第585話 よだれ止まんねぇわ

 ドラゴンの翼の付け根肉……ほぼ牛タン。

 味わい的に微妙な違いはあるものの、歯ごたえとか旨味とかは牛タンにかなり近かった。

 それにまろやかな塩味が星晶塩から移ってて、噛めば噛むほど肉汁が溢れ。

 もうね、白米が止まらないよね。

 肉の旨味ってここまでご飯が進むんだね。


「スッキリしててうめぇ」

「ていうか、星晶塩の上で焼くって贅沢過ぎ……」

「手に入ったもんは使わんと損じゃろ」

「しかもこうして美味い料理に関わるならなおさらだ」

「それは……そう」


 焼き上がった翼の付け根肉に七味をパッパ。

 これが本当に美味い。


「次はこれじゃな」

「真っ白ですね?」

「ドラゴンの皮と肉の間にある脂肪の部分じゃな」

「……そんな部分あるの?」

「脂肪筋と呼んでいる。この脂肪筋で物理的なダメージを分散させているんだ」

「ドラゴンの生態とか珍し過ぎるから、後で詳しい情報は欲しいかも」

「解体の手順まで合わせて渡そう」

「別に秘匿でも何でもない技術じゃしな」

「……ほぼほぼ前人未踏な技術なンだがな?」


 脂肪筋、楽しみだな。

 脂肪なんだから脂っぽいんだろうけど、筋だし……。

 何ならドラゴンなんて不思議生物のソレなんだから一体どんな味なのか。

 ワクワクが止まらないね。


「ほれ、焼けた」

「レモン汁を垂らして食べるといい」

「あ、はい」


 言われるがままにレモン汁を垂らしてパクリ。

 ……ほほう!?


「結構歯ごたえありますね!」

「軟骨に似ている」

「ですです」


 ドラゴンの脂肪筋、軟骨の食感にそっくり。

 でも、脂肪と付くだけあって噛んだ瞬間のジュワッと出てくる脂が凄い。

 とはいえ脂は例に漏れずくどく無いし、むしろ甘さがあってスルスルと入ってく。

 レモンの酸味がいい味出してるわ。

 

「不思議な食感」

「酒のツマミに最適だなこりゃあ」

「ドラゴン一匹で色んな部位が味わえるの、凄くお得感ありますわね!」

「匹で数えるな匹で」

「結構苦労しただろうが……」

「でも苦労に見合う美味しさではありますわよ?」


 急募:ドラゴンの数え方。

 まぁでも、普通に考えたら頭か? いやでも牛とかと同列で数えるのはドラゴンに対して申し訳ないというか……。


「どれくらいのサイズのドラゴンだったの?」

「三翼だな」

「割と大きめでしたものね」


 ……知らん単位出て来た。

 これ以上日本語の単位を複雑化するのやめて貰っていいですか?

 ただでさえ知らん数え方があるんだから。

 ……こいのぼりとかね。


「三翼……。よく被害が出てなかったね?」

「まぁ、ダンジョンに囚われてはいたからな」

「むしろ地上で暴れてくれてた方が探す手間省けたンだがな」

「下手すりゃ国が消し飛びますわよ?」


 そんな存在を狩ってくる五人が怖いよぅ。

 てことは何? この人ら、国消し飛ばせる力持ってるの?

 ……持ってそうだな。

 そもそも転移魔法とかある時点で、国の王都の土地をはるか上空に転移させたら終わりだし。

 やっぱり転移魔法って化け物強いのでは?


「次は何を焼く?」

「翼膜にしよう焼き上がりに大根おろしを乗せてな」

「ほいほい」


 ……次は翼膜か。

 ワイバーン串の時は鳥皮レベル5みたいな美味しさだったんだよな。

 果たしてその味やいかに?


「むほほほほ」


 美味いって。

 何もかも全部が。

 ワイバーン串の時の翼膜は表面パリッと中もっちりな感じだったけど、ドラゴンの翼膜はパリカリ系だね。

 表面パリッとはそのままに、中もカリっとサクサクした食感。

 肉汁は表面を歯が破った時にしか出ないけど、サクサク部分の旨味が凄いな。

 鳥皮チップスみたいな感じ。

 香ばしさもあって、そこに乗せられた大根おろしのさっぱり感が加わり最強に見える。

 ドラゴン肉の翼膜以外でこんな事やったら皮がびちゃびちゃになって素材の味が死ぬ。

 あと、ビールとの相性がエグイ。

 サクサクサクサクと食感を楽しんだ後に流し込むビールの爽快感よ。

 これはちょっと美味し過ぎますねぇ。


「焼いた翼膜を砕いてふりかけにしたいな」

「悪魔的発想過ぎる……」


 やりてぇ……。

 絶対美味しいもん、やりてぇ……。

 焼く時に一味を振りかけてさ。

 辛みの刺激で戻らなくして、焼いた後に砕いて白米の上。

 卵黄とか落としちゃったりして……。

 最高だろそんなの。


「カケル、そろそろタレも使おう」

「あ、はい」


 言われてタレの準備。

 今回のタレは指示通りに甘めに作ったタレ。

 焼き鳥屋のタレより若干甘いのを想像して貰えれば多分しっくりくる。


「まずは頬肉。タレと七味をたっぷりと付けて」


 いただきます。

 ……だからぁっ!!

 美味いんだって!!


「美味すぎるっ!!」

「もっと食わせろ!!」

「おかわり!」

「串ごと食えるな」


 食うな、串ごとは。

 でも気持ちはわかる。

 美味し過ぎて全部丸ごと食べたくなる。

 ……ゴメン、やっぱ分かんねぇわ。


「肉の旨味とタレの甘さ、星晶塩の塩味に七味の風味。全部が三位一体となって満足感が凄い」


 こうかはばつぐんだ!!

 ……? 今四つ無かった?

 三位一体じゃないのかよ、何をハブった!? 言え!


「タレだけだと甘すぎる。七味だけだと風味が勝る。全部が揃って高め合わなければこの味にならない……」

「カケル、ご飯お代わり」

「俺も」

「私もお願いしますわ」

「ビールも追加で頼むぞい」

「すぐ持って来ますね」


 ……まだまだ焼きドラゴンは終わりません。

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