様子を幻視してさ。
あり得そうな未来だなぁ……とか思っちゃったよね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます