第452話 やめてくれよ……

「火は通っているようだな」

「ですね」


 ぶっちゃけ、本当にレンジで一分で加熱終わるか? とは思ったんよ。

 ただ、そこは流石に神様からの天啓。

 ちゃんとしっかり色が変わるまで加熱されてた。


「私達ですら未経験のバハムート肉……」

「早速実食としよう……」

「いただきま~す」


 と言う訳で一人一切れ。

 指でつまんでそれぞれ口へ……。


「……ん、おいひ」

「美味い……な」

「ただ、こう……何と言うか」

「別にこれまでの食材と比べて、美味さが飛びぬけとる、と言う訳でもないのぅ」


 まず率直な感想言うね?

 普通に赤身肉。

 いや、ちょっと違うな。

 まず牛とは違う。牛肉って特有の匂いが少しあるじゃん?

 あれがまずない。あと、牛肉より少し歯ごたえあるかも。

 和牛とかの霜降りと比べて、噛んでも明らかに塊として口に残る。

 で、噛む度に肉の甘みと旨味が滲み出てくる感じ。

 ただ、旨味より甘みのが強いかもしれない。

 あとは……そうだな……。

 生で食べられるなら、生で食べたいかも。

 肉寿司とか絶対に合うね。

 肉汁が甘いから、酢飯の酸味と相性いいだろうし……。


「これはこれで美味いですけどね」

「だな。……どうだ? 何かレシピは思いつくか?」


 最初に見たクジラ肉の印象とは少し違ったな。

 と言っても、俺は塩クジラしか食べた事無いけど。


「大体なんにでもなりそうですけどねぇ。スープにチャーハンとか……ピザに乗せてもいいかもしれません」


 土台の味はしっかりしてて美味いから、どう調理しても美味しそうではある。

 ただ、煮こんだり、焼いたりで加熱出来ないのがネックかなぁ。

 先にあらかじめ電子レンジにぶち込むしかないし。


「ふむ……そうか」

「ちなみになんですけど、ラベンドラさん達は向こうの世界でマグマにぶち込む調理を?」

「やりはしたい。だが、今居る場所とは少し離れていてな」

「まずは天啓通り、深海を探索したいですし、火山地帯に向かうのは少し後ですわね」

「じゃあ、何食分かバハムート肉を加熱したのを持って帰って、向こうで色んなレシピを試してみるというのは?」

「……それが持ち帰り料理の代わり、という事か」

「ですです」


 俺としては電子レンジ加熱と、神様の言うマグマでの調理とかでどれくらい差が出るかを試したかったんだけど。

 『夢幻泡影』は、深海探索をしばらくするって事だし……。

 だったら、せめて美味しかったレシピとかを話し合いたいなぁって。

 こっちはこっちで良さそうなレシピをいくつか作っては見るけども。

 

「ふむ。いいだろう」

「どれくらい加熱します?」

「そうだな……」


 俺の提案を了承し、バハムート肉の塊を見つめたラベンドラさんは。

 スッ、と。

 比喩でも何でもない、見えない速度で何かを行って。

 ごろり、とバハムート肉を切断。

 恐ろしく早い何か。俺には全く見えなかったね。


「これだけ頼む」

「分かりました」


 と言う訳で塊肉を……これ、そのまま入れちゃって大丈夫?

 ヘイ神様? 教えて?


(塊か……。半分に切り、10分。その後ひっくり返してもう10分じゃ)


 ありがとうございます。


「このままだと大きすぎるそうなので、半分に切って貰っていいですか?」

「分かった」


 と言う訳で同じく何をしたか分からない速度で何かをし、塊を半分にしまして。

 神様の言う通りに、10分加熱後ひっくり返してもう10分。

 取り出したら、しっかり火が通っている様子。


「ではカケル、明日はレシピの交換会としよう」

「俺のレシピは実物を食べて貰う事で構いませんね?」

「もちろんだ」


 バハムート肉を受け取り、そう言って。

 ラベンドラさん達は、魔法陣の中へと消えていく。

 ……さて。


「姉貴」

「? なぁに?」

「明日の朝ご飯、バハムート肉でいい?」

「もちろん」

「じゃあ何か作っとくわ」

「ほいほい」


 一つ、ふと思いついたレシピがある。

 何故かは知らないけど、これ、合うんじゃね? とピンときたレシピが。

 それを明日の朝に作るために、今の内から仕込みをしとこう。

 まずバハムート肉に塩コショウを振り、ビニール袋を用意。

 ビニール袋の中に、ヨーグルト、ケチャップ、ニンニクチューブに生姜チューブ、カレー粉にガラムマサラを入れてよく揉み混ぜる。

 塩コショウを振ったバハムート肉の表面の水分をキッチンペーパーでしっかり拭き取り、ビニールに入れて再度よく揉む。


「何作ってるの?」

「タンドリーバハムート」


 大体はチキンで作るんだけどね。

 というか、タンドリーバハムートなんて単語発したの、この世界どころかこの世界線で俺だけ説。

 誇っていきたい。


「美味しそう」

「こいつをレタスとかと一緒にパンに挟んで、サンドにしたのを朝ご飯とする」

「あいあいさー」


 まぁ、すぐに焼くわけじゃないし、だからこそこのタイミングで準備したんだけどね。

 と言う訳でビニールに入れてよく揉んだら、口を縛って冷蔵庫へ。

 朝まで寝かせてから加熱しませう。

 一応クジラ肉のレシピで調べて、明日の晩御飯に良さそうなのをいくつか見繕っとかなきゃ。


「かなり甘かったし、辛口のワインとよく合いそうよねぇ……」


 なんて独り言を言ってた姉貴さんや。

 見えないし感じないし聞こえないと思うけど、異世界の神様が唾を飲みこんでたから二度と言わないで欲しい。

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