第219話 まだ食うのか……

 ラーメンの一口目はな、スープを飲むもんや。

 というわけで俺はレンゲでスープを掬ってゆっくり味わう。


「ガツンと来るうま味が最高じゃな!!」

「前に食べた味と全くと言っていいほど違うな!!」

「あぁ~^。背徳的なお味ですわ~^。」

「驚きと感動が同時に来たような味わいだ」


 四人がうるさいけど、いつもの事よ。

 ……あぁ、豚骨醤油が染みる。

 ちょっと流れてきたニンニク背脂がまたパンチを効かせてるね。

 スープだけでかなり重たい。


「麺にスープが絡んで最高だ!!」

「モチモチとした食感が癖になるわい!」

「麺は太ければ太いほどいいな!!」

「思えば前に食べた麺は平べったく縮れていたな」


 で、麺を味わうと。

 今日の麺は中太のストレート麺。

 豚骨ラーメンだったら細麺といきたいところだったけど、二郎風家系ですし?

 太さもあった方がという事で、こちらの太さにさせていただきました。

 ただし、縮れは無し。

 これは完全に俺の好みね。

 麺に絡むスープはやっぱり至高ですわよ。

 スープ単体だと味が濃いけど、それはこうして麺と絡めて食べるからだってのが嫌でもわかる。

 全然嫌じゃないけどもさ。


「うおっ!! 野菜がリフレッシュ役かと思ったらそんなことないぞい!」

「一度スープに潜らせて食ってみろ!! 飛ぶぞ!!」

「こちらにも強烈なパンチのある味が付いてますのね」

「この野菜だけを米に乗せて食えそうだ」


 で、山盛りのもやしとキャベツ時々人参ね。

 上からニンニク背脂をかけてるから、パンチのある味ってのはそれだろうな。

 それで? この野菜でリフレッシュが出来るとでも?

 二郎系の野菜は麺に次ぐ第二のメインじゃろがい!!

 もやしやキャベツのシャキシャキした食感と、それに絡む豚骨醤油のスープが最高なんじゃ。

 人参の苦みと甘みもたまに来るアクセントとして優秀。

 何より、その食感が麺と違っていい刺激になるんだよな。


「肉が驚くほど柔らかい……」

「箸で突くだけでホロホロと崩れていくぞい!」

「味もしっかり付いていて、噛む度に肉汁と一緒に溢れ出てくる」

「これもご飯の上に乗せていただきたいですわね!!」


 自家製チャーシューも好評っと。

 いやぁ、仕込んだ甲斐がありますねぇ。


「全体的にまとまりがあり、それでいて高レベルで美味い」

「スープが一番の衝撃ですわ。濃厚でコクがあり、それでいて全然飽きませんの!!」

「一番は麺じゃろ! パスタとは違う独特な弾力の麺はずっと嚙み続けたくなるぞい」

「肉だな。野菜と一緒に口に含んでヨシ、麺とヨシ、スープとヨシ。単体で食べても十分な満足感が得られる」


 なんて言い争いを聞きながら、俺はそんなのそっちのけでラーメンと格闘中。

 美味しい。美味しいよ。

 でもやっぱり重いわ。

 背脂かけすぎたかな……。


「カケル、おかわりはあるか?」

「麺は茹でればありますし、スープの素もあるはずです。チャーシューや煮卵ももう少し余ってますけど、野菜だけは無いですね」


 で、そんな俺を尻目に四人は既に完食。

 ガブロさんとマジャリスさんはスープまで飲み干してた。

 で、リリウムさんとラベンドラさんはスープを飲んで無いなぁと思ってたらさ。

 俺がスープのお代わりも可能と言った瞬間、二人ともレンゲで掬って飲み始めた。

 これあれか? 替え玉用にスープ残してたパターンか?

 福岡県民かよ。


「野菜は……この際目を瞑ろう」

「ですわね。麺と肉と卵で充分に美味しいですわ」

「と言うか、卵美味かったな。しっかりと味の付いた白身と、噛むとトロリと流れてくる半熟の黄身」

「飯に合う最高の卵じゃったな」


 と言うかこの四人、さっきから飯に合う飯に合う言い過ぎだろ。

 ラーメンだぞ? ご飯と一緒に食うか?

 ……食う奴も居るか。何なら、ラーメンのスープにご飯入れて食べるのは俺もやるし……。

 流石に今日はご飯炊いて無いし、冷凍ライスも無いんだよなぁ。

 諦めてくれ。


「じゃあラベンドラ、お代わりを頼むぞい」

「量は先ほどと同じでいいのか?」

「そんなにはいらない。半分ほどだな」

「同じくですわ」

「わしも半分でいいぞい」


 とか言ってるけど、余裕で三人前食う計算なんだが?

 この人らの食欲をかなり高めに見積もってて良かった。

 ギリギリ麺も足りるだろ。


「ふぅ……ご馳走さまでした」


 で、俺の方は何とか完食。

 ……デザートあるんだもんな。

 へへ、入るかな。


「カケルはもういいのか?」

「はい、お腹一杯です」

「わしらはもう少し食うが――」

「あ、お気になさらず」


 お代わりを作り始めたばっかだし、俺の事はお気になさらずに。

 勝手に食後のコーヒーで一息ついてますんで。


「食後にコーヒーか」

「はい。リラックスタイムですね」

「わしらにも食後に頼めるかの?」

「もちろん、任せてください」


 買い出しでドリップコーヒーを結構買ってきたからな。

 なんでも来い。


「じゃあわしはブラックで頼むわい」

「私は砂糖だけ入れてくれ」

「同じくお砂糖をお願いしますわ」


 ガブロさんがブラックで、ラベンドラさんとリリウムさんが砂糖入り、と。

 で? マジャリスさんは?


「俺は……ホワイトで頼む」


 ミルクだろ、それ。

 ……ちゃんとコーヒー牛乳も買って来てますからね。

 そちらをお出ししますよ、ちゃんと。

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